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商品説明
新しく劇団を作ろうとしている度会恭平。納得するメンバーを集めるため、日々人材を探し回る。その過程で出遭う謎。日常に潜む謎の奥にある人間ドラマを、優しい眼で描く青春ミステリー。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
花をちぎれないほど… | 5-48 | |
---|---|---|
彼女の求めるものは… | 49-98 | |
最後の言葉は… | 99-146 |
著者紹介
光原 百合
- 略歴
- 〈光原百合〉1964年広島県生まれ。大阪大学大学院修了。尾道大学芸術文化学部講師。詩集や絵本、童話を執筆しながら、ミステリー作品を発表。「十八の夏」で日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。
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紙の本
最高の布陣
2006/04/27 08:37
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
光原百合の作品はいつもほのぼのとしていて楽しめるが、今回はとにかく光ってる。文句なしにいい。それはもう、何と言っても「劇団φ」結成のために、役者や制作スタッフを集めていく度会と風馬のキャラクターの魅力があふれんばかりだからだ。そして、その二人が一人一人ターゲットをものにしていく様が、謎解きとあいまって無条件で楽しめる。
第一話でごく人当たりのよさそうな人物でしかないと思われた度会が、視点人物の響子には見えなかったある事実を言い当てる時に、全身から何か「途方もなく強烈な光のようなもの」を出して、「悪魔さえ裸足で逃げ出すほど恐ろしく、美の女神さえ籠絡できるほど美しい」微笑を浮かべるところで、しびれる。んな馬鹿な、と思われるかもしれないが、役者とはこうでなくてはならない。役者とはこうでなくてはならない、と言えば、私が常日頃思っていることを風馬が見事に第二話で言ってくれている。「役柄ってのは芝居の間だけ、確かに存在するが実体のない蜃気楼のようなものだ。役者に惚れるなら、(自分にではなく)その役柄見事に存在させた力量に惚れてくれと」と。いささか引用が長くなってしまったが、この言葉、私はまさにその通り!と手を打ちたい思いで読んだ。そして、それを言ったのが飄々としているのか抜けているのかわからない、度会とはまったく逆の魅力を持つ風馬が言うというところがいい。
ところでこの作品には笑いを誘われるところが随所にあり(度会と風馬のボケとツッコミのような会話もそうである)、この第二話でも、視点人物の真面目な志郎が、度会と風馬の会話を漏れ聞き、「二人はできてるんだろうか」とどきどきし、見ようか見まいか煩悶するあたりが可笑しい。ちなみにこの第二話だけは謎がその話の中で解けず、最終話近くまで持ち越される。間に、わりと軽い謎解きもはさみながら…。そういう話運びの巧さも絶妙である。
度会、風馬が初登場する話以外に印象的だったのは、何と言っても第三話。反発し合い仲の悪かった美術部の二人。その二人が思いを寄せる女の子は、やがて片方と結婚し、その片方は死ぬ…その奥に隠された秘密と、風馬がどうやってそれを見抜くか、ネタばれになってしまうので何も書けないのが口惜しいが、いくつかの絵が心の中に浮かんでくるような、いい話だった。
もっと紹介したいがこのぐらいに留めておこう。とにかく一読していただきたい。そして、表紙もほのぼのとした色合いで、光原百合の作品にふさわしい感じに思われるので、見ていただきたい。
紙の本
こんなミステリーもいいな★
2005/06/06 11:23
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はなこちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
世の中にはいろんなミステリーがあって、いろんな探偵役がいる。刑事だったり、本当の探偵だったり、変わったところでは芸能人や女子高生、専業主婦なんてのも読んだことがある。
今回のミステリーの探偵役は、小劇団の役者だ。
事件(というものかどうか。。。)の解決法は、アガサクリスティの描いたミス・マープル式。つまり現場には出ずに、話を聞いてその中で推理するというもの。だけど、その推理の仕方が一風変わっている。劇団の役者のくせ(と彼らはいう)であるところの「登場人物になりきって、当事者の行動の意味を探る」というものだ。彼らはそのようにして、出来事の背景に隠された秘密を明らかにし、そしてその当事者たちの秘めざるを得なかった気持ちを解放していくのだ。
さまざまなミステリーを読んでいくと、推理によって犯人たちを追い詰めるのは楽しいが、その事件がおこった事情を知ると、犯人の気持ちが伝わってきてしまって辛いということがある。登場人物の気持ちを生き生きと描いたいい作品ほど、そういった傾向がある。
しかしこの作品では、秘密を暴かれるほうにも誰かに本当はわかってほしいという切ない気持ちがある。それを暴いていくミステリーなのだから、読み手にも嫌な気分が残らずすっきりと読める。
この小説の最後は小劇団の初日だ。舞台の幕が開くまでの、面白く暖かいミステリー劇をしっかりと堪能させてもらった。
紙の本
初読みの方もためらわずに本作を手にとって欲しいなと思う。
2005/03/27 00:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
私たち読書好きにとって、新たにお気に入りの作家を発見した時の喜びって本当にひとしおである。
その高い才能を感じ取れれば感じ取れるほど…
まるで、子供たちが遊園地でお気に入りのアミューズメントを発見したかのごとく…
本作は誰が読んでも、お気に入りとなるであろう作品である。
それほど光原百合の素晴らしさがギュッと凝縮された1冊だと言えそうだ。
本作は七編からなる連作短編集であるが、実質は長編と言ったほうがいいのであろう。
読み終わった後の構成力の巧妙さには脱帽。
果たして“大円団で幕が閉じるのであろうか”あなたも是非体感して欲しいなと思う。
光原さんが描くと平凡な人間も“個性的”となる。
1編1編は決していわゆる切ない話のオンパレードではなく、例えば他人に知られたくないような話の方が多いかな。
それを、劇団を立ち上げようとしている度会&風見がまるで当たり前の如く推理を披露し解決する。
本作はいわば、ジャンルで言えば“安楽椅子探偵”ものとなるのであろう。
実際、滑稽ながらも見事に度会&風見コンビが読者を招待してくれる。
各編とも本当に素晴らしいのであるが、とりわけ「最後の言葉は…」が印象に残る。
もちろん大半の光原ファンは謎解き要素だけでは満足していないはずだ。
それよりもむしろ、人との出会いの大切さ・仲間を作ることの重要性を再認識された方が多いのであろう。
私は特にこの点を高く評価したいなと思う。
例えば、これから新学期や新年度が始まる時期である。
本作を読めばひとりひとりメンバー(仲間)が増えていくのが楽しみでもある。
そういった意味あいにおいては季節の変わり目に読むのには恰好の1冊だと言えよう。
光原さんの作品に大きなトリックはない。
人間の奥底に潜むわだかまりが、彼女が描くと心地よく読者に伝わり、払拭されるのである。
人生もドラマである。
光原さんから、その暖かいまなざしを分けてもらった今、明日から劇団φのメンバーのように熱い人生を演じたいなと思う。
マイレコ