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紙の本
城郭ファンには嬉しいガイドブック!文春新書の中でも出色の1冊
2005/04/10 22:49
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブルース - この投稿者のレビュー一覧を見る
人が歴史を好きになる理由は、様々であろう。例えば、NHK大河ドラマを見て、歴史を身近に感じたからということもあるであろうし、近くに古寺社があったことも理由になるかもしれない。幼い頃、連れて行ってもらった城の威容に打たれたことも大きな理由になるであろう。私自身も、少年時代に、父親と一緒に訪れた何ヶ所かの城に強烈な印象を抱いたことが基になって歴史に興味を持つようになった。現在に至るまで城郭への関心が一貫として続いているのも、幼い頃の体験が基になっている。そのような歴史好きや城郭ファンには嬉しいガイドブックが新書で刊行された。
本書『名城の日本地図』は、北は北海道の松前城から南は首里城まで全国百の名城が、要領を得た解説文と共に写真2葉(重要な城は3〜4葉)で紹介されている。日本の城は、人気のある分野なのか、これまで文庫本でも何冊か刊行されているが、本書のように200葉以上も写真が載せられているのはこれまで類がない。しかも、掲載されている写真はこの新書の為にプロのカメラマンが各城のベストアングルを定めて撮り下ろしたものなので、非常に見応えがある。また、写真と共に付けられている解説文も、限られたスペースでその城の成り立ち・独自性・現在の姿をよく伝えている。何よりも、執筆者の城へ寄せる愛着が伝わって来るのが好ましい。巻頭には、城を見るポイントが簡潔に書かれていて、巻末には石垣の積み方の種類、櫓を始めとする建造物の名称などがイラストで解説されている。何とも行き届いた本である。
ただ、残念なことに、本書は見栄えのする城が取り上げてられている傾向があり、石碑でしか古の姿を偲ぶしかないような城は外されている。例えば、地元にある膳所城・大津城・坂本城などは現在、石碑や城跡公園だけしかその存在を示すものはなく、本書には取り上げられていない。いずれも、歴史的には名を残している城である。膳所(ぜぜ)城は、琵琶湖のさざ波が石垣を洗う美しい水城であったと伝えられていて、大津城は関が原合戦後に廃城になってからその華麗な天守閣は彦根城に移築されたといわれており、坂本城は明智光秀が心血を注いで築いた水城として有名である。このような城も、たとえコラム欄のような小さな扱いでも紹介してあれば、さらに万全であったと思われる。
とは言え、本書は上述のように新書にしては異例とも思える200葉以上の写真を収録しており、丁寧な編集方針が窺える見事な城郭ガイドブックである。
文春新書の中でも出色の一冊。