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紙の本
興銀の恨み節
2001/03/08 09:59
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
者は、かつて日本経済の参謀本部、大蔵省の黒子とも言われた日本興業銀行元産業調査部長。趣旨は、日本は貿易黒字を稼いでいい気になっていたが、それを運用していた米国債の価値がプラザ合意以降の超円高ドル安で半減。何のことは無い、鵜飼いの鵜よろしく米国に儲けを全てはぎ取られた哀れな金融奴隷が日本でその全ての責任は旧大蔵省にある、というもの。ちょっと待ってよ、おっさん。当時の米国債は年利16%以上。満期まで持ってれば元利合計で結局儲かっているはず。そして円高になった結果日本人全員が棚ぼたで手に入れた莫大な購買力にちっとも触れられていないじゃない。ユニクロの安い服が着れるのも、NYに安く行けるのも、原油が高くなってもちっともパニックにならないのも全部円高のお陰。損したのは米国債を購入して超円高時に慌てて売却した一部の銀行と生保のみ。興銀も落ちたな〜と実感出来る一冊。もしかして金融自由化の中で大蔵省に見捨てられ、収益の基盤だった金融債権発行が社債の発行自由化で崩壊し、結局みずほに吸収されざるをえなくなった哀れな興銀の恨み節が本書の本質か?
紙の本
戦後を生き抜いた知識人の経済分析を通じた経験談
2011/01/08 01:49
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
序にかえて 二十年の禍根
第一章 マネー大国の興亡
第二章 日米共同幻想 1980~1985
第三章 国際政策協調の病理 1985~1990
第四章 日米再逆転 1990~1995
第五章 マネー政策 アジアへ 1995~
第六章 鎖国の代償
おわりに
きっかわもとただは1934年(兵庫県)生まれ。東大法卒(58年)。日本興業銀行入行。同行産業調査部副部長,コロンビア大学客員研究員を経て,本書執筆時は神奈川大学経済学部(教授,64歳)。著書に,『YENは日本を幸せにするか』など。
目次を見ればわかるとおり,本書は現代日本経済政策史。マネーという言葉からわかるとおり,経済のなかでも金融の視角からの現代史である。経済調査部にいただけあって,括弧づきで用いられる「『教科書』」(=経済現象についての標準的な理解)を踏まえたうえで,たとえば,教科書的に単純な為替理論では説明できない貿易収支と為替の関係を指摘できていたりする(67-8頁)。
著者は「敗戦」という言葉を題名に掲げている。これからは,戦争をイメージする。何に負けたというのか? 俗耳に迎合する意図があったわけでもないだろうが,著者は,日本の官僚政策を槍玉に挙げている。著者は露骨に表現してはないが,書評子が忖度するに,官僚が諸外国,とくにアメリカ合衆国の官僚やエコノミストに「敗戦」したと著者は告発しているのである(99,152,178頁)。戦争を経験した世代にとって,外貨準備を持っても,強い円と世界経済の好機に恵まれても,たいしたことをやれなかった日本官僚制度は,経済面での「敗戦」の元凶にしか見えないというわけだ。本書に「大本営」という用語を用いなかったのが現代官僚制への著者なりの配慮・心遣いだろう。本書は,戦後を生き抜いた知識人の経済分析を通じた経験談だ。「敗戦」が本書を貫くテーマなのだから仕方がないが,もう少し救いのある希望も添えて欲しかった。
本書は為替政策の失敗にほとんどすべての敗因を帰している。日本経済の実態には明暗は,とくに“明”はなかったのだろうか? 明の部分が政策によって潰されていくという局面はなかったのだろうか? 逆に,暗の部分が政策によって救われたという逸話はなかったのだろうか? 出版された著作を十年以上経って読むと(拙評は2011年に書かれている),たとえば,中国経済の成長によるアジアの経済パワーバランスの変化は織り込めてはいない。これは当然だ。著者は解決策も本書に盛り込んでいる。拙評読者にぜひ読んでいただき,確認していただきたい。
(1052字)
紙の本
「敗戦」で腐らずに前向きに前進するところが日本人の美徳でもある
2002/04/20 01:15
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:LEE - この投稿者のレビュー一覧を見る
バブル崩壊後の金融不安をアメリカとのマネー戦争の敗北ととらえる本だが、金融のみに特化させる判断は、最近また盛んになっている旧大蔵・日銀悪玉論にも似た無理な議論ではないかと思う。バブル崩壊と、その後の低迷は経済のファンダメンタル的要因によるものが大きいのであり、日本という弱った動物の新陳代謝(リスクマネービジネスなど)を促すべく、アメリカなどの外資が飛来しているというのが妥当な見方だろう。本書で非常に刺激を受けたのは、日本を19世紀から20世紀にかけての英国と比較した箇所である。国際収支発展段階説に基づくこの箇所は、最近の日本で所得収支が貿易収支を上回っており、成熟国家への道を歩んでいることが数字から裏付けられるようになってきたことから、予言が的中しつつあるとも言える。ドラッカーなどの議論とあわせながら、成熟国家として新たな成長段階に進むべき努力がなされるべき時だろう(このことはハーマン・カーン以来の課題でもある)。「敗戦」で腐らずに前向きに前進するところが日本人の美徳でもある。
紙の本
日経ビジネス1999/2/8
2000/10/26 00:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:野口 均 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1980年代の「日米貿易戦争」の裏面では、並行して「日米マネー戦争」が進行していた。メディアはこの戦争に気づかなかった。政策当局には、そもそもマネー戦略という発想がなかった。そして日本は、敗れた…。
以上が本書の主張である。そして、この主張を裏付ける例として、日本が買い込んだ巨額の米国国債が、米政府のドル安誘導によって、95年の円高ピーク時には、約7割も価値を失ったことを挙げる。著者は、「極論すれば、アメリカが債務を負う相手国の国力を殺そごうと思えば、為替相場をドル安に誘導するだけでこと足りる」と言う。
本書を読んで、「悪いのは米国だ、米国がドルの罠わなを仕掛けて、日本を破滅させた」と短絡的に思いこむ人が増えるのではないかと、いささか心配になる。
確かに「マネー戦争で、日本は負けた」ように見える。敗戦とは、恐らくバブルの発生と崩壊、それに続く不況、日本の金融機関のテイタラクを、ひっくるめて言っているのだろう。
しかし、それをすべて米国のマネー戦略のせいにするのは、わかりやすすぎるのではないか。
ドル基軸通貨戦略が米国にあることは、著者の指摘の通りである。だが、そのためには、米国は自由貿易を維持し、国内市場を開放し続けねばならなかった。
一方日本の戦略は、一貫して輸出立国である。それは米国が国内市場を開放し続けることが条件だ。つまり米国がドル基軸通貨戦略をとって米国市場を開放し続けることが、日本の輸出立国戦略にとって、必要条件であった。
そして日本の輸出戦略は、あまりにもうまくいった。増え続ける対日貿易赤字によって米国はドル切り下げか、輸入規制か、二者択一に追い込まれた。日本は米国を保護貿易に走らせないために、ドル切り下げに協力し、稼いだ貿易黒字を米国債購入で還流させ、米国の経常赤字を補填した。つまり日本は輸出立国戦略を貫くため、ドル基軸通貨戦略を支えた。その結果、「貿易戦争」では今も勝ち続けている。
著者はそんなことは百も承知で、あえてこの不幸な構造と、基軸通貨国米国の堕落に気づかせるために、「極論」しているのだろう。本書がベストセラーになり、その目論見もくろみは見事に成功した。が、ドル下落による保有米国債の差損を例に出すなら、逆にドル換算したときの日本の国内総生産(GDP)や国民所得が3倍近くに膨れ上がった差益についても触れないとフェアではない。
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