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商品説明
米国国立公文書館所蔵の新資料を中心に、日米のおびただしい一次資料の収集と聞き取り調査を踏まえ、日本国憲法制定史の系譜を丹念に追う。第1部では、第2次世界大戦の終結までに日本国憲法の制定を条件づけたものを探る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
原 秀成
- 略歴
- 〈原秀成〉図書館情報大学(現・筑波大学)で情報法や知的財産権論を講じるかたわら、米国イエール大学客員研究員、国立国会図書館委嘱研究員などを歴任。著書に「電子時代の出版物納入制度」など。
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紙の本
憲法を論じる出発点として
2005/06/16 16:23
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栄助 - この投稿者のレビュー一覧を見る
フェアな論争のために、どの立場の人にも薦めたい。著者は、憲法に対して理念を持っているが、研究自体はアメリカの公文書館に眠る資料をもとに、終始客観的記述になっている。
本書に書かれたことを、「基本的に、日本人の考えに基盤をもって、憲法がつくられた」と解釈するのか、「アメリカの押しつけである」と結論付けるのか。それは、さらに広い事実と、解釈する人の理念に依拠することになるだろう」。
本書では、日本国憲法制定に直接的な影響をもった資料の系譜を追う以外の、日本及びアメリカと世界で展開された人権・平和の思想については、言及されていない。そこまで論及していたら、一つの研究として、まとめることは不可能だろう。
だから、たとえば、明治の自由民権運動からの流れの記述は、軽いものになっているし、また、田中正造が日露戦争に反対し、戦力の放棄まで主張していたことなどは、直接的系譜でない以上は、書かれていない。そういう意味において、本書を出発点にして、憲法につながる人権・平和の思想史を広げれば、よりよく理解を進めることができるだろう。
本書から読み取れるなかで、重要だと思うものを紹介する。
一つには、日本国内に吉野作造、鈴木安蔵などの民主主義の思想が脈々と途切れることなく続いており、日本国憲法の源流を形づくっている、ということだ。
二つには、アメリカのなかでも、様々な思惑がぶつかりあったが、日本国内の動向・世論に気を配りながら、政策決定をせざるを得なかった。その社会に根拠を持たず、大義に反する「押しつけ」は、結局失敗せざるを得ないからだろう。当然、米側の政策も、日本で形成された思想に依拠したものになる。
三つには、日本国憲法が、国連憲章を中心とする戦後国際秩序と、共通した理念を持っているということだ。日本国憲法の制定過程は、国連憲章の制定過程と緊密に関わっている。実際に両方を読み比べれば、すぐに理解できることでもある。
そこで問題になるのが、「国際貢献」のため、常任安保理事国入りするために憲法を変えるという理屈だ。国連憲章と響き合う憲法を変えて、貢献になるのか? 常任安保理事国になるために、憲章の精神に精通する憲法を変える矛盾は何なのか? そこに日本政府の本当の「本音」が見え隠れする。「アメリカのため」ではないのか?
研究から導く著者の主張には、すべてに単純に賛成するものではないが、憲法を論じていくための基礎研究として、本書は有効だろう。ただし、かなり値が張るため、全巻そろえるか、悩みどころだ。