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「満州国」見聞記 リットン調査団同行記 (講談社学術文庫)
1931年9月18日、中国東北部で勃発した紛争に世界は震撼した。国際連盟は実情把握のため、リットン卿を団長とする調査団を派遣する。日本、中国、満州、朝鮮――。一行はゆく先...
「満州国」見聞記 リットン調査団同行記 (講談社学術文庫)
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商品説明
1931年9月18日、中国東北部で勃発した紛争に世界は震撼した。国際連盟は実情把握のため、リットン卿を団長とする調査団を派遣する。日本、中国、満州、朝鮮――。一行はゆく先々で昭和天皇、張学良、溥儀ら錚々たる面々と会い、また名もなき民衆の生活をまのあたりにした。調査団の一員のドイツ人政治家が見聞した、戦乱前夜の東アジアの姿。【商品解説】
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満州事変当時の状況を克明に記録したリットン調査団の目から見た見聞録です!
2020/04/07 09:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、満州事変の状況を調査するために国際連盟が組織したリットン調査団の一員であったドイツ人のハインリッヒ・シュネー氏によって著された当時の状況についての見聞録です。1931年に我が国が中国の満州へ侵攻し、そこを占領したという事実は、一夜にして世界中を驚かせ、その調停のために国際連盟は国際調査団を現地に派遣して、その状況を徹底的に調査しました。調査団は、日本、中国、満州、朝鮮と一つ一つを巡りながら、その時々に昭和天皇、張学良、溥儀といった錚々たる人物と面談します。そして同書ではその当時の様子が克明に、一ドイツ人の目を通して描かれています。同書の内容構成は、「第1章 日本の印象」、「第2章 内憂外患の中国」、「第3章 満州事変のあと」、「第4章 北満から関東州へ」、「第5章 リットン報告書作成の旅」、「第6章 帰国の旅」、「第7章 満州事変と国際連盟」となっており、貴重な史料です。
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第二次世界大戦を考察し、背景として読む見聞記。
2009/07/17 10:55
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
副題に「リットン調査団同行記」とあるように、満洲事変後の日中間の問題解決のために東洋を訪れた国際連盟調査団のドイツ代表ハインリッヒ・シュネー博士の見聞記である。このリットン調査団については歴史教科書で必ず目にするものであり、日本の大陸侵略の問題点として提示される項目である。しかしながら、彼ら調査団がどこで何を見て聴いたのかは詳細にわからず、そのレポート内容も知らずに終わっているのがおおかたではないだろうか。
内容も知らないおおかたの一人である当方も、詳細に調査団員の経歴を知って驚いたが、国際連盟に加盟していないドイツ、アメリカがメンバーに加わり、更にはメンバーの中心であるリットンはイギリスの植民地であるインドで生まれ、父親は元インド副総督であった。次に、フランス選出のアンリ・クローデル将軍はフランス植民地軍総督であり、続くイタリア選出のアンドロパンディでようやく元外交官が登場することになる。ちなみに、アメリカの委員フランク・ロス・マッコイ将軍はアメリカの植民地であるフィリッピンでの生活が長かったというし、ドイツ選出の著者ハインリッヒ・シュネーもドイツが植民統治していた南太平洋サモア、ニューギニアでの生活が長かったという。
つまり、欧米列強による植民地支配のベテランが日本の植民統治を監察に来たというものである。
本書を読んでいてさらに驚くのは、著者が旧ドイツの植民地である中国の青島において、市街地における整備、街路樹などの植林事業は成功事例であり、このことが日本の朝鮮統治においても有効に活用されているという考えを抱いていることである。アジアを植民地にすることは低開発国の向上に貢献することであり、悪いことではないという考えを抱いていることである。
日本による朝鮮や台湾などの植民地支配については極悪非道の仕業として酷評されるが、欧米人からみれば遅れた人民を文明に導いているのだからという「善」の意識をもっている。この差異はどこからくるのだろうと不思議で仕方がなかった。
また、この見聞記の中でも民族問題が取り上げてあるが、単一民族で構成されていない国においては、複雑怪奇に民族問題が横たわっていることがわかる。ようやく、中国でもチベット族、ウイグル族が漢民族支配に暴動を起こしたことで中国が多民族国家であることが如実に理解されるようになったが、旧満洲やシベリアでも民族問題が存在していたことに満洲国は日本の傀儡政権と単純に決めつけられない理由がわかる。特に、ハインリッヒ・シュネーの母国ドイツの人々がドイツ系ロシア人としてシベリアや満洲に送られていたことに、満洲の緩衝地帯としての存在意義があったのではと思えてならない。
残念ながら、半世紀以上も前の戦争において、日本は植民地支配の罪を侵略の罪に置き換えられ、それに対しての検証はなおざりにされている。植民地支配国家が植民地支配の罪を糾弾するという、天に唾する戦争裁判が亡霊のごとく生きている限り、満洲国の問題は解明されることはないだろうと思った。
紙の本
おおくをまなべる,生の中立的な立場の記述
2008/11/06 23:11
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は「満州国」について,また満州における日本人の功罪について,公平に記述しようとしている.また満州だけでなく,当時の日本や中国,ソ連などの状況についても書かれている.
満州の状態に関しては,治安がわるく,調査団もおもうように調査ができないことが書かれている.匪賊によってしばしば鉄道が爆破されること,朝鮮人による日本の著名人などの暗殺が横行していること,とくにリットン調査団員の暗殺計画があったことや団員をまもるために多数の警官が動員されたことについても書かれている.
日本人やその行為に関しては,つぎのようなことが書かれている.日本人がチチハルの住民に対して新しい支配者としてふりまっていたこと.「満州にいる中国人は [中略] 「満州国」に対し,ほとんど例外なく敵対感情を抱いていた」こと.また「いまから百年前ならば,おそらく中国を征服して,ここに大帝国を建設することができたかもしれない」が,当時は「日本が独占的に中国を支配しようと試みても,単に中国民衆の抵抗に遭うばかりか,中国に利権をもつ各国から反対されるであろう」と書かれている.
日本人の大陸における農林業への貢献についても書かれている.たとえば,「朝鮮人は植林もせずにやみくもに森の木を伐った.[中略] 日本人は,日本の政権が禿山に植林した業績を誇っている」.
政治的にも経済的にも混乱する日本の様子もえがかれている.たとえば政治に関しては狂信的な国家主義者によって浜口首相,井上元蔵相,犬養首相らがつぎつぎに暗殺されたこと,国民世論もこうした穏健な政治家の退陣をせまっていることが書かれている.また,農業に関しては日本人が朝鮮の稲作を発展させたこととあわせて,はげしい朝鮮米と内地米の競争や世界恐慌などから農業危機がもたらされたことが書かれている.
ソ連の行為に関しても,シベリアの住民が悲惨な目にあい,数千人の餓死者がでていること,満州に逃げのびたひとびとを中国の将軍がソ連にひきわたし,ボルシェビキに射殺されたことなどが書かれている.
最近,日本では東京裁判以降にひろめられた歴史観とともに,それを否定し大東亜戦争に価値をみいだそうとする 2 つの派があらそっているが,両極端にはしっているようにみえる.この本のように,生の中立的な立場の記述からまなべることはすくなくないとおもう.