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紙の本
装幀が南伸坊、版元が筑摩書房でないが、とても不思議。
2004/10/24 10:48
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投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
でも、同時代人であることの楽しさが満喫できる一冊。
筑摩書房の名物編集者・松田哲夫の自叙伝なのだが、ちょっとマニアックなコレクター気質だった少年が、「カムイ伝」に惹かれて「ガロ」編集部に出入りするようになり、これまた名物編集者の長井氏の知見をえるようになり、手伝いのようなことをはじめる。そこでの経験が後の編集者としてのキャリアにプラスになるのはもちろんだが、この時期に、水木しげる、つげ義春、呉知英、滝田ゆう、永島慎次、林静一、佐々木マキなどと知り合う。今考えるとそうそうたるメンバーといっていいかと思いますが、後の「都立大学新聞」の編集に関わっていたときも、赤瀬川準に原稿依頼にいったのがきっかけになって、かなり親しくなる。赤瀬川と松田の関係は以後も続き、マッチ箱を競うように集めたり、宮武外骨のことで意気投合したり、当時の定番、デモに参加して留置場に入ったりするうちに、マンガの出版を考えていたが、当時は具体的なノウハウを持たなかった筑摩書房の嘱託社員、編集部長、専務取締役、ついには兼業でパブリッシングリンク社社長にまで−−って具合に結構トントン拍子に出世していくあたりは、なんか自叙伝というよりは「太閤記」とか「無責任男」ノリのフィクションみたいな感じなんだけど、そういう出世物語ほどあざとい印象を受けないのは、主人公である松田氏が、失敗や苦難なども含めて、その時々の状況を「編集者として」楽しんでいるのが、文面から読み取れるから。
個人的に面白いと思ったのは、後半三部の一くらいで、何故かというと、「文学の森」とか「ちくま文庫創刊」とか「頓知の創刊と廃刊」とか、この辺のあたりの変化は、書店越しにリアルタイムで知っているから。年代的に、それ以前の項はいくら有名人の名前が奔出しても、どうしても「知識として知っている」という感じで、書かれた事柄に関して些か距離感を感じるのに比して、後年に行くに従って、なんか、既知の事柄の裏事情を今になって知る、みたいな感じになる。
「出版事業」とか「編集」に興味のある方なら読んでおいて損にはならない一冊だと思います。
酩酊亭亭主