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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2004.4
- 出版社: 早川書房
- レーベル: ハヤカワ・ミステリワールド
- サイズ:20cm/412p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-15-208555-X
紙の本
駆けてきた少女 (ハヤカワ・ミステリワールド ススキノ探偵シリーズ)
著者 東 直己 (著)
「このオヤジ、殺して」 少女が叫ぶと同時に若い男は探偵の腹にナイフを突き立てた。退院後、犯人を追い求める「俺」は、札幌の闇に渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれてしまう…。書き下...
駆けてきた少女 (ハヤカワ・ミステリワールド ススキノ探偵シリーズ)
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商品説明
「このオヤジ、殺して」 少女が叫ぶと同時に若い男は探偵の腹にナイフを突き立てた。退院後、犯人を追い求める「俺」は、札幌の闇に渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれてしまう…。書き下し長篇。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
東 直己
- 略歴
- 〈東直己〉1956年札幌生まれ。北海道大学文学部哲学科中退。92年「探偵はバーにいる」で作家デビュー。2001年「残光」で第54回日本推理作家協会賞の「長編および短編集部門」賞を受賞。
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紙の本
あんまりにも東が北海道警察の不祥事を書き立てるので、実際に内部告発があっても、あ、そうか、てな感じがしちゃうんだよね。無論、悪いのは道警であり、無感動な私ではあるんだけど
2004/06/13 20:35
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
早川ミステリワールドの一冊。紫を上手に使った鮮やかなカバーイラストは、ご存知、景山徹(あれ、たしか影山徹じゃなかったっけか?)。で、カバーの真ん中にすっくと立つミニの制服を着た、スレンダーな女子高生が何とも格好いい。カバーデザインはハヤカワ・デザイン。フォーマットデザインは多田進。
「ピッチ、このオヤジ、殺して」少女が叫ぶと、若い男は探偵の腹にナイフを突き立てた。入院した〈俺〉を見舞いにきた自称「霊能力者」のオバチャンの依頼で女子高生の家庭調査の依頼を受けることに。軽い気持ちで引き受けた調査と、自分を刺した犯人捜査とが交錯した時、〈俺〉は札幌の闇に渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていることに気付くのだった……〈ススキノ探偵シリーズ〉、待望の長編書下ろし!というのが本の後に書かれた紹介文。
主人公は、紹介にもあるようにススキノの便利屋といわれる〈俺〉である。巻頭に登場人物一覧があるけれど、この作品に関して言えば、筋を楽しむというよりは、登場人物を楽しむという感が強い。で、ストーリーの展開というよりは、登場頻度の高い人物を中心に紹介してしまえば、やはりカバーの中心立つ少女ということになる。
で、実はこの少女こそ先に書かれている、〈俺〉が家庭調査の依頼を受けたという対象の柏木香織ということになるはずなのだけれど、話の流れからは、彼女の友人というか同じ高校の勝呂麗奈と考えたほうが正しい。で、その麗奈と同居することになるのがサンドラこと森野英正、元森野組組長である。で、彼がなぜサンドラなどと名乗るかといえば、やっぱり読んでもらうしかない。
それから、自称「霊能力者」のオバチャンこと濱谷がいる。〈濱谷人生研究所〉の主催者というか経営者だが、人物紹介にはアパートの雇われ管理人、とそっけない。それから、ミニFM局のDJ高田がいる。空手の名手で、何度か〈俺〉の危機を救うのだが、全体としては飲み友達という印象が強い。
で、相変わらずの北海道道警、マスコミ、ヤクザ、政治家たちの腐敗告発ぶりは、ちょうど広瀬隆の陰謀史観みたいなもので、いくら言っていることが現在内部告発で正しかったと証明されようと、告発キャンペーンが逆に作用して、所詮、小説の出来事でしょ、風に受け取られてしまうのは、東、広瀬両氏にとっても本意ではないだろう。しかし、結果としては、日本人の国民性もあるのだろうけれど、彼らの意図とは全く別に、日本の政治や経済の向きを変えることには全く役立っていない。
そして、〈俺〉もそれを納得しているかのように、即断即決を避けていく。しかし、今回の本に関して言えば、東はもう告発に見切りを付けたのか、どちらかというとユーモアの世界に逃げ込んだ感じである。だから、〈俺〉の遠回り、問題先送りによる手遅れが、あまり気にならない。彼を刺した若者が死んでいっても、自業自得といった感じで、イライラしないのである。
そして、なんだか勝呂麗奈って可愛いなあ、うちの娘も外から見ると、きっと同じように愛らしいんだろうなあ、などと思い、もしかして〈俺〉とどうにかなっちゃうなんてことはないよね、お母さん許しませんからね、などとスラスラ読んでしまうのである。この心地よさは、悲劇がなぜか拡大していかないという今回の設定にあるのだろう。
感動とか、勇気とか、そういったものとは全く無縁の、むしろ最近の女子高校生ってやるじゃん、と思わせるだけの軽いノリの話ではあるけれど、テンポがよくて、ソフトで、たまにはこんなのもアリかな、と思う、そういう、時間つぶしには格好の本なのだ。