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商品説明
【日本SF大賞(第23回)】20年前の壊滅的な隕石落下により、大阪は異形の街と化した。落下地点から半径6キロは危険指定地域とされていたが…。奇怪なドラッグや謎の奇病がもたらす恐怖と崩壊を描く、漆黒のテクノゴシック。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
牧野 修
- 略歴
- 〈牧野修〉1958年大阪府生まれ。大阪芸術大学芸術学部卒業。92年「王の眠る丘」でハィ!ノヴェル大賞受賞。99年「スイート・リトル・ベイビー」で第6回日本ホラー小説大賞長篇賞佳作受賞。
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紙の本
このカバー、苦手なんだよね。美しさか、色合い、センス、やっぱり女性としてはそっちを求めてしまうわけ。でね、ちょっと見に、キモイんデス、内容も
2003/12/21 21:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「大阪の守口市におちた隕石は、周辺を危険地域に変えた。人体がゼリー状になる奇病麗腐病、ドラッグが人を変貌させる」SFホラー。純SFでも、古典的なホラーでもない。ストーリーを追う小説というよりは、ある時代の混沌を描くジャンル分け不能の作品。
20年前、破滅的な隕石落下で大阪は異形の町と化した。守口市を中心とした半径約6キロのエリアは特D地区と呼ばれ、危険地域に指定されたものの、復旧作業が中断されたままになっている。そして、三年後には全身の皮膚がゼリー化する「麗腐病」が発生した。第一期は同じ動作を繰り返し、第二期は皮膚が透明になりゼリー状に、表面が繊維状になる第三期となる奇病。その原因は不明である。
主要な登場人物を絞りにくい小説である。幾つかの話が進行するが、必ずしもそれが綺麗に絡むわけではない。とりあえず、話の進行順に紹介すれば、代々医者の家に生まれた七堂貢がいる。彼は、月に追われている少女 沙子と出会い、周囲の反対を押し切って結婚する。2人の間には、中々子供が出来ないが、そのうち彼女は失踪。帰ってきた時は、妊っていた。彼女の命と引き換えに生まれたのが息子の桂男。
桂男は、再婚した父と母の間に生まれた妹ハル子を溺愛する。そして新しい母の死。父の疑いの目は、血の繋がらない息子に。そして、少年は失踪。後に残されたハル子は12歳で、自殺。妊娠をしていた。以来、貢は桂男を憎み続けている。その桂男は、菊田服飾学園で天才の名をほしいままにし、現在では若きオーナーデザイナーとして、世の中に君臨しようとしている。
その桂男に、D地区で謎の女たちに襲われたところを救ってもらったのが、授業中にケータを利用しマイクで話し合う函崎アダリと三嶋紫の2人。しかし、三嶋は早々に行方不明になる。次に出てくるのが、医師の涼木王児、かれは探偵事務所の所長でもある。かれが勤務する病院で、「麗腐病」患者のゼリー状となった若い女の顔に、舌鼓をうつのが蓮元と夷の2人の老人で、彼らはともに巨大複合企業HEの名誉会長である。
以下、涼木王児の弟で、自衛官となり危険地域にいったまま帰らぬ人となった達也。涼木の事務所に勤める33歳のピッキングを得意とする盗聴屋 菜蛹栄太郎、菜蛹の盗聴に気付き、それ以来彼と暮らすようになった美香、新興暴力団団須仏組の組長マーシー・アナーキー、ミイ、ケイという殺人淫楽者、ネイキッド・スキンというドラッグよって作られたスーツ ターン・スキンを身に纏い虎に変身するサヤマという暴力団員、〈街読み〉速水優子、玩具メーカー社長高坊美香子、傀儡后陛下といった夥しい人物が登場する。
彼らと秘密結社タイトロン、HE社が計画するオルガン計画、ホモ、ヘテロセクシャル、トランスセクシャル・レズビアンなどが背景となり、あるいは前面に踊り出て、摩訶不思議な世界が現れるのだが、どこか情感溢れるという感じがする。一歩間違えば、スプラッター・ホラーになるぎりぎりのところで綱渡りをしているといった印象。
牧野修は1958年生まれ。あとがき「物語から遠く離れて」で、連載という形式の予想もしなかった面白さ、傑作を作ろうとする意気込みなどを、含羞を込めて語る。西澤保彦はセクシャル・ミステリ『奈津子』シリーズで、牧野のセクシャリティについて冗談のように語っていたが、これを読むと「マジカな?」と思ってしまう。日本SF大賞受賞作。藤原ヨウコウのイラストは、美しいのにどこか血の匂いがする。
紙の本
牧野修ベスト又はオンリー・リアル牧野修
2003/09/27 19:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:青木レフ - この投稿者のレビュー一覧を見る
イメージの奔流というしかない。異世界めいた近未来の
グロテスク。
読み手を主人公に憑依させて物語世界を眺めさせるのでは
なく、様ざまな視点にシフトしながら世界を詳らかにして
いく方式。だからこその乾いた視点、イメージの洪水と言
うべきか。
牧野修のことを読みやすいが可もなく不可もない作家と少
し低く見ていたのだが、これは天才の仕事といえる。今ま
で読んだのは水で薄め過ぎた水割だった。
「ラストがついてけません」と取る人もいようが、重要なのは
途中のイメージのほうに思える。(presented by 純粋呪文)
紙の本
ドラッグ・パンク・ファッションSF登場!
2002/04/25 22:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風野春樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
服は人なり。
衣装とはその人の人格のすべてが表現されているものであり、同時に衣装こそがその人なのである。衣装は人間の能力を引き出し、意識にまで影響を及ぼす……という奇想にもとづいて、華麗な物語を展開したのが、ワイドスクリーン・バロックの代表作といわれるバリントン・ベイリーの『カエアンの聖衣』。
この奇想の上にさらに何倍もの奇想をまぶし、衣装哲学にドラッグ、フェティシズムに人形愛、それに仮面ライダーの隠し味も加えてぐちゃぐちゃにかき混ぜたドラッグ・パンク・ファッションSF、それがこの『傀儡后』である。
舞台は隕石の直撃から二十年を経た大阪。落下地点から半径五キロの範囲は特別危険指定地域として立ち入りが禁止されている。特別危険指定地域に足を踏み入れた調査団はすべて消息を絶ち、戻ってきた者はひとりもいないのである。さらに、隕石の落下後より、関西を中心に麗腐病という原因不明の奇病が流行。麗腐病に侵されるとしだいに体はゼリー状になり、特別危険指定地域の中に消え、そして二度と戻らないのだ。そしていつしか特別危険指定地域は、デンジャー、デスなどの意味をこめて、こう呼ばれるようになっていた。——D・ランド。
ただひとりのD・ランドからの生還者である私立探偵の涼木王児は、見えざる支配者階級の頂点に立つ二人の老人の依頼を受け、危険指定地域内部を探る〈オルガン計画〉を推進していた。そして、麗腐病と関わりのあるドールプリンセス・ミカという人形の製造元を訪れた涼木は、D・ランドを支配する「傀儡后」という存在に出逢う……。
と、設定とあらすじを紹介してみたものの、実はこの物語にとって、ストーリーはあんまり重要じゃない。
衣服と人、狂気と正気、人間と人形、女性と男性、内側と外側、モラルとインモラル。すべての境界を侵犯して繰り広げられる、華麗なるイメージの奔流。物語として成立しうる許容量を遥かに超えた大量のアイディアを惜しげもなく投入して描かれる、めくるめく物語。それがこの小説なのだ。
あまりにも風呂敷を広げすぎて、収束がいささかうまく行っていないきらいがあるのだけれど、そんなことは小さな瑕瑾にすぎない。眩暈。幻惑。陶酔。それ以外の何が必要というのだろう。
これは、牧野修がベイリーに叩きつけた挑戦状だ。とにかく、怒涛のようなイメージに翻弄され、畸人たちの宴を堪能すべし。 (bk1ブックナビゲーター:風野春樹/精神科医)
紙の本
著者コメント
2002/09/11 11:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:牧野修 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この小説は皮膚の話であり内部と外部の話であり服飾と月と地球の関係について語ってもいる。登場するのは美少年やそうでもない中年や男や女やどちらでもない人々だ。奇想小説と呼ぶに相応しいものを書いたつもりなのだけれど、どうでしょう(ちょと弱気)。