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商品説明
ここはどこ? 何のために? 誰によって? 荒野のただ中にある謎の「学校」に、犯人当ての実習で幽閉された6人の子供たちが立ち上がった。待ち受ける試練。驚愕の企み。そして1人の新入生が登場し…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
西沢 保彦
- 略歴
- 〈西沢保彦〉1960年高知県生まれ。米エカード大学創作法専修卒。高知大学助手などを経て、執筆活動に入る。95年「解体諸因」でデビュー。著書に「七回死んだ男」「幻惑密室」など。
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紙の本
このミステリ・マスターズのシリーズ、全ての鍵を握るのは、格調高いブックデザインでしょう。つくりで云えば、クレストブックと肩を並べ、美しさでは凌ぐといってもいい。そのデザインは京極夏彦、凄い
2003/09/06 20:49
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
さすがの京極夏彦のデザイン力も、今回はその威力を十二分に発揮できなかった、というのがカバー写真を見たときの私の第一印象。シンプルさが、却って足を引っ張ってしまったというのかしらん。ま、タイトル文字の配列の工夫も分かるんだけれど、ちょっとね。でも、小説は中味が命だから、はい。
冒頭にファシリティ〈学校〉見取り図があって、これを見た瞬間、これは本格推理小説だぞ、孤島ものの変形で、ガチガチの密室モノ、いよいよ島田荘司に挑戦か、と心が騒ぐ。で、その平面図の各室に描かれるのが、マモル、ケネス、ルゥ、ケイト、ステラ、ビル、ハワード、ミズ・コットン、パーキンス、シウォード博士。いやあ、完全に洋物じゃあありませんか、どうしようこの胸の高まり、というわけで、登場人物が全て出てきてしまった。
話は、僕、マモルの視点で描かれる。マモルがファシリティ学校にやってきた場面から始まる。彼が見たのは五匹の怪物。いや、今では、彼らが普通の子供たちであることはよくわかっている。ステラに“詩人”、“ちゅうりつ”、“けらい”、そして“妃殿下”。これじゃあ、却って分からないかもしれない。
ステラ・ナミコ・デルローズは11歳、フランスに両親がいる、日本語も達者な少女。“詩人”はケネス・ダフィー12歳。事情は知らないけれど、いつも車椅子を使っている。僕が来るまでは、ステラの第一の友だち。“ちゅうりつ”は、ハワード・ウィット、年齢は書いていないけれど12歳だろう。そして“妃殿下”は、ケイト・モズリィ・マックグロー、12歳で髪はプラチナブロンド。彼女に付き従うのが“けらい”のビル・ウィルバー10歳、僕たちの中の最年少で、いつもおどおどして見える。僕の名前は御子神衛、11歳、神戸に両親と暮らしている。ミズ・コットンは60歳か、70歳位の、僕たちの世話係兼腕の悪い料理人。デボラ・シウォード博士は“校長先生”、ミスタ・パーキンスは“寮長”。これが全て。
で、この物語はファシリティ〈学校〉に起きる様々な事件、寮室での盗難事件や、連続殺人事件、生徒の失踪などを扱うものだけれど、最大の謎は生徒たちが、なぜ自分がここにいるか、ということを独りも覚えていないということ。そして、彼らを襲う頭痛というか、奇妙な精神状態、閉じられた部屋という学校の謎みたいな部分で、やはりこれは読んでもらうしかない。ただ、インタビューに「自分としては、自分が書きたかったのはこれだという手応えを感じました」とこの作品について語る西澤の言葉があるので、そういう思いで読んでもらうしかない。
このシリーズ共通の作家論、今回は円堂都司昭というペンネーム見え見えの人の『疎外感と「アメリカ」』というタイトルの西澤保彦論、同じ円堂と西澤とのスペシャル・インタビュー、著作リストが付いていて、特に作家論に関しては、小説の面白さは伝わらないものの、西澤の軌跡が良く分かる力作(ちょっと、堅いかなあ)。これと、インタビューを読めば、森奈津子(済みません、ご本人のことは初めて知りました)さんと奈津子シリーズのことも含めて、西澤のことも、作品の変遷も理解できる。
で、この本は、読んだ人は当然、ある本のことを連想するはずで、これはシンクロニシティとしか言いようがないものだけれど、やっぱり出版社としてはタイミングを考えるべきだったのでは、とは思う。いやあ、ここまで書いただけでもハンソクすれすれ。というわけで、ともかく、伏線を読み直すだけでも、確実に再読はできる。でも、個人的には、やっぱりタカチのシリーズのほうが、私は好き、はい。