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紙の本
「戦争と平和」や「アンナ・カレーニナ」を通り抜け、「イワンのばか」や「人は何で生きるか」に到達したトルストイの心情の結晶。
2006/04/30 22:55
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
古今東西の著作や箴言集を引用しながら一年の日付ごとに数行の言葉が並べられている、トルストイ晩年の味わい深い名言集。一週間ごとに短い読み物があり、一年間、飽きずに読み続けられるような工夫がされています。厚めの文庫で3巻。著者が6年の歳月を書け、170名もの先人の言葉が引用されているとのこと。上巻は1月から5月までです。
かたわらに置き、トルストイのたどり着いたところ、言い残したかったことに耳をすませて少しずつ、心を巡らせながら読みたい本です。
「信条などというものは、人々の意見や知識の絶えざる変化につれて変化する。それは時間と結びついていて、時間とともに変わるのだ。しかし愛は時間を越える。愛は常在不変である。」(1月8日)
「記憶によってでなく、自らの思索によって得られたもののみが、真の知識である。」(1月9日)
「われわれは過去の聖賢から伝わった教えを大いに利用していいけれども、ただ自分の理性によってその教えを検討し、取るべきものは取り、棄つべきものは棄てなければならない。
」(1月12日)
このようなトルストイ自身の言葉と共に、孔子や仏陀の言葉、タルムードまで幅広く引用されています。引用元はあまりきっちり書かれてはいません。でも、それはそれで、トルストイの精神を潜って綴りなおされた言葉として読めばいいのでしょう。宗教的な色合いはかなり濃いのですが、仏教やイスラム教の言葉などからも引用があるところには、どのような人間にも普遍的な心情を探ろうとする著者の深い視線を感じます。
古今東西の名言を引用しながら並べていく方式はモンテーニュの「エセー」にも通じるものがありまが、こちらの方が宗教的で、情感的であり、アウレリウスの「自省録」に近い感じがあります。「戦争と平和」や「アンナ・カレーニナ」を通り抜け、「イワンのばか」や「人は何で生きるか」に到達したトルストイの心情の結晶のようです。
原題は直訳すれば「読書の輪」または「認識の輪」。一年がめぐるように、読み進みまたはじめに戻って読むものともとれますし、想いがめぐり続けることを言い表わしているともとれるかもしれません。
モンテーニュやアウレリウスの名前を挙げてしまいましたが、このような書物を著した人物は他にも存在します。人生をいくらか通り抜けた後、掴んだ想いを書き綴るのは古今東西どこの人にもおこる思いなのでしょうか。さて、現代には、未来に残る「現代の」眼でのアンソロジーはあるでしょうか?