紙の本
夏といえば、チューブでしょ、いやこれは前に書いたか。小説のタイトルで言えば『夏への扉』か、やっぱりこれでしょ『八月の博物館』。カバーの清々しさもバッチシだし、ほらね蝉の鳴き声だって聞えてきそうだし
2003/08/06 21:00
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近、娘と博物館に行くことが多い。先日も、上野の科学博物館でフーコーの振り子を見ながら、この小説について二人で話していたら、昨年、遠足が雨でながれて、奥多摩行きが上野巡りに化けてしまったとき、娘の同級生が、この振り子に触れてしまい、パニックに陥ったと告白した。いやいや、今時の女子中学生は何をやるやら。
現在は作家であるトオルが、恐竜展のポスターに惹かれて入った博物館。入り口で動きつづけるフーコーの振り子を見たとき、彼が思い出したのは、20年前の夏休みの時に紛れ込んだ不思議な洋館のことだった。舞台は過去の、懐かしい少年の頃から、紀元前のエジプトのメンフィス、1859年のエジプトとパリ万博、そして現在と自在に移っていく。
昔、その私設博物館で出会った少女の美宇。トオルに声をかけてくる謎の英国人紳士、彼が飼う黒猫。トオルと同人誌を作る仲間の啓太、図書委員の鷲巣恵子。そして1859年、エジプトで発掘に汗を流すフランス人マリエット。紀元前523年のエジプトで聖牛アビスの殺害をはかるカンビュセス二世。当時の埃臭さ、渇いた空気、照りつける太陽、建造物の陰の涼しさ、蝋燭の黄色い灯り。
少年の冒険に、現在の作家の苦悩が交錯する。そこからは、『パラサイト・イヴ』で余りにも派手なデビューを飾った著者の等身大の悩みが伝わって来る。才能のある作家なら当然なのだろうが、瀬名が、こんなにファンタジックな物語を書くとは思っていなかった。この作品があったから、ラルフ・イーザウ『盗まれた記憶の博物館』に、さほど感激しなかったのかもしれない。
装画の影山徹は、池澤夏樹『マシアス・ギリの失脚』や、最近の国書刊行会の探偵小説全集、原書房のミステリー・リーグのカバー画を手がけている。キリコの絵を思わせる、ちょっとシュールで単純な色使いが見せる独特の味。とくに今回の、蝉時雨が聞こえてくるような遠い夏の日を思わせるカバーは秀逸。少し緑色が入った深みのある水色は、タイトルにぴったり。今のじきにあまりにぴったりなタイトルは、紹介する方も照れくさくなるけれど、海外に輸出されても、評判になりそうな本だ。
紙の本
挑戦は買いたいが
2008/02/17 14:28
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
小学校最後の夏休み、奇妙な博物館に迷い込んだ少年。興味のおもむくままに、古代エジプトの謎を巡る冒険に飛び込んで行く。その博物館は、狭いはずの場所はどこまでも広く展示室は限り無く、さらに展示されている物たちのいた時代を映し出してしまう、不思議な力の働く場所だった。少年の夏は、世界が広がるのと同時に、何かを失っていくことに気付く夏だ。だけど前に進むことしかできない。博物館はそんな少年を受け入れ、支えてくれたのだろうか。
と、そういう話になっていれば、かなり面白い作品になっていたと思う。この主ストーリーに被せて、物語の作者が登場し、さらにその作者、といった幾重ものメタフィクション構造を持ち込み、冒険の結末もその構造に依存するという、意欲的な試みをしているが、成功しているとは思えない。むしろつまらなくしている。「作者」の独白は素朴で独りよがりにすぎて、共感するよりは突き放してしか見られない。少年の冒険も、緻密と言うよりは、どうでもいいところで長々とした説明が続いて飽きる。あと、大学教授の息子で、テストはいつも「たまたま」満点の少年というのはこういうものなのかもしれないが、僕が小学生の頃はもっとがさつでクルクルパーだったので、人物の行動もよく理解できなかった。
たぶんこの四分の一ぐらいの長さにして、挿し絵をたくさん付けた絵本仕立てにすれば、博物館の楽しさを伝える、それこそ科学方面への関心をかき立てる読み物になったろうと思う。しかし持ち込まれたいろいろな道具立てはその目的を弱めてしまっているし、その裏にある「作者」の意図も魅力不足だった。題材を練りきれないのはベストセラー作家の悩みかもしれないが。あるいは細かい情景描写に力点を置くなら、アニメ化は面白いかもしれない(既にされてたらすいません)。あるいはそれが狙いだったか。
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これもまた読んでる途中。
この人の代表作と言ったら、そりゃもう「パラサイト・イヴ」ですが
さすが理系出身作家とも言うべき、隙のない理論です。
が。
正直、「現在の自分(著者)」と「物語の少年」「物語の中の更に異空間に存在する考古学者」
彼らの視点のストーリー中の移行の仕方に、いまひとつ自然についていけない感が、、、。
文末の表現が「〜だった。」ばかり目立つのも、個人的にはあまり好きではないかな。
小学生の作文じゃないんだからねぇ。(暴言)
ちょっと説明的すぎるし。
とはいえ、緻密な調査の元に描かれる美術品や建築物の描写は素晴らしいです。
想像だけで書いてないなぁ、と素直に実感。
現在1/3程度読んだところだけど、本格的なストーリーの流れにはまだ乗っていない様子。
読破するのはちょっと、、、気合と根気が必要かもしれませぬ。
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この作品より、瀬名氏の力が減少し始めた気がする…
博物館についての記述には感銘を受けるのだけど、SFとしての引き込みが弱くてイマイチだった。
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わくわくしながら頁をめくる。こんな気持ちがとても懐かしくて心地よい。
小学・中学時代、図書室へ通ったころを思い出す。
作品中にある「めもあある美術館」という童話は、実在する作品らしい。
なんでも小学校の教科書に掲載されていたとか。
これで勉強した人がちょっとうらやましい。(2001.10.25)
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「ミュージアムのミュージアム」という奇妙な建物の扉を開けたとき、少年の冒険の旅は始まった…と書くと、なんだかジュブナイルくさいな。
作者はパラサイトイブで一斉を風靡した瀬名秀明氏。そちらも読んでいるけれど、話としては年月を経て読みやすくなってきたのを加点に、こちらに軍配を上げる。
とはいえ、なんだか微妙に読みづらい文体は健在。
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本にはまるきっかけをくれた本。
不思議な空間へ連れてってくれます。
(表紙とあらすじに惚れて衝動買いしましたv)
ちょうど買ったのは夏休みでした・・(遠い目)
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終業式の帰りにトオルが足を踏み入れたのは古ぼけた洋館。そこで不思議な少女・美宇と黒猫に出会う。「ミュージアムのミュージアム」というその奇妙な洋館から、トオルは時空を超え、「物語」の謎をひもとく壮大な冒険へと走り出した──。小説の意味を問い続ける作家、小学校最後の夏休みを駆け抜ける少年、エジプトに魅せられた十九世紀の考古学者。三つの物語が出口を求め、かつて誰も経験したことのない感動のエンディングへと至る! エンタテインメントの常識を覆した話題作。
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読むのにとても時間が掛かった。期待していたものが大きかったのか、読み終わった後も特に感想が無かった。このタイプの作品は何度か読んだことがあるかな。
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たぶん、この話を普通に書いてあったら、普通に「いい話でしたー」と納得できたのかもしれない。でもきっとその「普通」を壊そうとしてこうなったんだろうなってのも、わかるんだ。ただ、ちょっとウザ過ぎた。
(「私」部分が)ドラマチック過ぎて苦笑って感じです。■ブログに長い感想文があります。
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『パラサイト・イヴ』以外では初の瀬名秀明作品。作家というのはこんなにも難儀な仕事なんだろうか…。作家自身を鼓舞するような物語だなぁと思っていたら、有栖川有栖の解説にまさにそう書いてあった。
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「物語」の作為めいた始まりと展開に疑問を覚える作家には、昔、小学校最後の夏休みが始まる日、忘れられない体験があった・・・
夢のような場所ですな。
扉を開けるとそこはルーブル、オルセー、メトロポリタン。または昔の貴族の蒐集室だったり、遺跡発掘中の学者の研究室だったり。
上野の国立科学博物館の事も冒頭で少し出てくるので、かはく好きにはお勧め。
うん。
ただ、そういう仕掛けの話だってのはわかってるんだけど、話の中に作者の気配がするのはちょっと・・・
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この本を初めて読んだのは高校生の頃。
高校の図書館で見かけて、表紙、名前を見ただけで読みたくなってかりました。
文系で、しかも歴史が好きな自分にとってはかなり好きな本です。
「博物館の博物館」を巡る物語がメインです。
こんな博物館あったら行ってみたい。
小学生に戻りたいと常に思っている自分にとって、とてもわくわくしながら読める本です。
「夕焼けだった。夏休みが始まった頃は夕焼けなんてなかったような気がする。空は青から群青色に変わって、そのまま夜に移っていったような気がする。それなのに空はいま、うっすらと日に焼けている。もう秋の空が近づいてきていた。」という文章が強く心に残り、毎年この時期思い出します。
歴史が好きだったり、子供に戻りたいと思ってる人には、とても楽しめる本だと思います。
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主人公の少年が夏休みの始めに踏み入れたミュージアムを舞台に、ドラえもんの大長編を思わせる、ちょっと不思議な冒険物語です。(F氏に捧げる物語ですので)
(ご本人の意思に関わらず)理系作家と銘打たれた作家さんなので敬遠してしまいそうですが、膨大な情報量にも関わらず楽しく読めて、読後も爽やかな印象です。
これに限らず、夏を舞台にした作品はどうしてこんなに魅力的なんだろうなあ。
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小学校の終業式の帰り道、小さな冒険の末、足を踏み入れた洋館。
少女・美宇と黒猫と出会ったその場所は「ミュージアムのミュージアム」という不思議な空間だった。
少女に導かれるまま、少年・享(とおる)は「物語」の謎をひもとく壮大な冒険へと走り出した。
小説の意味を問い続ける作家・小学校最後の夏休みを駆け抜ける少年・エジプトに魅せられた19世紀の考古学者。
三つの物語が出口を求め、読者を巻き込んだスペクタクルを放ちだす。
「誰も観た事のの無い「物語」の世界、堪能してください。」
今回の紹介はこの一言に尽きます。
余分な言葉は必要ありません。
全ては「物語」の中にあります。
あ、もう一言だけ( ̄∀ ̄*)
「パラサイト・イブなんかよりよっぽどこっちの映画が観たいですw」