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投稿者:androp - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直言って、私にはとても難しい本でした。言葉遣いも旧式で、登場人物の心情を表す言葉の一つ一つが普段使わないものばかり。物語を楽しむ前に、読み終えるのに一苦労でした。ただ、逆にいえばそれだけ読みごたえがある本だと思います。
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前期レポートの課題図書。
「人間性の問題を象徴的に浮かび上がらせた心理小説」なるものだそうで。
最初は取っ付き辛そうだったのですが、これが中々面白い。
ヘスター・プリン(恐らくは未亡人)は父なし子のパールを産んだカドで公衆の面前で晒し者になる。更には 緋色のA(Adultery:不倫の頭文字)の文字を一生衣服に付けるように言いわたされる。
彼女の不倫相手とはアーサー・ディムズデール。清廉潔白な牧師であり、皆から愛されている存在。
へスターと以前暮していたロジャー・チリングワース老医は、パールの父親を探し出し破滅させようと目論む。
この4人を中心とし、物語は織られてゆく。
誰がこの物語の主人公なのかは恐らく人によって違うであろう。
へスター・プリンの生き様。
アーサー・ディムズデールの魂の救いの模索。
ロジャー・チリングワースの沈みゆく狂気。
それともパールの生い立ちについてか。
こちらの本は文字と文字の対応関係が美しい。
表現の一つ一つが絶妙に絡み合っている。
読んでいる途中で、思わず唸ってしまうほど。
アメリカ文学の最高傑作と呼ばれるだけのことは、ある。
「暗い色の紋字に、赤い文字A」
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名前で読み始めて面白かった。
この作家さんの短編に毒娘だったか毒姫だったか、そういうタイトルの話があってすごく印象に残ってます。
違う人だったらすいません。
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女三界に家なしと言う。
女は馬鹿に生まれた方が幸せだと言う。
女にとって生きる場所は、自分を愛してくれる男、自分が愛する男の側を置いて他にないのか。
そうであるとき、男もまた同時に生きる場所などないのではないか。
人間が生きていることはそも重責なのか。
ヘスター・プリンが賢いのか馬鹿なのか、幸せなのか不幸なのか
私にはわからなかった。
幼いパールとの対照が眩しい。
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昔、高校の世界史の試験に出たなぁ・・・
作成者の先生も女子高生とつきあって、その子となんとか結婚したが、異動させられたみたいな話もあったし、個人的な思い入れがあって出したんだろうなと・・・今読んで思う。高校生は表向きにバッシングされるが、自分は聖職者(教師ね)の仮面に隠れてぬくぬくと、みたいな。。。
作品はややアナクロな印象だが、現代的な部分もあるのと、印象表現・暗示がうまいので好評価。
たとえば、シェイクスピア悲劇は、みんな死んですべてにけりだが、もう少し時代が進んで、チェーホフなんかは逃げずに生きながらえることこ悲劇となる。
本作品でも、牧師は自分の公的義務を果たし、内心の呵責に耐えかねて告白して死ぬわけだが、それはギリシャ以来の古きよき悲劇。でも、本当はへスターのように、弱く脆く悲しい人間が暗い必然を背負って生きていくことこそが悲劇なんだと思う。換言するに、審判をさっさと受けることよりも、背景の影よりなお暗い「緋文字」=地獄の炎に地上で焼かれることこそ本当の審判だ。
印象表現は略すが、あえてホーソーンを引用すれば「火の光や日光や画面の明暗の再現を鏡の奥に見ていて不思議な数々を夢見、これに真実味を与えることのできない者はロマンスを書く資格はない」
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最初は読みづらかったけど、後半になるにつれて、慣れたせいか比較的スムーズに読めました。
私的にはパールが好き。
パール視点での話も読んでみたいな~
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不名誉な緋色の文字Aを胸に付けて生活するというへスター・プリンという、想像しろと言われても全く実感できないような雰囲気から物語は始まった。胸に同じ緋色のAを持つディムズデイル師の登場は、読者である僕が名乗り出ない人物への怒りを持続するには遅すぎた。へスターにしろディムズデイルただ単に悲劇の人のような印象を受けながら話が結末へとつながってしまった感じだった。解説の解釈もあるだろうが、きっとホーソーンはただ単に悲劇を描きたかったのではないと思うのは当然だろう。しかし自分が読後ただ悲劇のように感じただけだったのは、勿論テーマが重すぎないようにと言う作者の配慮だとは思うが、なんだか悔しいような感じがした。
この物語でディムズデイルがパールを見て自分に似ていると思うシーンで、ディムズデイルはそれを嬉しいと思うのではなくて恐怖と感じるところが、当然の感情なのだろうけど、妙に印象に残った。
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私生児を産んでしまった母とその子の成長と葛藤を書いたお話です。
私は恋がまだよくわからないのでこの評価ですが、登場人物の心情の表現、特に森の中での描写が詩的で素敵でした。
木漏れ日の描写がとても丁寧で、印象的でした。
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私が高校生の時に出会い 衝撃を受けた作品
ずっと心に残り 大学の卒業論文の研究作品に選んだ
ホーソンは非常に難しい理解をするのに骨折れる作家だ
その背景には アメリカンピューリタニズムの過渡期がある
彼の内面にも その不安定さが色濃く反映されているのだ
へスターを始め 登場人物1人1人の心の葛藤と
情景の描写に何気なく込められた 深い暗示
それを理解するには ただ1度だけの読みでは到底無理であろう
根気よく 一つ一つの文脈を理解したうえで この作品の素晴らしさに出会えるのだ
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17世紀ボストンのピューリタン社会において、
不倫の罪を糾弾された女性が、
衣服に姦通を表す赤いAの字を縫いつけて纏わされ、
周囲から非難を浴びて暮らす。
それでも誇り高く毅然としているヒロインは立派だが、
当事者の一方である女性だけが責められ、
社会的制裁を受けねばならない点が甚だ疑問。
時代背景の問題もあるのだろうし、
終盤で、当の男性が謝罪の辞を述べもするので、
一応、バランスが取れてはいるのだろうけれど、
なんとなくスッキリしない。
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(1969.11.01読了)(1969.06.01購入)
内容紹介
胸に緋文字の烙印をつけ私生児を抱いた女の毅然とした姿――十七世紀のボストンの町に、信仰と個人の自由を追究した心理小説の名作。
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訳:鈴木重吉、原書名:The Scarlet Letter(Hawthorne,Nathaniel)
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戒律の厳しい清教徒の町ボストンの牢獄前広場で、赤子を抱いた一人の女性がさらし台に立たされた。彼女の胸には一生外してはならない、“姦淫”を象徴する緋色の「A」の刺繍が施されていた。相手の男の名を詰問されるも、へスターは頑なにその名を明かそうとはしない。
冒頭からその罪を詰問されるへスター。羞恥と孤独に耐えながらも、自身の信念に従って相手の名を伏せ赤子を抱く決死の姿勢はまさに母の強さであり神々しさすらあります。
ストーリー自体はシンプルですが、多くを説明しない代わりに、各々の心理描写が丁寧に描かれています。贖罪を背負いつつ我が子に愛を注ぐことを選んだへスターを中心に、苦悩や復讐など、様々な感情が入り混じり読み応えがあります。
物語の背景には十七世紀頃の宗教観が大きく影響していることから、歴史を知ればより深い読み方ができる作品かと思いました。
『ガウンの胸には上等の赤い布に、金糸で手のこんだ刺繍と風変りな飾りをまわりにつけ、(中略)とても芸術的にできており、又豊かな目のさめるように華麗な幻想にあふれていたので…』(p15)
『その文字は人々の想像の中で新しい数々の恐怖の形をとり、その緋の色は地獄の底の炎からとったように思えた。』(p33)
緋文字の「A」は作中で様々な表情を見せ、読後もしばらく脳裏から離れません。
悲劇ではあるけれど、明るい光が差し込んでいるようなラストに救われました。
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『最後に、侘しい荒涼とした小道を力なく青ざめて惨めに辿るこの哀れな巡礼にとって、自分が今罪の償いをしている辛い宿命に代わって人間的な愛情と同情が、真実の新生活がちらついて見えたことなどがそれだ。
それから厳しく悲しい真理を言っておくなら、罪のために一度人間の魂の中についた裂け目は人間である限りは決して元通りにはならないのだ。』
167年前の不倫小説。
姦通罪で衣類に「A」の文字を一生縫い付けて生活するように命じられた女性とその罪の子の貧しい生活。相手である高名な牧師の罪の意識。身分を隠し復讐し続けることを誓った旦那の嫌がらせ。と、なかなかのどきどきするシチュエーションで、かなりの名作。
『奪い愛、冬』、『あなたのことはそれほど』にも通じる猟奇的な側面があって面白い。167年前の作品なのに色褪せないもんだな。
もちろん『緋文字』の文学的価値とゲスドラマを比べることなんて出来ないのはいわずもがなだけど。
でも、『奪い愛』も『それほど』もドラマの中では秀逸なのもいわずもがなかな。
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柚木麻子さんの「名作なんかこわくない」で紹介されていて、興味が湧いたので読んでみた。
ところどころ、難解な長文がある…この長い修飾文は一体どこにかかるんだ?二重否定文?ってことは肯定?…みたいな。
作者のホーソーンは日本だと明治維新の頃の人で、描かれている時代は豊臣から徳川に代わる頃かな?と考えると原作の英文も難解なのだろうなぁ。初期のアメリカ入植者達の宗教的背景も日本人には分かりにくいところがある。
がしかし、物語の真ん中辺りからグイグイくる。難解な文章にも慣れる?読み流す?
いつの時代も恋愛のもつれはあり、女は強い。
2018.9.20