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イラクとアメリカ (岩波新書 新赤版)
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目次
- 地 図
- 年 表
- 序 章 「テロの背後にはイラクがいる」
- 第1章 登 場──反米・反帝国主義に向かうイラク
- 1 親英王政としての誕生
- 2 反米強硬派としてのスタート──バアス党政権初期
- 第2章 出会い──石油と革命と戦争と
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紙の本
爆撃—その先と後にあるもの
2002/09/16 21:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YOKAN - この投稿者のレビュー一覧を見る
2002年9月現在、国際政治はイラクに対するアメリカの攻撃準備をめぐって揺れ動いている。そもそも、中東の小国・イラクは、なぜ巨大な風車のアメリカと対立する事になったのか…。本書は、その起源をイギリスによる植民地支配の時代までさかのぼりながら、徐々に解き明かしてゆく。
そもそも、イラクという国は、中東の多くの国々と同じように、列強の無理のある線引きから生まれた国だ。イギリスからの独立から出来たイラク王国は、王族もイギリスに指名されたサウジアラビアの王族を引っ張ってきたものだったのである。こうした人為的な国家であるイラクが生き残ってきたのには、アメリカの支援があり、なにより石油の利権分配があった。そういう意味では、イラクの歩んできた道は中東諸国の多くと同じだ。だが、なぜフセインはその力の根源のアメリカと対立し続けるのか…。本書を踏まえることで、読者がメディアから離れてイラクへの攻撃を考える、良いきっかけとなる本である。
紙の本
フセイン、討つべし!
2003/02/25 15:51
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
イラク研究家の酒井啓子さんが湾岸戦争を軸にイラクが
今日まで歩んできた歴史を丁寧に分かりやすく解説した
好著である。この本の良いところは、地域研究の専門家に
ありがちな、対象への異常なのめりこみが無くイラクとの
ほどよい距離を酒井さんが保ち続けている事である。
「市民の目線」「民衆の目線」と称して現地人を著しく
美化し誉めそやして、それと反比例するかのように
豊かなアメリカ、豊かな先進国を「民衆の敵」「市民の
敵」として排撃するサヨクにありがちな色眼鏡が本書には
全く無い。アメリカについての記述もバランスが取れて
おり、ことイラクや中東に関して言えば、罪が重いのは
英国でありフランスであってアメリカは中東との関与が
薄いとはっきりと指摘しているところには好感が持てる。
そして不勉強な反戦団体が「アメリカのイラク攻撃の狙いは
イラクの石油利権だ」という主張も「冷静に考えれば根拠が
無い話」だと明確に排除している。そして何よりも悪いのは
サダム・フセインであって彼のような暴君に対するイラク
国民の不満は暴発寸前であるとも酒井さんは指摘している。
こういう冷静な分析者の著作が広く出回ることは、日本に
ありがちなベトナム反戦平和運動以来の「反米運動」に
一矢を報いる意味でも意義深い事だと思われる。お勧めの
一品です。