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サイレント・ナイト (光文社文庫)
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紙の本
緻密な構成に脱帽でした。
2017/07/26 00:20
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
緻密な構成に脱帽でした。中盤までは事件が続く割に緊張感に欠けることに不満だったが、その後一気に誘拐事件、ジャンボ機4機の爆破とそのテレビニュースでの報道脅迫と加速。一気読み体制に入った途端に犯人を晒し、その理由で訴えてくる何とも悲しい犯罪暴露小説でした。人を憎む?犯罪を憎む?そもそも本質的に悪の人間、善の人間ているのかな。本当に悲しい作品でした。
中盤まではいろいろ事件は起こるのだが、それが何を意味するのかが良く判らない。ただ、明確なのは、鶴見雅彦が途轍もない悪で、事件の全てに関与しているということだけ。しかし、これでは単純すぎる。そこでやっと冒頭の謎の人物「ウツボ」が重要性を増してくる。鶴見雅彦がリーダー的だった悪4人組を一人ずつ消していく「ウツボ」という謎の人物。最後に残った鶴見雅彦に対しては、息子を誘拐して人質し、彼が運営する格安航空会社所有の旅客機全てを羽田に集めて爆破することを要求する。やっと、論点が明確になり面白味倍増ということで、俄かに3点から4点のレベルアップでした。ワクワクして読み続けると、突然終盤のP272で全ての種明かし。呆気に捕らわれると同時に、己の馬鹿さ加減に気付く。答えのヒントはずっと目の前に有ったではないか。何故、古畑実:飛行機整備士が主役で、その息子の話が延々と続くのか、そしてどうも死んでいるらしい息子の話が実に曖昧。一方では、何故か親しい間柄の角田勇:刑事が調査を進めると、どうも鶴見雅彦と古畑実の息子の死とに何か関係が有りそう。しっかりと、ネタは晒しているのだが肝心の鍵を見せたないため読者には犯人は特定できない。私などは、鶴見香代子が婚約者だった鶴見暁彦を殺したのが鶴見雅彦だと知っての復讐と思ってしまった。しかし、何と、ウツボは古畑実であり、息子を集団暴行で殺された復讐であったとは。ただ、救いは、古畑実は15年も下手人である4人の生き方を見守り、更生するなら不問に付すという心の広さは持っていた。しとし、下手人4人はいずれも改悛することもなく、フシダラナ生き方を続けていた。15年後の結末を見て古畑実はウツボとなり、復讐に走るのである。考えさせられる内容に動かされたが、中盤までの謎めきすぎて興味を喚起しない展開。そして最大の欠点は、愛した鶴見暁彦を殺され、その犯人である弟の鶴見雅彦の妻となり息子までもうけた鶴見香代子とは何者なのかという疑問。ここはもう少しケジメつけて欲しかったです。女性作家の割り切った非情さですか。(笑)