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紙の本
星の王子さまが、いろんな星を訪れるでしょ。あんな感じ。
2006/08/22 22:02
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:和田浦海岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
狐=山村修とわからなければ、私はこの本を読まなかったと思います。そう、判ってから、あらためて読みました。
日刊ゲンダイでの、狐の書評は1981年2月から2003年7月末までの22年半という期間つづけられておりました。
この単行本が出版されたのが2000年7月となっております。
たとえば「そのころは日常的にひどい心身のありさまだった。いつも度外れに早い時間に目を覚ました。寝台の上で胸が高鳴り、息が詰まり、手足がしびれ、のぼせて汗をかいた。雑木林を散歩した日も、ほんのわずかしか眠られぬままに目覚めていた」(文庫本のP133)
つまり、仕事をもちながら、日刊ゲンダイに週一回の書評を書いて19年ほどたった頃の山村さんの体調はこんなだったのです。
そこで山村さんはご自身の体調にむかっての探索を始めるというお話がこの本の流れです。
どうにかしてこの体調を晴らそうとしてゆく手探りがたどられております。
たとえば第3章「気晴らしの演習」にヨーグルトを取り上げた箇所があります。
「気晴らしにもサプリメントがあるとよい。サプリメント、すなわち補助食品である。・・・かつて競馬好きの友人が『情報信ずべし、信ずべからず』という名言を教えてくれた。馬券を買うにあたって目に入り耳に入る情報のあれこれは、とりあえず信じなくてはいけないし、同時にまた信じてもいけないという。なかなかいい言葉だと思う。競馬という遊びの微妙なところを突いている。
おそらく『健康』情報などについても、この名文句が生かせるのではないか」(p117)
後半のこの言葉あたりから、一挙に動きがでてきます。
それは、いままでは本の書評をしていればよかったのが、
いきなり小説を書いてみなさいといわれたような動きとなって現われます。いままでの人ごとのような遠回りが、いきなりつながりを持って一箇所に集中してながれこんでゆくようなのです。それがこの本の魅力にもなる箇所となっておりまして。それは読んでのお楽しみ。おそらく書評家がはじめて小説というものを書いたとしたら、こんな風になるのじゃないかと思う。そんな新鮮さがあります。
むろん私は、これが狐=山村修さんだから読んだのであって。
その読後感はというと、私にはたとえばサン・ティグジュぺリの「星の王子さま」のような、さらりとした読後感を味わえるのでした。おいおい「星の王子さま」が小説かい? といわれると私にはそれ以上ことばがないのでした。