紙の本
戦争とは、人間を、過去・現在・未来へと苦しめ続ける悪魔の所業なのだと、刻み付けられる。
2023/09/13 09:52
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投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
Audibleで聞く読書。
主人公の岡田亨は、法律事務所を退職し、妻の久美子と世田谷の一軒家で暮らしている。
この家は、親戚の好意で安く借りることができている。
単調な日々の中で、摩訶不思議な出会いが続く。
素性の知れない女からの奇妙な電話。
加納マルタ・クレタ姉妹との出会い。
妻の悲しい生い立ち。
彼女の兄・綿谷ノボルを通じた、作者の現代の社会への洞察。
そして、かつて良く夫婦で訪ねた霊媒師の本田さんの死。
その本田さんから、亨あてに形見が残されたとの連絡が入る。
電話の主は、戦時中に彼とノモンハンで日本軍の一員だった間宮という人物だった。
巧みな描写と、老若男女、そして時代を越えた多くの人物を語り分ける朗読の藤木直人の技量にも魅了される。
しかし、それを上回るほどに聞き続けることが困難な描写が続く。
戦争とは、人間を、過去・現在・未来へと苦しめ続ける悪魔の所業なのだと、刻み付けられる。
戦争ほど、残酷なものはない。
戦争ほど、悲惨なものはない。
だが、その戦争は今でも続いている。
その戦争に抗う力も、人間の中に宿っているはずだ。
紙の本
井戸に射した丸い光、シナモンとナツメグの匂い
2003/07/29 09:52
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投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
猫が行方不明になった事から物語が始まるが、ちょうどその頃うちの猫も行方不明になり、神妙な心持でページを捲っていた(もちろんうちの猫は特別な能力を持っているわけでもなく、ただの気紛れなのだ…)。
主人公の気持ちとは無関係に広がる煩雑した事象。錯綜する謎。謎は決して薄れず、謎を呼ぶ。
普段サスペンスやミステリーに手を伸ばさない私は謎解きというものに不慣れで、主人公が足を踏み入れた不思議な世界は新鮮でした。ですが少し難しい!
村上氏の心理描写には敬服します。素晴らしいと思いました。井戸に入るという発想もユニークだし、井戸に入った事で解決の糸口を掴み、そこから戦争時代の、若かりし日の老人の経験と結びつけた時は村上氏は天才だと思いました…。
読んでいくうちに、とろりと作品に溶けこむ感じがします。
私が今より成長し、主人公と同じ年齢に達したらまた読みたいと思いました。
村上氏独特の世界が広がる、そんな喜びを胸に本を閉じました。
余談ですが、うちの猫は今でも帰宅しません…。近くに井戸があれば覗きたいところですが生憎井戸がない!
この本を読んだのはもう2年ほど前になりますが、今でも「井戸」という言葉を耳にすると井戸の底を視点に、まあるい光が射す光景が浮かびます。
紙の本
クロニクルを読み解いてください
2002/01/06 00:27
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投稿者:ユカリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
孤独で・独身の設定が多かった村上春樹。この作品は夫婦というものをベースに展開している。しかし、生々しさがなく、他人よりも精神的に離れている。夫婦だからこそ、分かり合えず、愛しているのに、離れていってしまう。いろいろな女が取り巻くけれど、ほんとうに必要なひとに会えない。色々な事柄、話、行動をするけれど、この小説の本当のテーマは、これに尽きる気がする。
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この本は夫婦のことを書いた小説だと思います。発売当初、私はまだ独身で、今ひとつこの本の言わんとすることがよく分かりませんでしたが、時をおいて家庭を持つ今この本を読むと、切々と訴えかけてくるものがあって内心驚きました。
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全三部のうちの第一部。こんな分厚い本が三冊も!!と思うと手を出しづらく感じますが、いざ読み出すとすらすらと読めてしまいます。
ストーリーの中に常に潜む不安感が、カタストロフィを予期ささせます。カティサークとレモンドロップの描写は、私にそれらを欲させる威力を持ちます。間宮中尉の過去語りは強烈なインパクトを持っています。死によって恩寵を得られるというのに、運命づけられた生によりそれが妨げられ、漫然とした人生を送ってしまうことになるとは皮肉すぎます・・・。
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なんなんだろう、よくわからない。まだ第1部だから、いろんなことへの布石がどんどん置かれていく感じなのか。猫は、少女は、変な姉妹は…?いったいこれから、物語はどうやってすすんでいくんだろう。ノモンハンのことを、全然知らなかった自分が恥ずかしくなった。地名さえ、知らなかった。それはさほど重要なことじゃないかもしれないんだけど…。まだ、よくわからない。続きを読まなきゃ。
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三部作の大長編。読み進めるのがつらいところもありますが疑うことのない傑作。後世に村上春樹の代表作と言われるのはこの作品だと思います。
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久々の春樹作品。
不思議な世界観がなんとも魅力的vv
世田谷での綿谷ノボルという名の猫探し、
マルタ・クレタ姉妹、
妙にエロい電話をかけてくる謎の女、
クリーニング屋に放置されていたネクタイ、
ノモンハンでの戦争、
そして、かつらバイトとねじまき鳥・・・
それぞれの話が魅力的。
さて、ここから話はどこの方角へ?
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第1部だけじゃ全く全体像がつかめません。
13と14章だけ違う本読んでる気分になった。
サブタイトルの泥棒かささぎってそんな重要なのかな?笑
とりあえず2部も読もう。
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初めて手にした村上春樹の本でした。
読売文学賞受賞!の帯を見て、
手に取ったのだと思います。
中2か中3の私にはわからない点がたくさんあったけど、
なんだか夢中になって最後まで読んだ記憶があります。
もう一度、読み直そうかなーと最近思い始めてます。
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大事なものがあったはずだ。
変わらないものがあったはずだ。
そう、多分。
…ほんとうに?
いつの間にかすり替わって
別物になっているなんて
誰が信じたりするだろう?
だって信じすぎているだろう?
小さなサインは気付かれないまま
変わらないと信じた日々が空回り始める…。
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人を待っている間に、村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』読みました。
特殊な小説だった。
非常に理路が整っており、主人公は他人を怖いと思うことがないようである。壁を作らないというか、他人に応える。
読んでいると私まで、何も怖いことがないように感じる。すぐ隣にいる人をジロジロ見つめ、注意を引いて、彼のつけているその暴力的な香りのする香水が何というものか訊きたくなったりする。携帯電話のアドレスを聞かれてもためらいなく教えてしまいそうだし、ホテルに誘われてもついて行きそう。
そう思って男を見上げた瞬間、読んでいる雑誌が刺青のカタログであるのを知って、その写真のグロテスクさに目を伏せたのだが。やはりまだ私には、一歩を踏み出す勇気がないらしい。
『ねじまき鳥』を読み終わり、村上春樹に興味を持って次の本『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を買ってみた。(これまで二人くらいに面白いといわれたから)
しかし1ページちょっと読みかけ、無性に『ねじまき鳥』が読みたくなった。私のいた喫茶店のすぐ隣は本屋だったし、私は前日にその本屋に『ねじまき鳥』が補充されたのを知っていた。
‘今『ねじまき鳥』を買わねばならない’‘まるで私のために『ねじまき鳥』は補充されたのだ’、等々のセリフが、オカダ・トオルの声をもって私の頭に浮かぶ。
やれやれ、すっかり村上春樹のペースだ。
理路整然としているところや、‘やれやれ’と言うところ。もちろん口調は巧みに使い分けられているが、それらがどの人物にも共通し、「村上春樹ワールド」あるいは村上春樹の色を作っている。良いところでもあるし、悪いところでもある。
田村由美の『BASARA』のように、それぞれの人物にそれぞれの口癖や、性格があったほうが自然じゃないか?
別に自然さを追求してほしいとはこれっぽっちも思っていないが。
私の座っていた席は、窓に向かったカウンター席だった。
窓と言うよりはガラス張りの壁といった感じで、正面の風景は左右に150°、上下に100°くらい見渡せた。もちろんガラスの継ぎ目のサッシが数本、視界を邪魔していたけれど。
私の席のちょうど正面には交番があった。駅の北口の方から、4ヶ月くらい前にここに移転してきたのだ。
その交番の入り口、私の目の前で、自転車を押した一人の男が警官に囲まれていた。
男はポケットの財布を取り出し、両手を挙げていた。
警官の一人が彼のだぼだぼのズボンを触り、検査らしきことをしている。男はやれやれといった体で手を広げ、警官にニヤニヤ笑いかける。警官はニコリともしない。
取り囲まれたままで、男がこちらを振り向き、ニヤッと笑った。
こんな茶番めいた取調べなんて意味がねーんだよ、という風に。
男は自信たっぷりに見えた。
私が目を離した間に警官は消え、男は自転車を押して去ろうとしていた。私は男を目で追ったが、彼はまるで私の視線を感じたように振り返り、またニヤッとした。今度はハッキリと、ほらな、という声が聞こえた。
私は飲みかけのコーヒーをそのままに荷物を掴んで店を飛び出し、男の後を追った。
小走りで彼の後についていくと、一瞬知った香りがした。
決して好きとは言えない香り。これはさっき隣に座っていた男の香水だ。暴力的な香り。
あの時は、「村上春樹を読み終えた後の私」の世界にうってつけの、一登場人物にすぎなかったから、香り自体なんて意識していなかった。
男がもう一度、振り返った。私は言葉を発する直前のように、少し口を開いた。それが合図となった。
彼は立ち止まり、私が追いつくのを待った。
私が歩いて行くと、「乗れよ」と親指で自転車のリアキャリアを指した。
私は何も言わずに、自転車の後ろに横向きに座った。
男が自転車をこぎだすと、風のせいで香水のきつい香りが鼻から肺へと入ってきた。
何も考えずに男の背中に手を回し、薄手のTシャツ越しに感じる肌の感触を楽しんだ。
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文章があわなかったのか、前半で苦戦してしまい、なかなか進みませんでした。
後半はとんとんと読めたのですが、怖かった。表現がリアルで妙に頭の中に残りました。
理解力が足らないのか、よくわからなかった部分が多かったです。
でも第2部がどんな風に続いているのかは気になるので、後日読んでみたい所。
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どういう結末が待ってるのか想像もつきません。
間宮中尉の章は戦争関係の本を読んでいるかと思った。
続きを早く読もうと思います。
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まだ全容が全く見えません。どんなお話なのか?というのが感想です。薄暗い舞台の別々の場所にスポットライトがいくつか当たりはじめ、それがじわじわ広がっていくような…。続き、読まないと。(笑)