紙の本
ナイフを持ってからでもいい。
2005/02/16 07:40
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投稿者:Straight No Chaser - この投稿者のレビュー一覧を見る
高橋源一郎は『一億三千万人の小説教室』のなかで、「太宰治の作品は、日本語で書かれた小説の中でもっともまねされてきたものです。……太宰自身が、さまざまなものからまねして成功していることを考えあわせ、積極的に利用されることは、太宰にとっても本懐ではないでしょうか?」と書き、自ら「駆込み訴え」や「女生徒」をまねて書いてみた経験について、「とても気分がよかったことを覚えています。なんというか、別人格になった気分だったのです」と書いている。
これって、ヤクザ映画を観終わって映画館を出てから我知らず肩で風切って歩いたりする、あの感覚に近いのではないかな。菅原文太とか高倉健とか、松方弘樹とか。
>(本書所収「評伝 太宰治:ぼくらと等身大の文豪」島内景二)
文豪ナビ・シリーズで取り上げられる作家は七人。七人を生年の順番に並べると、夏目漱石(1867-1916)、谷崎潤一郎(1886-1965)、芥川龍之介(1892-1927)、川端康成(1899-1972)、山本周五郎(1903-1967)、太宰治(1909-1948)、三島由紀夫(1925-1970)。「七人の侍」である……勘兵衛(志村喬)、七郎次(加東大介)、五郎兵衛(稲葉義男)、平八(千秋実)、久蔵(宮口精二)、勝四郎(木村功)、菊千代(三船敏郎)。
で、誰が誰なのかと考えるに……太宰治はあんがい、菊千代=三船敏郎なのではないか。だって太宰治は「酒を愛した万葉歌人にして太宰帥(だざいのそつ)の大伴旅人」にあやかって太宰をペンネームにした「酔いどれ天使」津島修治であるのだから、さ。
なにはともあれ、文豪ナビ・シリーズのなかでどれか一冊買ってみるなら太宰治だろう。太宰治にはこういう近づき方があってもいい。多彩な距離感を遊ぶ、太宰を読むときの基本的なスタンスというのはたぶんそんなところにあるから、この本には気恥ずかしくなる記述(例「自殺を考えたこと、ありますか。自分がちっぽけな人間に思えたこと、ないですか。人生は思いどおりになりっこない、と思っていませんか。そんなあなたに読んでほしい。『晩年』」)が少なからず炸裂しているけれど、へんに深刻ぶっていないという意味で、そのスタンスは間違ってないと思う。
ここで太宰を読んだことのない人のために、彼の名言を集めた『さよならを言うまえに』(河出文庫)から、すてきなフレーズを
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などなどなどなど……なにか、ダザイはあらゆる人間的な悩みをすべてもう悩んでくれてしまっているかのようだ。「さよならだけが人生」(井伏鱒二)かもしれないけれど、あまり深刻ぶらずに人間さまのおばかなところを笑うということについてさらりと教えてくれる。
そんなわけで『文豪ナビ 太宰治』をばらばらと……マジメに読もうとすると、なにやら、腸が煮えくり返りそうな本ですけど。
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太宰入門にもってこいですね!!掛け値なしにいいです。
文学作品って様々あって、タイトルは聞いたことあるけど・・・っていう人、たくさんいると思います。
文学作品を読みたいけど、何を読んだらいいかわからず暗中模索してる人にぴったり!!きっと楽しく読める作品に出会えるはず♪
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くそう、「ナイフを持つまえにダザイを読め!」だなんて、キャッチコピーが格好いいじゃないか。
重松清の言は中々納得でした。
いいよ、オイラ勘違い野郎で。一生治らないはしかでいいよ。
あぁ、なんでグッド・バイで死んじゃったんやろう。
「あんなん書いといて、ほんまは大して死ぬ気なかったんやろ?
なんかちょっと嫌なことあって、みんなに大事にされたくて、自殺未遂しようとしたらうっかり死んじゃったんやろ?」
そう思うのに、心中相手と体をロープで縛ってたとか言うし。
もー、謎な男だよあんたは!
08.11.07
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これタイトルのつけ方上手いなぁと思った。
「ナイフを持つまえにダザイを読め!!」だって。
木原武一、齋藤孝、重松清、田口ランディ、島内景二
による太宰治のあれこれ。
最後の島内景二さんの評伝太宰治が断トツによかった。
あれを最後に持ってくるのはいたし方ないことだと思う。
彼の人生を「起承転結」ではなく「転転転転」もしくは「破破破」と
表したり、
「ウルシの木の傷口から樹液がしたたるように、太宰の魂の傷口から
宝物のような「名作」があふれ出てくる」
と言ったりするのはなんかすごいよかった。
ちなみにサブタイトルは重松清の文章より引用したもの。
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書店に行って、あまりに欲しい本がないので買ってしまった本。
太宰治は二十歳前後に筑摩書房の全集で読み、「書簡集」や太宰治の知人・評論家の関連本まで読んだ。
しかし、ページをめくると太宰の「毒素」がカビ・ホコリのように部屋に「散乱・充満」し、この本はダンボール箱の中に‥‥
「美しいものには、毒がある」
太宰治は、自己責任で読むべし。
数十年後、どう思うかが問題。
この書店に行ったとき、山崎ナオコーラさんの「人のセックスを笑うな」をペラペラめくったが。
だめですね、年代的に‥‥
絲山秋子さんが、限界かも‥‥
しかし小説は、これでいい。
大体、俺は「未来に希望」を持たないので「回顧趣味」が高すぎる。
太宰治は、思い出すのも怖くなった。
俺は太宰治を読むと、ナイフが自分(読者)のクビに当たってしまうのを再認識した。
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ダザイへの気持ちを書いた重松清のエッセイ「ダザイくんの手招き」が熱い。本のタイトルにもなった文章がいい。中学の教科書にこのエッセイは載せるべきだと思う。
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太宰作品は昔から読んでいましたが、改めてどういう順で読んだらいいのか知りたくて購入しました。『ヴィヨンの妻』が最初に来るとは思いませんでした。太宰作品に共感する人は多いと思います。主人公があそこまで堕ちてしまう作品は、太宰ならではでしょう。自身の経験を書いているものも多数あります。この本を読み終わったら、太宰作品の新たな魅力、まだ読んでいない作品へ興味を持つ事は間違いありません。
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わかりやすい評伝・名作の要約・音読したい名場面・エッセイなど、
太宰の魅力が発見できる画期的な本といえます。
太宰なんて暗くて読めないという人にとっても、
なるほどとうなずける内容です。
その恥の多い生涯は、四度の自殺未遂に象徴されるように、
道化と愚直を演じる日々でした。
しかし、そこに自分を見出しほっととする瞬間があります。
太宰文学を概観するにはよくできた本だと思います。
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・7/23 過去に夏目漱石、芥川龍之介、三島由紀夫と読んできた久し振りの文豪ナビは太宰治である.やはり暗い.ただ走れメロスや人間失格なんかは読んだことがあったっけと思い返していた.そういえばちゃんとは読んでないかも.
・7/26 読了.そんなに衝撃的なら人間失格は読もう.何故か読んでない「きりぎりす」はBookOffで随分前に買って本棚に並んでいる.「斜陽」の置いてあるがこれはかない前に読んだと思う.先に「きりぎりす」でも読んでみるか.
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太宰文学のガイド本である。太宰は「走れメロス」だけではない。より心に響く小説がいくつもある。本書の中に収録されている、重松清の太宰治についてのエッセイ「ダザイくんの手招き」を読むと、太宰をもっと読みたくなるだろう。太宰治は、一度熱中した後には、いつのまにか忘れるという「はしか文学」だと言われているが、そんなことはない。憂鬱になったときや、一人ぼっちになったとき、そして死にたいと思ったときに読み返すからこそ、本の価値があるわけだと思う。太宰の小説を1冊も売らないのは、そのためなのだ。
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人間失格を読んだ後に、太宰自身に興味を持って手に取った。これ一冊で有名どころをちらっと立ち読みした感覚になるので、これからの指南書として、太宰初心者にお勧め。著者の主観が結構入っていて、知り合いのおっさんに太宰の良さを語られている気分になる。
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太宰治のこの小説はこのような話だよ、と簡単に説明してくれています。
同時に太宰の評伝も書いてあり、どのような人生を歩んだかも説明してあります。
どうやら文脈から高校生向けに書いてあるように感じますが、
僕みたいに「人間失格」しか知らない、けど太宰治について知りたい!
と思ってる人なら楽しく読めると思います。
読書のきっかけにするためには良い本だと思います。
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「太宰ってどう?」と友達に聞かれたらこの本を一読することを勧める。そのあと実際に読まないと話にならんが。
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何枚か写真が載ってましたが、同じ顔をしていますね。人間失格などからイメージする道化のイメージを太宰さん本人から受け取れない。なんかキザったらしい。
太宰は誰にでもなれる。だから色々な人が自分が太宰だという。太宰が呼んでる!って近づいていだたら皆そうだったって感じだそうで。
太宰読んだら、私ってどこにでもいる人間だなぁって思わされる、って思ってたけどこういうことか…。
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太宰入門には最適な一冊。これを読んでから是非いろんな太宰に触れてほしい。重松清さんの文章には思わず胸を打たれた。