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商品説明
負のデザイナーは、それとわかる業績を残してはならず、容易にデザイナーであることを悟られてはならない。プラスだけで成りたっているのではない文化の、負のデザインに目を向け紹介する。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
価値ある極論
2000/12/01 10:31
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投稿者:白井道也 - この投稿者のレビュー一覧を見る
名は体を現わす。この本自体が“負のデザイン”思想で装置されている。カバーはない。紙は安い。必要最低限の情報が、必要最低限のレイアウトで配置されている。
著者の考える(負の)デザインとは、「何かを作ること」ではなく「何かを作らないこと」である。あるいは「何かを排除すること」である。いくつかのエッセイが綴られているが、そこに一貫している思想は、「正=善、負=悪とは限らないだろう」ということだ。
例えば、子供が産まれるのはめでたいことなのかとか(最近の少年犯罪や学級崩壊をみると、あながち極論でもない)、都会の喧燥を逃れるために棺桶型休憩所が欲しいとか(喫茶店に入っても有線の曲が耳に飛び込む)、欲望を追究するより欲望を放棄するほうが幸せだとか(コップが小さければ満たすのに必要な水は少なくて済む)、見栄を捨てれば自由を拾えるとか。
もちろん、著者の言い分はひとつの立場に基づいているに過ぎない。極論といえば極論だ。ただ、「インターネットは世界中の情報にアクセスできます」などという実体のない言説がまかり通り、限りなく欲望が刺激されるこの世に生きる人間にとって、著者の思想に耳を傾けてみるのは価値のあることだ。“負のデザイン”は、積極的に私たちに示唆を与えてくれる。