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木を見て森を見ずという言葉がある。局所的に正しいが、大局を見失う人がいる。大局を誘導するために局所のみに集中する悪質な人もいる。本書には現役の裁判官が書いたものであるが、裁判を保守化させようという作為を感ずる。余りにも主張が極端であり、判決が短すぎるとの理由で再任を拒否された。
主張はシンプルであり、判決の理由欄に蛇足を書いてはいけない、の一点である。それをねちっこくくりかえしている。主張自体は論理的であり妥当に見えるが、蛇足の効用をまったく無視している。司法は国民を無視しては成り立たない。重要な争点での蛇足を無くし、形式的な門前払いばかりの裁判ならば、司法は国民の批判を直接を受けるであろう。
著者が例に挙げているように、蛇足は憲法判断に多い。これは、具体的な事件についてしか司法が憲法判断出来ないと言う制度的欠陥による。裁判所に憲法判断を直接仰げる制度にする必要がある。蛇足無しでは、憲法判断は非常に貧しくなるであろう。現在でも、司法は手続き論に終始して憲法判断を避ける傾向が有る。立法権の侵害を必要以上に恐れているように見える。同様に行政権を侵害する事にも慎重な印象が有る。裁判官に対する圧力、青法協つぶし、行政府との人材交流などの結果、裁判官は憲法判断を避けたり行政よりの判決を出すようになったという歴史がある。このような状態を考えると、蛇足を付ける事は、国民に由来する司法の正当性を担保する重要な機能である。
司法の立法・行政に対するチェックは、3権分立の基本であり、民主主義を保証するものである。もし本書の主張が実行されれば、この大事な司法の機能が不全に陥るであろう。
星について
興味を引くような主題でもなく、文も法律家特有の無味乾燥さが特徴である。言外に保守的な法曹の意図を感ずるので、星2個。
以下のようなネット上の書評もある。
http://www.geocities.jp/humanrightspolicy/book/007.html
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現役裁判官だった人が裁判官の「わがままな判決」に警告した本。法律で人を裁くはずの裁判官が法律を守っていないのに誰にも裁かれない。こんな一般人が考えもしないことが現実に「判決」という形で出されている例が10件紹介されています。
しかも、こうした「しゃべりすぎの判決」が全国紙の一面にでかでかと載る現実。
この本が出されてから反響があったらしく、全国紙のうち読売についてはこの本の指摘の一部を受けて編集方針に取り入れたかのような記事を載せているのを確認しました。他の新聞はどうなんでしょう?
裁判官を裁くのは裁判官、ではなく国会です、ひいては国民ですよ。裁判官も官僚なんだから、エリート意識(本書では「戦前の天皇」の意識と間接的に述べている)を持ちすぎてはだめですよ。という主張が読み取れるのは、判決を書くという仕事をしていた人の話だからこそ伝わってきました。
憲法解釈としては司法消極主義ですね。
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裁判の判決の際、実は必要以上のことが述べられている。そこから生ずる問題について、事例を挙げながら、改善するように述べている。
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結論を導くのに論理的必要性のない理由を付けることによる弊害を縷々述べる本。言いたいテーマは最初の数頁で終わり、あとはその具体例や理由の繰り返し。
下級審が結論勝訴理由敗訴の判決を書くことで、勝訴した当事者が被る不利益については理解できた。しかし、今の日本の現状からして、最高裁は争点になっている問題については理由を付けるべき局面が多々あり、一概に「しゃべりすぎ」だとは思わない。主張に偏りがあるからあまり同調できない印象を持った。
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考え方には同意。司法とはそうあるべきだとは思います
文章があまりにも下手。同じ話を同じ方法で繰り返すため,読んでいて疲れる本。
自分の主張を他の人に伝えるためには,その方法を磨くのも手ですよねぇ。
再任不適当で退官されたということにはビックリ。組織には適さなかったのかどうか。うまく立ち回りながら,自分の主張を貫くというのは難しいのでしょうか?
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判決理由に判決を導くのに必要な本来の理由ではない記述を書くことによる弊害を丁寧に説明。最高裁の傍論が国を動かす大事になりそうな今日、一読しておく価値はあり。
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判決するにあたって不必要な理由を付けることによって様々な弊害が出てくるってことを繰り返し繰り返し述べている本。筆者の考えた例のような案件がいっぱいあるのかと思えば、どっちかっていうと、判決に必要がない裁判官の個人的な考え方までが判決理由に述べられることによって、立法の権限がない司法が出しゃばってきているってかんじの例が多かった。確かにそれも問題だと思ったし、掲載されている新聞記事を見て、筆者の言うように蛇足ばっかりで面白いと思ったけれど、いかんせんこういうパターンばっかりでちょっと飽きた。それに、論理的に原因・結論だけの裁判を実際に臨む人がどれだけいるのかも疑問。クドクドややこしい言葉使って、図なんかも使っちゃってるけれど、内容的には繰り返しだし、そんなに濃い内容じゃない。
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[ 内容 ]
現役判事が司法の抱える問題点を鋭く突く。
不要に原告を疲弊させ、理不尽に被告を傷つけ、無駄に裁判を遅延させる「蛇足」の正体とは何か。
戦後補償訴訟、中国人の強制連行、ロッキード事件、ロス疑惑、「悪魔ちゃん」事件など、現実の裁判を例にあげて蛇足の弊害を明らかにする。
まったく新しい視点から裁判を論じた画期的な提言。
裁判を見る目が一変すること間違いなし。
[ 目次 ]
第1章 晴らすことのできない濡れ衣(すわ、殺人事件発生;損害賠償請求訴訟提起さる ほか)
第2章 判決理由とは何か?(話題にすること自体に意義がある;理由とは何か? ほか)
第3章 饒舌禍の実例(ロス疑惑(実例1)
中国人の強制連行(実例2) ほか)
第4章 蛇足の弊害(当事者のマイナス;裁判所のマイナス ほか)
第5章 打開策はあるか(裁判所内で;法曹全体での打開策 ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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著者は執筆当時は現役判事でしたが、本書での主張を貫いて退官された元判事の方。裁判による判決の中で、判決の理由には直接関係のない「蛇足」が含まれることを徹底的に批判しています。英米法では、判決の中でも先例拘束性のある「レシオ・デシデンダイ(ratio decidendi)」と傍論である「オビタ・ディクタ(obiter dictum)」が峻別されていますが、日本の法体系でここまで徹底した議論を展開するのを読んだのは初めてです。ただ、「蛇足」は単なる「蛇足」にとどまらず、裁判の迅速化に反するのみならず、一人歩きをして訴訟制度の歪みを産み出し、民主的コントロールが弱い司法が立法権まで手を出してしまう危惧があるという主張は、ラディカルながらも考えさせられました。惜しむらくは、結論をあまりにも早い段階で提示してしまい、その後は論証を補足していくという構成なので、法曹の書く文章に慣れていない方は、最後まで完読するまでに飽きてしまうかもしれませんね。
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蛇足判決の解説にとても納得した。
法曹界以外でも通じることが多いと感じる。
結論に影響しない事実認定の作業に手間をかけすぎたり、えん罪に近いものを生じさせたりを自分もしているのではないかと、本書を読んでから常に意識するようになった。
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裁判官が判決理由に直接関係のないこと(傍論)を付与することで、裁判の長期化、裁判所の抱える多数の訴訟の停滞、行政府や立法府に対する干渉、三権分立の均衡の崩壊などの弊害が起こると著者は述べている。それを解決するには、裁判の核心・判決の理由とは関係ないことに関して審理を行ったり、判決文の作成をしたりすることに時間を費やすことなく、要点だけまとめて裁判所が訴訟を行うことが必要だと述べてられていた。
著者の主張は、訴訟当事者の経済的な側面、精神的な側面、日本の裁判の迅速化など、あらゆる面に言及し合理的な考えであると思われた。
しかし、裁判を進めていくうえで結果的に不必要となってしまう証拠や審理があったとしても、それは結果論であって、はじめから必要なこと・不必要なことがはっきり分かれているなんてことはあるのだろうか。事件とかそういう争いのあるものは、複雑な事情が重なり合ったものも少なくはない。その点が私には疑問に思えた。
日本の裁判の改善のために一石を投じたものであるのならば、著者の主張は評価されるべきだが、少々議論が乱暴なように感じられる。
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『司法のしゃべりすぎ』井上薫。読了。一般に向けたというよりは法曹界に一石を投じる一冊。メディアリテラシーのあり方を考えざるをえないな。しかし国家無答責ってのは随分な気が...
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判決に関わりない蛇足ともいうべき部分が判決の理由欄の大部分を占めたり、判決そのものよりも重大な社会的影響を与えたりすることの無駄、違法性を説いている。
結局のところ、判決の要点と蛇足の部分をメディアが恣意的に混同し報道する姿勢こそが最大の問題点なのかな。
判決で勝った場合、その理由欄に大きな不服があってもそれを正す機会が無いというのは確かに問題だろうけども。
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フォトリーディング&高速リーディング。
現在は退任された著者の、判事時代に書いた本。話題になっていた。
判決文で余計なことを主張する自己主張が、裁判の時間を長引かせ税金を使って居るとのこと。
例示も多い。