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商品説明
【大佛次郎賞(第14回)】1.アウグスティヌスと女性 2.煉獄と地獄 3.ペルソナとペルソナ性 4.創造と悪 5.終末と希望 6.神の憩い【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
書物は読み返されるためにある。本書はそのことを私に思い出させてくれた。
2001/02/17 16:20
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
実に味わい深い文章で綴られた名著。私は何度も読み返し、そのたびに何かを得てきたように思う。たとえば、第四話「創造と悪」で著者は、アウグスティヌスと道元には非常に共通しているところがあると書いている。
まず、善なる神によって創られた世界になぜ悪が存在するかを問うた若きアウグスティヌスと、山川草木悉皆成仏、つまりすべてのものが既に仏に成っているならば、なぜ三世の諸仏は修行しなければならなかったかを問うた若き道元は、その最初の問題設定において共通している。──神はなぜこの世界に「内在」しないのか。なぜ成仏=「超越」を求めて修行しなければならないのか。(西欧と東亜における二つの問い。)
そして、アウグスティヌスが、神がこの世界を善く創りたもうたのは、善くあるべき世界の創造の中に自分自身が参与していることであり、世界を「創られて既に在った」ものとしてではなく「創られつつ、在りつつある」ものとして受け取ることによって問題を解決したように、道元もまた、山川草木悉皆成仏とは、自分の外にある客観的自然の世界がそのまま既に仏であることではなくて、それは自分自身を含んでいるのであり、この世界を成仏させることは自分自身がそれをしてゆかなければならないのだと悟ることによって問題を解決をした点でも共通している。
《悉皆成仏とか、神によって善きものとして創られた世界とかいわれているものが、自分にとって対象的にみられる世界のことをいっているのではなくて、じつは、われわれがその中で善く生きることによって、善くし成仏させてゆくべき課題としての世界の在り方を示していると理解し、それを実行してゆくこと、この点に両者の共通点が認められると思います。》
なお、著者は両者の非類似性──道元には「創造」という思想も「キリスト」も「教会」の思想もない──を指摘したあとで、しかしながら別の観点から見ると、道元の思想の中にキリスト教的なもの(少なくともキリスト教につながりうるもの)を見出すことができるのではないかと書いていた。《私たちは彼を、日本キリスト教の先蹤(少なくともその一人)と呼ぶことができると思います。》
書物は読み返されるためにある。本書はそのことを私に思い出させてくれた。