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紙の本
日本人の祖先がシベリアの地から来たのかも知れないと考えさせてくれた
2020/08/30 14:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
シベリアに住むブリヤートモンゴルの人々。その喉歌ホーミー、本書の舞台トゥバではフーメイと呼ばれる歌を聴いた時、これは幼い頃聞いた近所のお寺のお坊さんのあげてくれたお経と同じ発声法なのではないかと懐かしい気持ちになった。モンゴルの大草原に響く何か郷愁を感じさせるその歌声。
今ではロシアのテリトリーとなっているトゥバと呼ばれる地域がブリヤートやモンゴルに隣接し、そこに過去数十年間だけ幻の共和国が存在したという浦島太郎のようなロマン溢れるお伽話。しかしそれはトゥバに生きる人々にとっては中国とロシアという大国に蹂躙された苦しみと屈辱の日々だった。
近代の政治史はさておき、本書は日本文化の原始を知りたいという知的欲望に見事に応えてくれる素晴らしい作品だった。巻末の田中克彦氏の解説にはこの地が露清国境にてアジアの近世史においては如何に重要な地域だったかが語られているが、私のような圧倒的多数の日本人には未知の場所である。この地の地誌や歴史、習俗が文庫本とは思えない密度で語られていく。密度の高い民族学の講義を受けているに等しい。読書メモがノート何十ページにも膨れた。
日本人の有するY染色体のハプログループは弥生人とブリヤート人の近接性を語る。弥生時代に渡来した日本人はバイカル湖畔からやってきたのではないかと。また本書でトゥバ人とともにページを割いて語られる隣国キルギス人と日本人は容貌が大変似ているという興味深い話も聞く。解説には江上波夫先生の「騎馬民族渡来説」と佐原真先生の「騎馬民族は来なかった」説にも触れられ、訳者の透徹したコメントが付されている。
トゥバは唐代には「都波」「都播」と表記された。その同じ字を用いた日本神話の高天原を想像させる格式の高い神社が奈良県御所市に存在する。また日本人の心の故郷ともいえる伊勢神宮に隣接して三重県鳥羽市があることもただの音声的パズルだけではないものを感じさせる。
これらのことを考えながら読んだが、南シベリアにあるわれわれと顔がよく似た人々の地であるトゥバをよく知るためのかけがえのない一冊であった。内容が濃いため読破に時間はかかったが、「日本人」を知るために読んでおくべき書であると感じた。
紙の本
語り尽くせない中央アジア・トゥバ
2004/09/11 22:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
モスクワからシベリア鉄道で東へ3千数百キロ、さらに乗り換えて数百キロ南下し、馬車でタイガを6日間行くとエニセイ川の源流トゥバ。1929年にスターリン記念東方勤労者大学のオーストリア人民族学者が、苦労して取得した入国許可を携えて行き着いたそこは、実はアルタイ山脈を挟んでモンゴルの北側に位置する狩猟・牧畜民族の土地だ。19世紀以降はロシアと中国に交互に侵入され続け、1921年にはソ連邦の独立した共和国となった。
言語学者である田中克彦がこの本を翻訳したのには意味がある。氏の著書「「スターリン言語学」精読」では、スターリンの民族政策として民族独立のために民族固有言語が重要視され、各々の言語を守るとともに民族共和国の自治を実現したことが記されている。たしかにそれはスターリン自身の出身であるグルジアではある程度意味があり、グルジアの文化は維持されたかもしれないが、それでも共和国の人々が党で権力を得る、あるいは最新の刊行物を読むにはロシア語が必要であったという二重構造があった。大きな民族でさえそうなのだから、人口7万人のトゥバで、ラテン文字を表記文字としたトゥバ語においてはなおさら。トゥバ語の文学が果たして生まれ得るのかという疑問が呈されている。
結局トゥバは23年間だけ共和国として存在した後、ロシアに吸収された。これがスターリン言語学の一つの結論というわけだ。そしてソ連崩壊の底流でもあったと思う。
言語だけでなく、ロシア化、ボルシェビキ化されていったトゥバの人々の暮らしが、この時代に唯一この国に入国した外国人の目で描かれている。ユルパと呼ぶテント状の家に住み、アラカと呼ばれる乳から作った酒を飲み、常に煙草を吸い、祭りには相撲を取る。写真多数。
また著者は、近隣のツングースその他の民族などとの比較も含め、人類最古の牧畜はトゥバのトナカイ飼育ではないかという推測を記していて、これはなかなか説得力がある。
読後、ロシア民謡「1週間」が耳についてしまって困った。♪トゥバトゥバトゥバトゥバトゥバトゥババ〜。
紙の本
かかる欧米研究者なかりせば、現在のモンゴル研究は
2023/01/31 23:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウィーン出身の民族学者が、
ロシアの一部となっているトゥバを、
一九二九年に旅した時の経験を
記録した本です。
ロシアによる少数民族支配の実態に
切り込んでいる点で、高く評価されている
ようですが、個人的には、著者の行く先々で
発生する、玉石混交の史資料との遭遇場面も、
実に劇的で、大変興味深く読みました。