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  • みんなの評価 5つ星のうち 4 8件
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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:1998.8
  • 出版社: 白水社
  • レーベル: 白水Uブックス
  • サイズ:18cm/340p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-560-07124-1
新書

紙の本

フェルマータ (白水Uブックス 海外小説の誘惑)

著者 ニコルソン・ベイカー (著),岸本 佐知子 (訳)

エロチック電話小説「もしもし」と、極微的身の回り品観察小説「中二階」で読者をあっと唸らせた作家が、今度は時間を止めて女性の服を脱がせる特技を持つ男の自伝!?を書いた。95...

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フェルマータ (白水Uブックス 海外小説の誘惑)

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商品説明

エロチック電話小説「もしもし」と、極微的身の回り品観察小説「中二階」で読者をあっと唸らせた作家が、今度は時間を止めて女性の服を脱がせる特技を持つ男の自伝!?を書いた。95年刊の再刊。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

ニコルソン・ベイカー

略歴
〈ベイカー〉1957年生まれ。ニューヨーク州で育ちイーストマン音楽学校とハヴァフォード大学で学ぶ。著書に「もしもし」「中二階」がある。

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みんなのレビュー8件

みんなの評価4.0

評価内訳

  • 星 5 (1件)
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紙の本

存在の半分が子供であるような

2004/02/18 19:32

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る

もし、自由に時間を止められる能力があったら何をする?
と問われれば、気づかれないように女性の服を脱がして裸を見る、と答えるのがこの小説の語り手だ。
小学校のときふいにその能力を得て、お気に入りの先生の服を脱がして以来、アーノことアーノルド・ストラインの奇妙な人生が始まった。いまは派遣社員としてタイピストをしている彼は、三十五歳のある日自伝を書きはじめる。それが本書である。

そこで明かされるアーノのこれまでの時間停止能力=フェルマータで行ったことの数々は、どれもが子供のいたずらのようでとても面白い。アーノは、目の前で職場の女性を脱がしながらこの自伝を書いていて、その女性の陰毛の様子などを詳細に綴っていく。彼は時間を止めるという能力をほとんどそんなことにばかり使っている。他には、二時間のテープをタイプするのに一時間で仕上げてしまったり、一日ごとに丸一日分時間を止めて、他の人の倍の時間を過ごしたりしているが、彼がほんとうに情熱的に行動するのは女性にいたずらするときである。

卑猥な写真をほんの短い時間だけ見させてから、女性がゴミを捨てようとしたところでまた時間を止める。そのあいだにゴミ箱にバイブレーターを目につくように置いて、女性に拾わせたりというようないたずらである。他にも時間を止めている間に即興で書き上げたポルノ小説(本文にも挿入されているその小説は、続篇もあわせると五十ページを超える分量である)を、砂浜で寝そべったまま砂を掘っている女性がすぐ掘り出せるところに埋めたりする。そして、彼女たちを眺めながらマスターベーションをするのである。それらのいたずらはすべてそのためであるといっていい。

のび太が未来道具の小狡い使い方を思いつく天才であるように、アーノもまた時間停止能力をマスターベーションのために使うことにかけては天才的だ。彼の最大の野心は、街中にいる人たちをある瞬間にとつぜん全員全裸にするということである。それは果たされないが、アーノの興味がどういうところに向かっているかはこれがよく表している。

創意工夫にあふれたこれらのいたずらだが、やられる方にしてみればたまったものではない。アーノは作中で見る一方の人間であり、時間を止めるという形で絶対に他人から覗かれるおそれのない人間なのである。これはフェミニストから猛批判を食らっても仕方がないだろう。じっさい訳者あとがきに、出版前にベイカーが本書を読ませた人のうち、アーノの自己正当化を男性は全員が肯定し、女性からはベイカーの妻も含めて全否定されたというエピソードがある。当然だ。フェミニズムは女性が見られる一方の対象(=モノ)、下位に置かれてしかるべきモノ、社会から排除されて当然であるということ、そういう構造からの解放を目指していたわけだから。

男性が一方的に女性を眺めるばかりか、本人に知られずに服を脱がしたりするということはどうしたって首肯できない。これは男性女性の差ではなく、見られるだけ覗かれるだけというのは誰だって不快だろう。自分の身体の美しさをわかってくれるなら、見られることも受け入れるだろうというような正当化の仕方では不快感を買っても仕方がない。

しかし、この小説が書こうとしたものにはこの設定が不可欠である。もし時間を止められたら、という子供の頃には誰だって夢見ただろう能力を、ここまで魅力的に描き出すことのできる才能はやはり希有だ。

相手のことを考えたら子供のいたずらは成立しない。その意味で語り手アーノはほとんど子供である。ベイカーはこの小説を書くにあたって、語り手を子供に[する]という選択をした。くだらなさを美しさにまで高めるのは、その「子供の眼」だろう。

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紙の本

本というものは途中で飽きてもちゃんと最後まで読んでみるもんである

2005/02/20 16:40

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る

 いやあ、読み終えるのに時間がかかりました。途中で飽きちゃうんですよ。
 自由自在に時間を止めることができる男の話。で、時間を止めて何をするかと言えば専ら女性の服を脱がせる。脱がせて観察して、元通りに戻してまた時間を動かす。ファックしたりはしません。ただ、マスターベーションはする。ポルノ小説を書いたりもする。それで、一旦時間を止めてそのポルノ小説を女性の荷物に紛れ込ませておいて、時間を再び動かして彼女の反応を見たりもします。
 この話を読んでいるとポルノ小説を読んでいるのと同じ状態に陥っていることがあります。しかし、この小説は作者がポルノ小説を書こうと思って書いたものではないだけに、ポルノ小説として読むにはどこかちょっと飽きてしまう部分があるのです。それで、読むの嫌んなっちゃうんですよね。
 単なるポルノだという過小評価、それから女性に対する冒涜だという非難をかなり浴びたらしいですが、それでも米国ではベストセラーになったそうです。
 確かに、この偏執狂的なまでに緻密な描写はすごいです。ひとつだけ例を挙げれば、時間が止まっている時の雨粒の状態とか(ただ、緻密すぎるから飽きちゃう部分もあるんですけど…)。大体嫌になってくるのはちょうど真ん中辺りまで読み進んだ時ですね。そこを辛抱して超えて行くと、後半漸く新しい展開が出てきて面白くなります。読後感も非常に爽やかです。もちろん単なるポルノでもないし女性蔑視の本でもありません(ただし、反感を抱く女性は少なくないとは思いますが)。描かれている主人公と、主人公が憧れているジョイスという女性はともに非常に魅力的なキャラです。
 本というものは途中で飽きても最後まで読んでみるもんです。ああ、良かった。

by yama-a 賢い言葉のWeb

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2010/05/18 12:40

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2010/07/07 21:52

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2010/06/24 02:16

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2015/02/28 23:59

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2015/09/03 21:29

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2020/11/24 16:13

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