図説・中国文化百華 ００４ イネが語る日本と中国

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投稿者：大阪の北国ファン　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

現代のイネ博士であり、また食物を通しての文化論の第一人者である佐藤先生の手になるイネに関する百科事典のような書である。図版が多く理解を助けてくれる。その分文章のページは減っているのだが、事典のように内容は濃い。まずジャポニカとインディカの違いが学術的に語られる。ここではわれわれが普段何となく思っている、形が丸いとか細長い、粘りが強いとかパサつく、香りが強い、などで分類しているのは俗説に過ぎず、誤りであることを知る。細長くてパサつくのはインディカ米であり、東南アジア米であるというのは誤りであった。そして中国の太古の遺跡からわかるイネの歴史、長江文明と黄河文明、陸稲と熱帯地方の浮き稲、日本に到来したイネの歴史など、学術的に記述される。植物学的記述が多いため一般人が入門編・初級編として読むにはレベルが高すぎる。内容は百科事典そのものである。
遺伝子やプラントオパールなど生物学的分析に基づく歴史の科学的解析からそれがもたらした食文化に関する研究成果、果ては東南アジアの占城米の説明から日本人の来歴そのものまで予感させる記述に溢れている。佐藤先生らしい広く大きな文化論であった。イネの宝石箱を開いたかのように楽しめる一冊であった。