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商品説明
恋愛と結婚、アメリカ留学、インドネシアの農村での孤独な調査。幾多の困難を乗り越え、遂に論文を完成させるが…。研究者として、女性としての生き方を綴った半生記。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
倉沢 愛子
- 略歴
- 〈倉沢愛子〉1946年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専攻はインドネシア現代史。現在、慶応義塾大学経済学部教授。著書に「日本占領下のジャワ農村の変容」など。
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紙の本
目線の高さで語られる半生記に惹きこまれてしまいました。
2003/08/16 18:11
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投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
インドネシアという国の名前を聞いたのは、海軍宣撫隊に所属したことのある伯父からであったが、とても親日的でとても楽しかったところという話を子供の頃聞かされた。
その後長じて、会社の旅行でバリ島に行く機会があり、宿泊したホテルは日本の戦時賠償金で建設され運営はアメリカ企業であるとの説明があった。部屋に据えられている日本製のバスタブに「なるほど」と妙に納得した覚えがある。
その後、深田祐介氏の「神鷲商人」を読んで日本とインドネシアとの関係に興味を覚え、芸能界で活躍するデヴィ夫人の若き日を思い浮かべたものだった。
また、映画「ムルデカ」では武装解除後の日本軍有志がインドネシア独立義勇軍とともにインドネシア独立を求めて闘った事実に快哉を叫んだ。
しかし、著者の「大東亜戦争を知っていますか」という本に出会い、いままでいかに日本の立場でしか大東亜戦争をみていなかったかを知らされたが、事実が一方に偏らず双方の実情を説明していく手法に納得していくしかなかった。「歴史は勝者によって作られる」といわれるが、日本とインドネシアの関係も敗者ではあるものの日本が主導権を握って歴史が語られてきたのではないかと思った。
この本は著者がインドネシアという国に興味を抱き、それを専門として大学の教員になるまでの半生記が綴られているが、男でもなさぬフィールドワークを主体とした研究を成し遂げているのには感嘆の声をあげずにはいられない。
ノンフィクションでありながら、ひとつの私小説を読んでいるような興奮と展開には時間を忘れてしまうほどに読みふけってしまった。「聞き取り」という調査目的で訪れた村での地道な作業を行なっていく箇所では、僅かな日数しか滞在しなかったもののバリ島での闇の深さや星の輝き、心地よいコーヒーの香りさえ思い出されるほどだった。
日本の軍政下、日本軍から籾の供出を求められたり、強制労働を求められたりと理不尽な仕打ちに恨みつらがあったにも関わらず、懸命に当時の話を現地の人々から聞き出そうとする姿には並みの男でもできない事と感心するばかりだった。「聞き取り」で重要なことは調査をする人間の人格であるといわれるが、著者は十分にその資質を有していたということになる。
男女同権と表面上はいわれる日本社会であるが、この本を読んでいて女性の社会進出のハンディキャップは大きいと思った。
けれども、著者の文章には決して高いところからではなく、読者と同じ目線で語られている。これは、やはり、著者が女性であり母であるからこそなしえるものであると確信した。悲しいかな、このような芸当は男には決して真似ができない。この点について男は完敗である。