紙の本
私たちがすぐできることは、精神障害についてどんなものか理解すること
2005/04/25 23:23
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
この『ブラックジャックによろしく』第10巻の巻末に載っていた次巻発売予定が2005年2月になっていたのは、何度も見直していたので確かなことだ。もちろん、1冊の本が刊行されるまでには様々な行程を経なければいけないのだから、どこかで何か些細な問題が生じても刊行予定が遅れるということはよくあることだとは思う。その一方で、最近のマンガ出版状況をみてみると、人気作品については雑誌連載中であるにもかかわらず次巻発売予告が何らかの形で早々に世間に表されるし、つい最近雑誌に掲載されたばかりの分がすぐに単行本になるというのも常態化しているように思う。『ブラックジャックによろしく』は、テレビドラマ化もされ、人気作品であることはまちがいないので、刊行予定がずれたということについて、いろいろと深読みをしたくなってしまう。しかも、第9巻から扱っているのが精神医療である。余計に深読みをしたくなってしまうのは、私だけだろうか。
第10巻の終わりで、精神障害者が殺人事件を起こしたという、現実にもあった事件をほとんど踏襲しているエピソードに引き続き、この第11巻ではそのエピソードに関わるマスコミの話から始まっている。だが、これは精神医療の話であろうか。
精神障害は対人関係の病とも考えられているように、この社会を抜きにして考えることができないのは確かだ。しかし、精神障害者をマスコミがどのように扱うのかということや、現在の措置入院という制度の不備を指摘することや、今年の夏にも施行予定のいわゆる心神喪失者等医療観察法の問題などは、直接精神障害者を治療している現場の問題とはやや次元を異にしているように思う。
今まで、がん治療や小児ICUなどで斎藤君が青臭くも頑固に主張し続けたのは、あくまでも病院という医療現場を舞台にしたさまざまな治療等の問題を正すことではなかったのか。だから、精神科編で取り上げられている問題は、斎藤君にはとても荷が重いのだろうと思う。それで、登場する場面が減ってしまっているのだろう。
そして、荷が重くなったのは斎藤君だけでなく、著者もそうだったのではないだろうか。だから、発行予定が延びてしまったのではないだろうか。
たとえ医療現場から少々離れてしまっても、これまでに取りあげられてきた精神医療をめぐる社会の状況を問い直すことは非常に大切なことだと思う。この問題について、今まであまりに語られることがなかったのだから、きちんと我々自身の問題として受け止めることが大切だと思う。しかし、それをこのような事件などセンセーショナルなものとして取り上げると、さらなる誤解、偏見を生じさせてしまうのではないだろうか。
今取りあげている問題は、確かに重要だと思う。何とかしなければいけないことだと思う。けれども、斎藤君一人ではどうしようもできない部分も大きい問題だと思う。そしてそうであるならば、斎藤君にはぜひ、精神障害がどんな病気であるのかということをもっと知らせて欲しい。私たち一人一人が少なくともすぐにできることは、そこからではないだろうか。
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精神科編の続き。医療漫画のはずなんだけど、小林よしのりのゴー宣みたくなってきたような気が。評価は次の12巻の展開次第かな・・・。
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精神科編は面白く読ませていただいてます。実際の医療とどの程度違うのかわかりませんが、日本医療の現実が気になってくるはず。人の死とかついつい泣いちゃいます。
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この歳で漫画読んで泣いた。ガン編と、未熟児の話で。精神科の話は社会的な部分も、人間のエゴの部分も、とても重い。
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先生は僕が怖いですか?
僕達は一生病院にいなきゃいけませんか?
患者は怖がっている。私たちが彼らに向ける視線にこびりついた『色』に。
統合失調症患者から見た『この世界』を渾身の力で描く!!医者には何ができる?
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精神科にまつわる、『児童殺傷事件』に付いて、内容に詳しく触れて行く作品です。
早川小百合さんの過去のきっかけが、ついにリアルとして描かれて居る作品でもあり、
早川さんと小沢君が病院内でデートもある作品で、彼等の憂い憂いしいシーンも見られる、
ちょっと安心した作品でもありますが・・・。(^^;)
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精神科編の続き。
これから、ラストに向けて、どんどん盛り上がるハズの展開を期待してるのに、どんどん読んでる側のテンションが下がる・・・
この題材は、自分にとってあまりにも深すぎると思った。
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20111121
***
「精神障害者を装えば無罪になると思ったんでしょうね……」
連日のマスコミ報道が、精神科の病棟に波紋を広げていく。伊勢谷は報道に含まれた嘘に気づき、ある推論を門脇に伝えた。
「男が殺人を犯したのは病が原因ではない可能性があります……」
詐病疑惑。その可能性を追い、門脇は取材を開始する。
しかし精神病弾圧の流れは、一人の記者に止められるものではなかった。そんな中、事件報道を見て混乱した小百合は、自責の念にかられてしまう。精神障害者に容赦のない冷徹な視線が浴びせられる!!(漫画on webより)
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触れては行けない世界、そこを覗き見ているような感覚になりました。正義が勝ってほしいなと漠然と思いました。何が差別なのか、誰が守られるべきなのか、多様化の時代って本当に難しい。犯罪を病気で片付けられても困るけど、本人は病気のせいで自分の意思ではどうにもならないのかもしれないし、医学が発展してそれは本当に素晴らしいけど、結果病気が増えた(病名が付き、認知される症状が増えたという意味で)というのは辛いところである。医療ってなんなのだろう。死に逆らうことは、淘汰されるべきものを不自然に操作することなような気もしてきて、人間の生き抜く力がどんどん弱まってしまう気がして、少し怖くなりました。
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2012 12/4読了。iPhoneの無料アプリで読んだ。
5-13巻までいっき読み。感想は最後に。
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精神科編3
医療、行政、マスコミ…
社会が絡み合って生み出して行く患者への差別。
社会が患者を受け入れる体制が整わない限り、どこも動けない。
受け皿が整わないうちに、病院から患者を切り捨てるようなマネはしてはいけないと思うけれども、何処かで思い切った行動に出なければ、良くも悪くも変わらないんだろうな。
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患者と患者に向き合おうとする医師は、大衆と大衆の興味に任せた部分を含めての知る権利に乗るマスコミに対してどう対応すれば正しく理解してもらえるのか。
環境とのちょっとした巡り合わせから生じた綻びが人の心を蝕み、壊れていき、そのことから社会との距離がますます離れていく。せめて紙一重のところにいる人を追い落とすようなことがあってはならないと思う。
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そこに自分の責任があるのか、ないのかということは、結局、自分が決めることなんだろうなぁと思います。
そこに「責任がない」と言い切ることは、時に、「責任がある」というよりも重いことがあるかもしれません。
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事件を起こした犯人は精神の病を患っていることを装っているのではないかという伊勢谷の推測を聞いた読捨新聞の門脇は、精神疾患を持つ患者に対する社会に向けて一石を投じようとします。一方で斉藤は、入院患者である小沢と早川の恋を見守り、自分なりの仕方で2人の心に向き合おうとします。
著者自身、重いテーマを扱いかねているような印象もありますが、どのような観点から見ているかによって見えてくるものが大きく変わってくるような問題なのですから、すっきり割り切った答えを出すのではなく、問題に著者も読者も巻き込まれていくような本書の描き方にも、十分に意味があるのではないかと思います。
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2001年に池田小殺害事件が起きた。
第11巻はこの事件をモチーフにしている。
事件を起こした宅間守は児童8名を殺害、15人に重軽傷を負わせた。
事件直後に「薬を10回分まとめて飲んだ」と言っていたが、これは精神障害を装うための発言であり、のちに偽証であったことを宅間本人が認めている。
2013年に死刑判決、2014年に死刑執行。
この事件をきっかけに2003年にいわゆる医療観察法が成立し、2005年から施行されている。