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踏みはずし (白水Uブックス 海外小説の誘惑)
財界の大物のスキャンダルをつかんだジャーナリストの前に暗殺者が現われた。だが、歴史書を愛読し、哲学的なセリフを口にする殺し屋は奇妙な要求をする。独特の静謐なスタイルでつづ...
踏みはずし (白水Uブックス 海外小説の誘惑)
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商品説明
財界の大物のスキャンダルをつかんだジャーナリストの前に暗殺者が現われた。だが、歴史書を愛読し、哲学的なセリフを口にする殺し屋は奇妙な要求をする。独特の静謐なスタイルでつづられる小説世界。1994年刊の再刊。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
ゴルゴ13とポール・オースターの奇跡的な出会い
2003/02/14 04:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヲナキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜ誰もこの小説をレコメンドしないのか不思議なくらいカッコいい小説だ。もうとっくの昔に読んでいて、「なにをいまさらこの小説を俎上に上げるんだ」というような海外小説愛好家を前にしては、自分の無邪気さに恥じ入るばかりだが。もしかすると「できれば教えたくない」と密かなお気に入りに加えておられる方が多いのかもしれない。しかし、本当に認知度が低いということであれば、ミシェル・リオというフランス人作家をこのまま埋もれさせておくのはもったいない。同時期に出版されたジャン・エシュノーズの作品はその後も翻訳が出ていたというのに。当時(1995年ごろ)、白水社の「新しいフランスの小説シリーズ」を一通り読んでみたのだけれど、この小説が群を抜いていた。ミシェル・リオは寡作ながら他にも作品を出しているので、ぜひどこかの出版社で翻訳本を刊行してもらえないものかと願っている。
1時間ほどでさらりと読了できるほどの小品である。ひんやりと硬質な文体が緊張感のあるストーリー展開によく合っていてサクサクと読み進めてしまう。大物財界人とジャーナリスト、殺し屋が絡み合うという安手のノワール小説のようだが、全編に凛とした美しい気品をたたえている。その理由は、文章のリズム(訳者:堀江敏幸さんの翻訳手腕に負うところが大きいのだろう)もさることながら、シニカルな禅問答が繰り広げられる哲学的ダイアローグにあると思われる。これから読んでみようと思われる方はこの会話の妙味もじっくり堪能していただきたい。誤解を恐れずに告白すれば、ポール・オースター作品のような趣が感じられる。
主人公である思索家の殺し屋は、冷徹に任務を遂行していくその無駄のないシステマティックな仕事ぶりこそ、デューク東郷や『ニキータ』のジャン・レノ、あるいは『サムライ』のアラン・ドロンを髣髴とさせるが、アナール派歴史学者マルク・ブロックやブローデルの著作を愛読する(!)というあたりで彼らとは決定的に異なっている。しかし女に対して貪欲なところなど実にゴルゴ的で、「恋愛感情が快楽を妨げる」としてキスや正上位を嫌うこだわりのキャラ設定もイイ感じ。
男性読者ならシビレること間違いなし。
紙の本
2001/09/30朝刊
2001/10/04 22:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
孤高で寡作のフランス人作家による中編小説。名前も与えられていない主人公の「男」は歴史書を愛読し、哲学的せりふを口にする冷徹な暗殺者として、財界の大物がからんだスキャンダルに首を突っ込んでいく。夢と論理の相克を描きながら、構成が乱れることなく、ラストまで端正に進む純文学的推理小説だ。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001