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紙の本
中国経済の技術的側面
2012/01/11 03:23
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一章 生産移転
第二章 中国電気産業はなぜ発展する?
第三章 ベンチャー企業群
第四章 自動車産業の壁
第五章 機械,鉄鋼,化学産業の実力
第六章 労働力と政治的要因
第七章 日本企業の強さ
著者は,1935年(旧朝鮮)生まれ。東大(工)卒。日立造船,野村総研,東大先端科学技術研究センター(客員教授)を経て,出版当時は放送大学(教授)。『IT革命の虚妄』,『日本・中国・韓国産業技術比較』(大平正芳記念賞)など。二十一世紀に入って“いまさら・・・”と思うむきもあろうかと思うが,同著者の『虚妄』は,一読を薦める。
さて,本書は,目次を見ればわかるが,第一章が序章として内外交流状況を提起し,第二章から第六章にかけて中国国内要因を分析し,第七章で日本人研究者による日本人(とくに技術者や経営者)のための帰結をもって結んでいるという意味で,著作として体系を成している。寄せ集め論文集ではないということだ。不満としては,本書には図・表が欲しかったし,中国企業一覧表も欲しかった。
本書の趣旨は本書題名どおりで,中国経済の技術的側面に焦点をあてたもの。著者が理系出身なので,技術に関する評価は信頼できると思う。著者は意識などしていないだろうが,快著=薬師寺『テクノヘゲモニー』の現代中国分析版といえる。私としてはとても興味深く読めた。中国株に興味のない人,技術者でもなく,経営者でもない読者層,中国企業に興味のない読者層は,第一章と第七章を読めばいい。
本書を読んだからといって,日本の活路が見えるわけではない(本書巻末には“活路”一覧表がありはするが)。中国は人口大国として,優秀な技術系人材が溢れており,売り上げ貢献者には経営者が俸給を吊り上げている。修士新卒の給与は学士新卒の2倍であり,博士新卒は3倍らしい。全般に労働力は意欲的(貪欲)であり,超過勤務を厭わないらしい。本書刊行時点では,単純労働を宛がわれる女工諸氏も田舎の父親の年収をひと月で稼ぐというから,彼女たちの勤労意欲も高まるだろう。中国経済の労働市場の将来的問題は,現場での実働を軽蔑する価値観と(農業とか土木労働者なんかをバカにしてるってこと),これから先の賃金上昇による低賃金経済=世界の工場=輸出指導的経済としての立場からの転落が懸念される。
いやいや,そんな大国,行け行けゴーゴーの中国様のことより,わが国=日本の将来だ。保護者がわが子に人格を認めず(その証拠に,子供の意思を踏み潰して通塾させたり合格不能の学校を受験させたりしている),ペットとして可愛がるあまり(将来的社会人を育成する責務という意識が保護者にない),お客様意識しかない日本人が跳梁跋扈し(「権利」行使のためには「義務」が前提だという意識が希薄だ),体力がなく(国民皆兵制がいい),学力が落ち(べつにPISA調査の結果がと言っているのではない),無駄に体力仕事をバカにしている。驚くのは,進学校に入学させといて,一部の保護者は“宿題が多すぎる”と苦情を言ってるらしい。
バブル崩壊で外資と外資的文化が日本に流入してきたのではない。日本的経営は攻撃を受けたのではなく,内部自壊したのだ。その隙に入り込んで,内部化された外資文化が,いま楽天やファーストリテーリング(ユニクロ)に社内公用語を英語に換えさせているのだ。暗澹。
(1352字)