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パイド・パイパー 自由への越境 (創元推理文庫)
●米澤穂信氏推薦――「ひとしずくもたらされる善意。その尊さが、胸に迫る。」●宮部みゆき氏推薦――「気骨あるおじいちゃんと、健気で可愛い 子供たちの大冒険。たまりません。」...
パイド・パイパー 自由への越境 (創元推理文庫)
パイド・パイパー 自由への越境
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商品説明
●米澤穂信氏推薦――「ひとしずくもたらされる善意。その尊さが、胸に迫る。」
●宮部みゆき氏推薦――「気骨あるおじいちゃんと、健気で可愛い 子供たちの大冒険。たまりません。」
●池澤夏樹氏推薦――「老いて無力な主人公が(…)危機にいかに対処して、子供たちを安全な国まで連れてゆくか。冒険小説というのは危難の設定が鍵だが、この話はそこのところがうまくできている。」(週刊文春2002年7月25日号より)
フランスの田舎道でパンクのため立ち往生したバスは、ドイツ軍の編隊の機銃掃射を受けて動けなくなった。これから先は歩くしかない。老イギリス人は、やむなくむずかる子供たちの手を引いた。故国を目差して! 戦火広がるフランスを、機知と人間の善意を頼りに、徒手空拳の身でひたすらイギリス目差して進む老人と子供たち。英国冒険小説界の雄が贈る感動の1編。訳者あとがき=池央耿/解説=北上次郎【本の内容】
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紙の本
第一級の冒険小説
2004/03/06 23:46
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
引退した老弁護士と、まだ年端もいかぬ子供たち。1940年、ドイツの侵攻により世情不安となったフランスから、故郷のイギリスを目指しての脱出の旅を描いた冒険小説。
といっても、銃撃戦やカーチェイスなどのアクションがあるわけではなく、また、老人が長い年月の間に培った機知をもってドイツ軍に一泡ふかす、子供たちが大人顔負けの想像力と行動力とで奇想天外な作戦を展開、侵略者たちをやっつけるといった内容でもありません。難儀にあって、時にはなすすべもなく運命に身をまかせ、時には互いに励ましあってのイギリスへ向かっての旅路と、老弁護士の忍耐と子供たちのわがままにもなる無邪気さがこれでもかとばかりに書き込んであります。
ドンパチと派手さはないものの、じっくりと読ませてくれる第一級の冒険小説です。
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年齢を重ねて身についた「忍耐力」が、子供たちを苦難から救う。
2019/09/21 08:50
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:隣でジントニック - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次大戦下、傷心旅行でフランスを訪れた英国人の老主人公が、英国に帰国する道すがら出会った幼児たちを「人として当然のこととして」引き受けていく。予想外の戦況悪化により数々の困難に直面する老主人公に人並以上の勇気や洞察力はないが、危機に直面するたび「長い人生で辛苦を重ねたからこそ身についた忍耐力」を発揮する。そうすると人々の警戒心や敵対心の裏に隠された善意が引きずり出され、老主人公に進むべき道を示すのだ。この本は、老いることで獲得できる忍耐力こそが年寄りの強みでもあることを教えてくれる。いろいろな読み方はあろうが、この作品は冒険小説というよりも、(私のような)中高年者が老いに向かっていく上での参考書としてお勧めしたい。
ところで、一行が出会うフランス人は押しなべて初対面ではちょっと意地悪であり、ドイツ軍兵士はみな高慢ちきだ。しかし老主人公が忍耐力で接するとフランス人もドイツ人も同じように温かい心を覗かせる。誰もみな本当は優しい人間でありたいのだ。人間の本性に対する作者の信頼感が感じられる。一方で、フランス脱出の土壇場で一行を捕らえたドイツ軍将校は、兄が燃え上がる戦車から脱出し投降しようとしたところを英軍兵士に射殺されたことを老主人公に明かす。英国人作家による英国人主人公の物語でありながら、戦場での英軍の卑劣さを描くことを厭わないところに、英国文学の懐の深さを感じた。
紙の本
素敵に理想的な冒険小説。
2002/07/02 20:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
粗筋は非常に単純。
第二次大戦中、七十歳のイギリス人老弁護士が、旅行先のフランスで、ひょんなことから知り合いになった夫婦から、幼い兄妹を連れてイギリスまで帰ることになる。
障害となるのは、ドイツ軍の侵攻により寸断される交通網、連れている子供のの気まぐれや発熱、慣れない異国の地、それも外国人などほとんどみかけないような辺地で宿や食料を見つける手間とか、主人公自身の体調。連れていく子供たちも、なぜか、一人ふたりと増えていく(このあたりの展開が、タイトルの「パイド・パイパー」の由来)。そうした障害をものとせず、とっさの機転だけと周囲の人々の温情だけを頼りに対処していく老イギリス人紳士の毅然とした様子が、なにげにかっこいい。空襲中のロンドンのクラブで、たまたま居合わせた人に老人が旅行中の出来事をとつとつと語り始める、という導入部もいい。
著者のネビル・シュートは、わたしもご多分に漏れず、「渚にて」の作者として記憶していたのだが、どうしてなかなか達意のストーリーテラーである。
活劇なし、謀略なし、裏切りなし、派手な要素なし。しかし、素敵に理想的な冒険小説。
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不思議な味わいの逃避行
2002/06/25 15:25
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヒロクマ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「パイド・パイパー」とはドイツ民話「ハメルンの笛吹き」の主人公である。彼は町の人々の頼みで、大発生したネズミたちを笛の音と供に川へ誘い込み、根絶やしにする。ところが町の人々は約束していた報酬をくれず知らんぷり。怒ったパイド・パイパーは、今度は笛の音で町のすべての子供達を誘い出し、いずこへと去っていく、というあの民話だ。
それでこの小説はと言うと、時は1940年の夏。折しもドイツがヨーロッパ各地に侵攻し、フランスにも攻め入った直後。フランスを旅していたイギリス人で元弁護士のハワード老人が、ひょんなことから旅先で同宿した同郷の国際連盟職員の子供2人を、戦火を逃れるためにイギリスまで連れ帰ってくれるよう頼まれる。またそれを聞いたホテルのメイドにも、姪をイギリスに住む肉親のところへいっしょに連れていってくれと頼まれる。
最初は渋っていたハワードだが、汽車と船を乗り継ぐだけの短期の旅だと考え、引き受ける。ところが戦況は次第に危うくなり、列車はのろのろとしか進まず、しまいにはこれ以上は進めないと止まってしまう。乗り換えたバスはドイツ軍機の爆撃を受け大破。
さらに旅の途中で両親を亡くした孤児や、かくまってくれたユダヤ人農家の子供も加わり、老人とたくさんの子供達の奇妙な旅が続く。
子供たちは旅の途中、熱を出してぐずったり、やれドイツ軍の戦車が見たいだの、腹がへっただの、英語を話したいだのと、とにかく手こずらせる。もちろんドイツ戦況下のフランスで、イギリス人に連れられて旅することの意味がわかっていないからなのだ。こんな風にほとんど爆弾同然の子供たちをつれて、いかにしてフランスから脱出するのか?ここがこの物語の読みどころである。
確かに読んでいて、こりゃ並大抵の旅ではないな、とつくづく感じた。私にも現在5歳と4歳の子供がいるが、ちょっと電車に乗って出かけるだけでもかなり神経を使う。平和な日本でこうなのだから、戦時中、しかも敵国軍のまっただ中で、子供をたくさん連れての旅なんて、それだけでもうほとんど死にそうな気分である。
途中、唯一の知り合いであるフランス人大佐の家を訪ねたことから、物語は変化を見せ始める。
子供を連れて、しかも非力な老人の旅なので、派手なアクションシーンがあるわけではない。時には子供達がいることが武器となり、難局を乗り切っていく。
最初は貧乏くじを引いたかに思っていたハワードだが、旅を通じて子供達に愛情がわき、何としてもイギリスまで無事に連れていこうと奮闘する。
クライマックス、老人と子供達は絶対絶命の窮地に追い込まれるが、意外な活路が見えてくる。果たして無事脱出できるのか? それは読んでのお楽しみ。
いつの時代、どの国であっても、子供達の命を守りたいという気持ちに変わりはない、ということが端的にかつ力強く伝わってくる物語である。
紙の本
大人に読んでほしい童話
2002/04/14 11:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Lady - この投稿者のレビュー一覧を見る
時は第二次世界大戦下、ドイツがフランスに侵攻しようという頃。スイスに静養にでかけた主人公のイギリス人の老人は、ひょんなことから、見ず知らずのイギリス人の子供達をつれて、帰国することになります。簡単、とはいえないまでも、すんなり帰国できるはずの彼らは、ドイツ軍の侵攻が進むにつれて、交通機関がずたずたになり、予定以上の時間を費やして、困難な旅を続けます。
ただそれだけの物語なのに、老人と子供たちのゆっくりした足取りで、敵からのがれて進む様が、なんとサスペンスに満ちている事か。何度でも読み返したくなる傑作です。
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しみじみとした本当の冒険小説
2024/02/13 18:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
しみじみとした本当の冒険小説である。第二次世界大戦中のフランスからの脱出 ということなので、戦闘シーンがあるのかなと思ったが、主人公弁護士の静かな苦労と子どもたちの機智が光るしみじみとした小説であった。現在でもウクライナやパレスチナで同じようなことが起こっているのかもしれない。
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面白かった!
2017/11/10 00:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tommy - この投稿者のレビュー一覧を見る
本屋さんでたまたま見つけて読みましたが、期待以上に面白かったです。
戦争の話ですが、主人公の冒険物語であり、困難な状況でも他人を思いやることができる人たちに心温まります。
人物描写や戦争を俯瞰しているような文章から、現代に書かれたもののような錯覚を覚えましたが、1942年に書かれたものと知り、驚きました。
この作家の他の小説もぜひ読みたいと思います!
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老パイド・パイパー、苦難の珍道中
2006/10/01 08:40
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
第2次世界大戦初期、ドイツの電撃作戦で戦況が急展開した1940年初夏。ジュネーブに近いフランスの山村で静養していた70歳の英国紳士は、帰国を決意するが、知人から幼い子供2人を託される。だが、ドイツの侵攻でてんやわんやの中、道程は困難を極める。しかも、面倒を見なければならない子供は、雪だるま式に増えていき…かくて、パイド・パイパー(ハメルンの笛吹き)よろしく、子供をゾロゾロ引き連れて、老紳士の苦難の珍道中が展開される。
この種の旅で遭遇すると思われる、さまざまな困難や障害(まだ幼いため危険を全く理解できず、聞き分けのない子供たちそのものも非常に大きな障害)を、老紳士が超人的な忍耐と寛容と粘り強さでもって、1つまた1つと乗り越えていく過程が、作者の実体験かと思われるほどリアルに、綿密周到に描かれ、非常に読み応えがある。また、極めて大変な旅にもかかわらず、”珍道中”と言いたくなるような、ほんのりとしたユーモアが漂っているのもとても良い。
だが、最後の最後に主人公たちを助けてくれる人物の動機については、もう少し曖昧でない書き方をしてほしかったと思う。一読ですんなりわかったなら、あるいは手放しで感動できたかもしれない。また、一行は子猫を拾うのだが、作者が途中で忘れてしまったらしく、どうなったのかがすっぽり抜け落ちている。私が動物好きなだけに、そして綿密周到さを持ち味とする話だけに、この脱落はものすごく気になる。心に残る良い話なのに、惜しいと思う。
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責任が人を強くする
2022/08/14 10:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pizzaco - この投稿者のレビュー一覧を見る
弁護士の仕事を引退し、好きな釣り旅行を楽しみに余生を送るつもりの主人公。戦争の拡大で、そんな旅行先の彼を思いがけない状況が。フランスから、母国イギリスに知人の子ども二人を連れ帰ることになる。イギリス人であることがバレれば、命がない。そんな状況で、次々に他の子どもまで助ける羽目になっていく。戦死した息子の婚約者であったフランス人女性の助けも借りて、彼らがどのように危険をくぐり抜けていくのか、イギリスに着いても、そこもまた、空襲のさなかであるのに、イギリスに身寄りのない子をアメリカに送り出すことも含め、年長者が幼い者を守ろうとする意気に人生の終盤をどう生きるか、考えさせられた。
紙の本
お子様向けのやさしさが溢れるが戦争はそんなやさしさを悲惨に突き落とすものなのだ。
2012/06/18 22:29
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
そうでもなければ、触手を動かさなかったであろう小説でしたが、作者があの映画『渚にて』の原作者と知ってそれではと読むことになりました。
『渚にて』に原作小説があったとは知らず、映画の思い出しかないのだが、中学生か高校生かのころであって、鮮烈で印象的な映像でした。テーマ曲「Waltzing Matilda」も、確かオーストラリアの民謡のような気がしているが、繰り返しのフレーズが耳の奥でいつまでもこだまして、今なお時に口ずさむほど忘れられないメロディーでした。エヴァ・ガードナーとグレゴリー・ペック、アンソーニー・パーキンスが出演していました。核戦争で北半球は全滅、ただオーストラリアのみが生存可能な地としてかろうじて残っているが、放射能汚染は南下しつつやがてこの地の人々も死を迎える刻限が迫っている。絶望の極限状況に正気を失い、オートレースに命を懸ける若者もいるが、多くは静かにこれまでの生を感謝し愛を感じながら安らぎのうちに死を迎えるのである。死に絶えたはずのアメリカ大陸から発信された正体不明の無線通信を傍受、故郷で死を迎えたいと願うものが潜水艦で合衆国へ向かう。潜望鏡からみたゴーストタウン・サンフランシスコ、生命がないだけでかわらずそのままに林立する静寂の摩天楼群。このシーンが見せ場だったのでしょう。
破滅テーマにしてはきれいな出来栄えでしたが、当時はうそ臭い感じがぬぐえませんでした。それは、その何年か前ですが日本映画『原爆の子』や『広島』の映像の、あの被爆地の地獄の光景が焼き付いていて、核戦争の人類滅亡は決してきれいごとですむものかとの思いが強かったせいである。
この英国の作家ネビル・シュートの『パイド・パイパー』、もともと第二次大戦のさなか、1942年(昭和17年)に発表された60年以上も前の作品。休養のためにフランスの片田舎に釣りを楽しみに出向いたイギリス人弁護士がひょんなことから数人の子供を連れ、ナチスのフランス侵攻と拡大する戦火をかいくぐり、故国イギリスへ逃れる脱走譚である。70歳近い老人と着替えも独りではできないような幼子の冒険であるからエキセントリックな挿話はなく、善意と愛と誠実が貫かれ、運命を淡々と受け入れる勇気の尊さを描いている。
しかし戦争というもののとらえかたに時代性とか国民性なのだろうか、違和感を感じてしまう。いま、拡大する現代戦争、難民の悲惨を見つめているとやはりこの老人と子供の脱走譚に、ある種の感動を覚えても、それは過去のノスタルジー、ありえない願望にすぎないのだといわざるをえない。
なお、パイド・パイパーとはドイツ民話の主人公「ハメルンの笛吹き」だそうだ。 ドイツのそれは人攫いだがイギリスのそれは人助けということか。あの当時のイギリス人の驕りの表れかもしれない。