紙の本
感情の変化、葛藤、人々との繋がりを巧みに描く宮本輝の世界。
2022/06/10 10:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台は東京とハンガリー・ブダペスト。
外交官の試験に通ってロンドンで研修を受けている先輩からの結婚を申し込まれている純子。
アメリカ富豪の未亡人から養女にならないかと誘われているアーギ。
1985年10月17日。二人はそれぞれの決断を前に悩む。
そこに、彼女たちの「縁」ある人々が関わり、大きな影響を与えていく。しかし、決断するのは本人。
二人の感情の変化、葛藤、人々との繋がりを巧みに描く宮本輝の世界。
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
人生を変える決断をする、日本とハンガリーの女子大生を交互に描いています。色々な人に相談しても、最後に決めるのは自分自身。
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1985年10月17日、東京とブダペスト。同じ日の同じ時刻、人生の岐路に立つ二人の女子大生は、見えない絆で結ばれていた。若き外交官との結婚を承諾した沢木純子。夢のようなアメリカ移住を強く勧められるホルヴァート・アーギ。せまりくる決断の時、二人はどんな選択を…?家族、友情、そして愛。幸福を願って生きる女性の輝きをとらえた傑作長編小説。
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非常に読みやすかった。
同じ日の同じ時刻に人生の岐路に立つ二人の女子大生の物語。面識も無く住む国違うその二人について交互に話が進んでいく。沢木純子とホルヴァート・アーギは、それぞれどのような選択をするのか。
なんて言ったらいいんだろう・・・
いったい私たちがする選択に正しいものなんてあるのだろうか?これが正しいなんてものは無く、しかもどちらとも決めがたい選択だからこそ尚更、正しさなんて無いようなもの。主人公たちもどちらとも決めかねる選択で悩む。いったい何を基準に決めればいいのか・・・思わず正しい答えというものを他の人から貰いたくなる。自分で選ぶしかないことなのだけれど。
二人とも結論を出すが、それぞれの結末から受ける印象の差異が印象的と感じた。
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200603/設定が粋だと思う。おもしろいことを考える人だよなぁ。でも内容はそんなに好きじゃなかったかな。
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The sky is everywhere.
Evertythig is related in the world.
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12/16
うん、結構面白かったかな。
決断するまでを描くっていうのが新しい世界観って感じです。
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>26-27
エステルは帰国の直後、ある学生にレニングラードの生活を訊かれて、ただひとこと、「灰色の日々」とつぶやいたのを、アーギは人づてに耳にしていた。けれども、アーギは、その灰色の日々が、エステルに、愛する男の恋のための道化役を演じた哀しさを烈しく増幅させたのではないかとも考えてみたりした。はっきりと先祖の東洋の血がもたらしたエステルのきめ細かい肌を盗み見るアーギには、憎しみと憐れみの二つの心があり、そんな自分を正当化するために、「私は十二歳のときから灰色の日々を自分ひとりで生きてきたわ」と言い聞かせるのだった。
>47
だが、もっと好きでないのは、途中で自分の才能を捨てる人だ。それが自己弁護なのか、それともおぼろげに輪郭をもってきた真情なのか、はっきりしないまま、純子はそう胸の中でつぶやいた。
>48-49
一本の巨大なくすのきが、黄昏の空を二分化して、まったく異なった宇宙を眼前に拡げ、そのさかいめで腕白な孝介と自分とが一房の葡萄を食べていた。あのときの葡萄はいまも、とめどない夢の花火となっている。それはなぜだろう。くすのきの左側には、雲をしたがえた月。右側には雀の大群を呑み込む落日。純子はしばらくのあいだ、その光景の中を泳いでいた。太陽が沈めば月が昇るのは当然なのに、やはり純子には、それが一生に一度しか遭遇出来ない神秘な現象として、心に刻印されているのだった。
>99
アーギは「そのときはそうするしかなかったのだから仕方がない」という考え方が嫌いだったので、選択の誤りを、単に人間の頭脳の失敗として片付けられないのである。
>130
「猿が進化して人間になったなんて言うやつは馬鹿さ。鳥は飛びたいと念じたから羽根がはえたんじゃない。鳥は、初めから鳥だったんだ。」
>159
思い出は、過去よりも未来に数多く待ち受けている
>198
自分に決断を促した最大のものは、時間だと思った。
>214
「俺たちは自分の国について、がやがやと意見を述べる。へとへとになるまで議論をする。もう星の数ほど意見が出た。だけど何もしない。何も出来ない。どうしてだ」
>216
『ハンガリーの道端に作ったテントが、もしどんな雨や風にもこわれなかったら、それはアメリカの道端でも、フランスの道端でも、インドの道端でもこわれない』
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2人の同じような違うような立場の女性の悩みや考え方の変化を時間のタイムリミッドを交えながら描いた小説。
設定はおもしろいと思うが、ちょっとこじつけっぽくて内容自体は、うーん。という感じだった。
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幸福論。個人の幸福とはいかなものかについて書いた作品。題材はおもしろいがレトリックに凝りすぎていて文章にスピード感がないのが欠点。全体的にみると中の上くらいの作品。葡萄が食べたくなる。
郷愁にひたって暮らすことが幸せか、郷愁を捨てて前向きに生きることが幸せか。選んでみねばわかるまい。
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読み易く、いい作品です。
二人の女性が各々人生の転機を迎え、
迫る決断のときまでの迷いや決意を描いています。
二人の女性がどうするのか、
また、
自分が同じ立場ならばどうするか、
そう考えながら読み進めてみるのもいいかもしれません。
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時代設定が自分の生まれた年であったという理由で手にとった本作品。
違う国に生きる二人のヒロインが「選択を迫られる」という共通点のみで並行に描かれていく。
取捨選択の人生、打算で選ぶ選択肢も全て自分の個性によるもの、そこを肯定してくれるのは心強い。迷って自分で決めた選択は、誰がなんと言おうと正しい。
と信じる強さが必要。
以下、引用。
純子は、自分の道が見えたんだよ。外交官夫人なんて肩書きに目がくらんだんじゃない。心の奥の奥の、もっと奥にある目が、道を教えたんだ、純子にね。
(飛行機に乗るとき、うしろ髪引かれなかった?) 引かれたね。だけど乗った。乗らなきゃ、始まらねえからな。
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ふーむ。
実によみにくい 小説である。
二人の 揺れ動く心を持つ オンナ のストーリーが
パラレルにすすむが それが 全く別の世界のままである。
なぜ 日本とハンガリーを 舞台にしているのか
という意味は ほとんど質問しても意味がない。
宮本輝が そうしたかったから と言うべきかな。
ハンガリー 資源がない国。名字の順番が日本と同じ。
そういう意味では、共通性がある。
ハンガリーから見る 西側。その中心であるアメリカ。
日本,イギリス。ハンガリー、アメリカ。
対比されているようで,全くの羅列的な感じがある。
テーマはオンナの決断
それは,電話で やってくる 何らかの圧力。
それにどう答えるのか 揺れ動く。
ある意味では 日本人は ほとんど ハンガリーのことを
知らない。それが故に 引き込まれない何かが異質として
存在している。
純子は、マスカットと孝介にまつわる思い出がある。
その思い出を大切にしたいと思いながら、
しかし、揺れ動くのである。
どうもその揺れ動き方が、純真ではなく
計算されたオンナのずるさがあって
みょうに、嫌なオンナに見える。
多分,純子自身も 自分を嫌なオンナだと思っているのだろう。
恋するオトコと結婚するオトコは違うのだ。
そんな風にもうけとることができる。
その計算だかさに、辟易とする。
そして,深く考えるわけでなく セックスしたりする。
いやー。この手のオンナは嫌いだね。
村井が なぜ純子を好きなのか そのことも、
理屈では 表現できない つながりを もたせる。
純子は ただ 『はい。』と言えばいいのだ。
それで、丸くまとまるのだろうか。
『外交官夫人』って,そんなに格好いいものだろうか。
シンボライズされているはずなのに,それが成功していない。
モロッコ旅行から帰ってきたばかりの先輩の岡部晋太郎に、
偶然出会うことで、純子の中に変化が起こる。
その変化は 岡部にも大きな影響を与える。
人を好きになる ということは 言葉で説明できないものだ。
そして,説明できないと理解することで,何かが変化する。
ハンガリーの物語は ドナウの旅人にリンクする。
アーギは アメリカの富豪に養子になることを要望される。
アーギの女友達 アンドレアは自殺した。
そのアンドレアが 日記を書いていて,父親は共産党の幹部だった。
父親は なぜ アンドレアが 自殺したのか 知りたかった。
そして,その日記は アンドレアの作り話だった。
パラレルではなく ハンガリーだけで 一つの物語を
つくれないので、純子の物語は 小説の増量剤である。
それとも,アーギの物語は 小説のおやつである。
宮本輝は 小説作りの
テクニックにおぼれたのかもしれないね。
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国籍の違う、全く関わりのない二人の女性のシンデレラストーリーに焦点をあてた作品。
純子が抱き続けていた、マスカットを手にキラキラとしていた男を忘れられない、という気持ち、とても分かるなあ。過去にばかり目を向けて、現実や未来をなかなか受け入れることが出来ない女の性質。
選択の違いはあるかもしれないが、それぞれの幸福があるのは間違いないだろう。
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自分の将来を左右するような、降ってわいた幸運。
運命に身を任せ、それに飛び込むのか、それとも…?
人生の岐路で迷う二人の女性が、決断に至るまでの心の動きを細やかに描く。
彼女らの迷いはすごく分かる。
幸福度が大きく見える道ほど、
予期せぬ落とし穴があるんじゃないかと考えてしまうものだ。
どちらの道を選んでも、
最終的にあの選択は正しかったと思える生き方にすればいい。
人生は他でもなく自分で作るものだから。