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紙の本
エンターテインメントに徹した時代マンガ
2002/07/31 18:38
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投稿者:神楽坂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
職人芸の光るエンターテインメントだ。時代設定からいってアドルフ・ヒトラーも登場するが、それは一つのモチーフに過ぎない。だが、ヒトラーに関するミステリーはいい味になっている。完成度は高く、読んでいて面白いが、何となく小さくまとまった作品だという気がした。
紙の本
戦争と言う名の狂気
2002/07/10 17:42
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投稿者:むつき ジン - この投稿者のレビュー一覧を見る
私にとって初めての手塚作品である「アドルフに告ぐ」。本作は、戦争を題材にしたサスペンス作品である。手塚治虫といえば「鉄腕アトム」などのファンタジー作品をイメージしていた私は大きな衝撃を受けた。
物語は第2次世界大戦中のドイツ、アドルフ・ヒットラーの出生の秘密を知った日本人留学生が殺害されたことから始まる。やがてその秘密は、日本に住む幼い二人のアドルフの運命をも巻き込んでいった。
複雑に絡み合ったストーリーを、息もつかせぬ速さで展開して行く様など、もはや漫画の域を越えているといっても過言ではないであろう。
民族浄化と言う誤った大義名分のもと破滅へと暴走を始めたヒットラーの悲劇や、ナチスによるユダヤ人迫害の実態、また日本における戦時中の思想や言語の弾圧など、教科書が教えてくれなかった戦争の悲惨さを改めて認識させられる。
現在の日本は平和だ。だがこの平和は、「忘れてはいけない過去」の上に成り立っている。民族・宗教を超えた、人類の真の平和とは何なのだろうか。その答えを解く鍵の一端を、この物語が担っているのかもしれない。
紙の本
三人のアドルフの数奇な運命を描いた手塚治虫晩年の代表作の一つ
2002/04/15 23:26
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投稿者:かけだし読書レビュアー - この投稿者のレビュー一覧を見る
もしアドルフ・ヒットラーにユダヤ人の血が流れていたとしたら? そして彼の出生に関する重大な秘密の書かれた機密文書が存在していたとしたら? といった大胆な仮説と史実を織り交ぜ、日本とドイツを舞台に、国家や権力、民族間の軋轢によって幼馴染だった二人のアドルフがやがて憎しみあい、対立するまでの過程が壮大なスケールで描かれた手塚晩年の傑作の一つ。
はじめてこのシリーズを読んだ時はホント驚きましたね。漫画でこういった物語も書けるのか、と。ある意味映画に近い物語かもしれません。ミステリーなどが好きな人にもお薦め。
紙の本
紙の上に刻み込まれた、不朽の名画
2002/03/26 16:11
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投稿者:かいたろー - この投稿者のレビュー一覧を見る
手塚治虫はディズニーになりたかったと聞いたことがある。アニメ映画を作りたくて、ほとんど採算割れの安い値段で、漫画家たちが不眠不休でスタッフとなり作ったのがテレビの「鉄腕アトム」だった。
思えばときわ荘の漫画家たちは、みんな映画にあこがれて、映画が作りたかったのだろう。でも映画を作るお金がなくて、紙の上に世界を作り上げる漫画家になった。クリエイティブな才能がマンガ界に集中した結果、日本のマンガは世界の最高水準となった。マンガは日本のハリウッドであり、その頂点にいたのが手塚治虫なのだが、「火の鳥」「ブラックジャック」などの名作の中にあって、もっとも“映画”に近づいた瞬間が「アドルフに次ぐ」だ。
舞台は第二次世界大戦前の神戸から始まる。主人公は2人のアドルフ。一人は神戸に住む、ドイツ人パン職人の気弱だが優しい少年。日本人の隣人たちと平和な日々を過ごしていたが、開戦をきっかけにドイツに帰国。いつしかナチスの元で冷酷な少年士卒となっていく。もう一人のアドルフは、いわずと知れたヒトラー。
ドイツでスポーツ取材中のジャーナリストの行方不明事件が起こる。その真相を究明しようとする兄の行動から、物語は少しづつ動き始め、気が付けば世界を悲劇に導く。戦争が人の心をどう変え、どんな傷跡を残すのか。ありきたりだが、そんな切ないドラマを見せつけられる。
驚くのは構成の巧みさと、一コマ一コマのアングルの絶妙さ。おそらくこのまま絵コンテとして、何の修正もなく映画ができ上がるはずだ。これは手塚治虫が紙のフィルムに刻み込んだ、マンガという形態の名作映画である。読み進めるごとに、あなたの心に広がる映像とサラウンドを実感してほしい。
紙の本
悲劇
2023/09/23 05:34
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争に巻き込まれるものはすべて不幸に陥る。そんな悲劇に合わないように考えさせられる内容となっている。読後はそれぞれの読者が平和の時代について行動することになればいい。
紙の本
日本漫画における群像劇の到達点
2003/03/14 22:24
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投稿者:notmoly - この投稿者のレビュー一覧を見る
手塚治虫は、似顔絵がとてもうまかった。
人間の特徴をとらえて、少ない線に凝縮し、表現することにかけては、天才的な才能を持っていた。
単に、ヴィジュアルとしての似顔絵ではなく、言葉を話し、泣き、笑い、怒る人間の「様」をとらえて「漫画」として描き出すことにかけて、天才であったと思う。
『アドルフに告ぐ』で圧倒されるのは、そういう人間の有り様が、実にいきいきと、多彩さと豊かさをもって描かれているということだ。
それだけなら何のこともないように思えるが、『アドルフ〜』には、手塚が数十年に及ぶ漫画家キャリアを通して生み出し、幾多の作品に繰り返し登場させてきた、おびただしい数のおなじみキャラクターがいっさい登場しない(約2名の例外を除く)。
つまり、この作品に描かれた多彩な登場人物たちは、すべてこの作品のために新しく作られたキャラクターなのだ。
これは、すごい。
同じく晩年の作品『陽だまりの樹』にも言えることかも知れないが、『アドルフ〜』で描かれた、人種や社会的身分のバリエーションはけた外れだ。
とにかく、どんな小さな役柄のキャラクターも鮮烈な印象を残す。
主人公の潔白を証言するおばさん、ナチスのエージェントに協力を求められ「ハイル、ヒッタラー」を繰り返す駐在、神戸の町で半端者を仕切る「親分」、海千山千のUボート艦長…
これら、小さな役を与えられた人々が折り重なって、動乱の時代を舞台にしたこのミステリー劇に、圧倒的な厚みとリアリティを与えている。
それは正に「漫画」ならではの力である。
未読の方は、ぜひこの日本漫画がたどりついた群像劇の到達点を堪能してもらいたい。
個人的には、憲兵隊士官、本多大佐の造形に非常に惹かれた。
「由紀江さん、まことに失礼する…」
ラストのキスシーンは、手塚漫画屈指の名ラブシーンだと思う。