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商品説明
【坪田譲治文学賞(第14回)】私はナイフを持っている。これで息子を守ってやる…。小さな幸福に包まれた家族の喉元に突きつけられる「いじめ」という名の鋭利なナイフ。日常の中のゆがみと救いをビタースイートに描き出す出色の短編集。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
ワニとハブとひょうたん池で | 5-50 | |
---|---|---|
ナイフ | 51-98 | |
キャッチボール日和 | 99-156 |
著者紹介
重松 清
- 略歴
- 〈重松清〉1963年岡山県生まれ。出版社勤務後、著述業。著書に「ビフォア・ラン」「四十回のまばたき」「見張り塔からずっと」など。
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紙の本
防衛
2002/03/03 07:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MITU - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間以外の動物が本能的に隠し持つ、武器。クラゲやヘビは毒を。ライオンや犬は牙を。ガゼルや馬は速い足を。そんな中、人間は自分の中にナイフがあることにあるときは狂喜し、あるときは恐怖する。自分の持つナイフが自分だけの特別な武器であることを、誰もが疑わない。社会という競争心を捨て切れない中で、自分の武器に打ち震えながら、助けを待ちつづける人々の物語。あなたのナイフ、人に見せたことはありますか?
紙の本
いくらでもいそうな父や母、息子に娘、先生や友だちなど…リアリティある物語を読むことで、自分の生活をちょっと突き放して考えることができて、いい!
2001/01/16 17:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
学校でトラブルを抱える子どもが登場する短編小説が5編。
「スライス・オブ・ライフ」−−美しい緑色のキュウリを、向こうが透けるくらい薄く薄くナイフで切る−−そんな繊細な作業をする作家の姿が何回か頭に浮かんでくるような読書体験だった。
表題作の『ナイフ』は二番めに収められているが、三番めの『キャッチボール日和』と四番めの『エビスくん』の二作が出色の出来と思われた。この二作に、泣けた。
『キャッチボール日和』は、中学三年生の女の子・好美が語る。問題を抱えているのは、幼なじみで同級生でもある大輔。甲子園のヒーロー・荒木大輔から取られた名だ。二人の父親は昔、同じ高校の野球部にいた親友同士。二歳で死別した父に代わり何かと面倒をみてくれる大輔の父と、好美は時々キャッチボールする。
野球センスがなく、クラスでいじめられている大輔と父親との関係修復のため、好美はおせっかいを焼く。現役にこだわった荒木大輔のドラマと、大輔父子のドラマが、感受性豊かな女の子の中で交錯する。父と子が向かい合うことの象徴として、キャッチボールというものが描かれる。
『エビスくん』は、回想の中の小学六年生の“ひろし”という男の子が語る。ひろしには、心臓に疾患があり入院中の妹がいる。
転校生のエビスくんという怪童に「俺たち親友だよな」と言われながら、ひろしは暴力と言葉で徹底的にいじめられる。が、妹には、エビスくんは神様の子孫だから願いごとを何でも聞いてもらえる、お見舞いに来てもらうとウソをついてしまう。そのことをエビスくんにはなかなか言い出せない。
“弱い男の子は強い男の子が好きなんや”−−女性にはわからない世界、今とは違う懐かしい時代ののどかないじめが、リズミカルに、しかし、しっとりと表現されていた。
「ナイフ」は、いじめに遭う中学二年生の息子を持つ父親が語る。かつての同級生が国連平和維持軍として危険の多い小国に派遣されるTVニュースを眺める「私」は、凡庸なサラリーマンである。昔から背が低いことがコンプレックスで、あらゆるものに恐怖を感じてきた。ある夜、酔っ払って露天商から作りのちゃちなサバイバルナイフを買い、それを胸にしのばせることで意識が少しずつ変わってくる。
自分の昔の姿に、いじめられる息子を重ねながら、「何とかしたい」ともがく姿が切ない。
他に、中学三年生で、いっときクラスメートにハブられた(村八分にされた)女の子が語る『ワニとハブとひょうたん池で』と、小四の娘の日記をちゃんと理解してくれない先生に腹を立てる元高校教師の妻を持て余し気味の夫が語る『ビタースィート・ホーム』が収録されている。前者は、児童文学と言ってもいい。
森絵都の書く小説のように、女の子の心を鋭く描いている。
登場する人物にはどれも、すぐ隣に住んでいたり、そこの道を歩いているように思えるリアリティがある。「あざとい」と言うのがふさわしいように思える物語の上手さなのだろうけれど、そう思う前にぐーっと胸に入りこんでくるものにヤられてしまう。
私たちの生活には確かに、薄く切り取られるドラマみたいな時があるのだな…ということを改めて感じさせられる。そういう客観的な気持ちにさせられると、軽く楽になる思いがある。
紙の本
他人の痛み
2002/07/21 19:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:郁江 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「悪いんだけど 死んでくれない?」気がつけばクラスメイトが全員敵に…そんな事が誰にだってありえるんですよね。閉ざされた空間 集団という連帯感の中 子供って 時に大人よりも残酷です。心に付き付けられたナイフから血が流れていることに 気がつけない 他人の痛みが分からない子供達…いえ大人にだっていますよね そういう人。
失ってから初めて気づく 小さな幸せ…彼らは取り戻すことが出来るでしょうか。その戦いは決して甘くない。
紙の本
人前で読むことはおすすめしません
2002/05/31 01:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:柿右衛門 - この投稿者のレビュー一覧を見る
どこにでもいる家族が紡ぐ短編集。
私は電車の中でこれを読んだ。
多分まわり座っていた乗客はギョッとしたことだろう。
しかし、私は次々おちる涙をとめることができなかった。
すごくいたく、せつない短編集。
日常生活にふっと潜んでいるなにかが、自分にリンクするなにかがきっとあるはず。
自分の学生時代をちょっと思い出した。
いじめてしまったあの子はいま何をしているだろう。
紙の本
リアリティ
2003/05/06 09:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ももぴー - この投稿者のレビュー一覧を見る
この小説の中に描かれている「いじめ」は、あまりにもリアルで、読んでいてつらく苦しくなった。それでも読み進めたのは、その中に出てくる大人も子供も、ありきたりな小説にでてくるようなウソっぽい言葉でなく、本当に心の中から出てくる言葉を語っているからかもしれない。大げさな展開があるでもなく、日常の中の出来事を淡々と描いていても、登場人物が発する言葉のひとつひとつが、深く読者の中に切り込んでくる。
重松清の小説の最大の魅力はリアリティだと思う。そのリアリティは、自分自身さえも気づいていないような奥底の部分のリアリティだ。
私はこの「ナイフ」を読み、人間にとって一番つらい感情は、悲しみや寂しさではなく、みじめという感情ではないかと思った。いじめはその究極である。この小説は大人にこそ読んでもらいたい。