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英国人写真家の見た明治日本 この世の楽園・日本 (講談社学術文庫)
著者 ハーバート・G.ポンティング (著),長岡 祥三 (訳)
〔「英国特派員の明治紀行」(新人物往来社 1988年刊)の改題〕【「TRC MARC」の商品解説】スコット南極探検隊同行写真家の100枚の写真で甦る100年前の日本スコッ...
英国人写真家の見た明治日本 この世の楽園・日本 (講談社学術文庫)
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商品説明
〔「英国特派員の明治紀行」(新人物往来社 1988年刊)の改題〕【「TRC MARC」の商品解説】
スコット南極探検隊同行写真家の100枚の写真で甦る100年前の日本
スコット南極探検隊の映像記録を残したポンティングは、世界を旅し、日本を殊の外愛し、この世の楽園と讃えた。京都の名工との交流、日本の美術工芸品への高い評価。美しい日本の風景や日本女性への愛情こもる叙述。浅間山噴火や決死の富士下山行など迫力満点の描写。江戸の面影が今なお色濃く残る100年前の明治の様子が著者自らが写した貴重な写真とともにありありと甦る。
本書の特徴は、著者自身の経験が生き生きと描かれ、さらにさまざまなエピソードが織り込まれている点であり、その意味でユニークな日本滞在記といえるだろう。保津川の急流で泳いだり、富士山の下山の途中、道なき道を下るなど、かなりの冒険もしている。浅間山の山頂で噴火に遭ったときの描写や精進湖の花火の話も大変おもしろい。随所に出てくる風景描写に、さすがに写真家ならではの細かな観察がうかがわれる。――<本書「訳者あとがき」より>【商品解説】
目次
- 第1章 東京湾
- 第2章 京都の寺
- 第3章 京都の名工
- 第4章 保津川の急流
- 第5章 阿蘇山と浅間山
- 第6章 精進湖と富士山麓
- 第7章 富士登山
- 第8章 日本の婦人について
- 第9章 鎌倉と江ノ島
- 第10章 江浦湾と宮島
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紙の本
知りたい昔の日本
2009/07/20 09:52
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
英国人写真家の見た明治日本 ハーバート・G・ポンティング 長岡祥三訳 講談社学術文庫
わたしは、テレビや映画ではない本当の昔の日本の暮らしを知りたい。創作や脚色がされていない日本人の過去の真実の生活が知りたい。
著者は今から約100年前の日本に3年間滞在しています。明治41年ぐらいですからわたしの祖父母が生まれた頃ぐらい、わたしがこどもの頃生きていたひいおばあさんが若かった頃でしょう。
冒頭にある奈良市興福寺の五重塔、猿沢の池、栃木県日光市東照宮、中禅寺湖と男体山など、以前訪れたところの写真を見ると、同じ場所にわたし自身も立ったわけで、なにかしらの感慨が湧き出してきます。
69ページの解説、お稲荷さんの狐は女神を表すとのこと。わたしは始めてそれを知りました。日本家屋の部屋とか庭とかの記述は、祖父の生活記録を見るようでした。現代社会には、人間が生きていくうえで必ずしも必要のないものがあふれています。そして、それらの操作や管理には細かな注意を要します。心身ともに疲れる生活を今の日本人は送っていることがわかります。
全編に渡って、当時の日本の美しい自然風景が綴られています。有名な観光地ではなくても日本中が「美」に包まれていました。
204ページ、伝説によれば、富士山は一夜にして隆起してできた。同時に琵琶湖ができた。これも初耳です。「怪談」ラフカディオ・ハーン著、いつか読んでみたい。
256ページ、日本人女性とくに高等教育を受けた女性たちは感情を表情に表さないように教育されている。仮面をつけているという記述にはうなずきました。いっぽう、そうではない女性たちは喜怒哀楽をあからさまに出す、悲しいときは大粒の涙をぼろぼろこぼすとあります。
264ページ、わたしが昨年の秋に訪れた広島の記述があります。一夜(いちや)の宴席の記録です。平家物語の上演がていねいに報告されています。このときはまだ、第二次世界大戦は勃発していませんし、原爆の投下も予想されていません。そして当然、安芸の宮島に関する記述も残されています。
270ページ、イギリス艦隊と戦った薩摩兵士のお話は感動的です。すばらしい。
日本は日本人女性によって支えられてきたことがわかります。
この本の終わりに近づくにつれて、どうして奈良の記述がないのか首をかしげたのですが、訳者の解説では、記録の量が多すぎたので割愛したそうです。宇治、奈良、日光、箱根、松島、北海道、東京、彦根などの記述が省略されています。自然探訪の記述が多い。わたしとしては、暮らし向きの記述に飢えていますので、ちょっと残念でした。
紙の本
明治日本の美を賛嘆し、その本質を敬愛した英国人写真家の、明治日本滞在記。
2011/02/08 19:06
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、英国人写真家であるハーバード・G・ポンディング氏が、一九〇二年から一九〇六年の間に、度々日本を訪れ、通算三年にわたる日本滞在の体験を綴ったものである。
本書は、日本の文化を興味本意に取り上げた紀行ではなく、写真家らしい著者の深い観察眼と豊かな感受性によって、日本の美を賛嘆し、日本の本質を探求し、感銘を受けた出来事を多くの比喩で精妙に描写した、明治日本の滞在記となっている。
また数多く掲載された明治日本の写真は、著者の巧みな文章を楽しむのに大いに役立っている。
その内容は驚くべき精緻さで、明治日本のガイドブックのようである。とにかく日本について美辞麗句に満ちており、面映ゆいほどである。
そんな日本を褒めちぎった本書は、全十章で構成されている。
【第一章 東京湾】
東京湾から日本に入るとき目にする、日本の象徴・富士山の神々しい美しさを語る。
これから『この世の楽園』に入るのだという、感慨がひしひしと伝わってくる。
【第二章 京都の寺】
古都の寺を訪ね、庭園の美しさ、建築物の歴史、襖や壁を飾る絵師の作品を精緻に解説。
伏見稲荷を訪れて、稲荷社の謂れ、神道の教えを紹介し、鳥居の脇にいる易者や、金を払うと小鳥を放す老婆の様子などを語る。
易者にまつわるエピソードも興味深いが、古寺を訪ねて、畏敬の念を抱き、心が清められる感じがすると感懐を述べる、その感受性の豊かさに驚嘆。
【第三章 京都の名工】
日本の伝統工芸を高く評価している著者は、工芸品の製作場を見学するだけななく、象嵌細工の名匠・黒田氏や、七宝焼きの名工・河並氏たちと交流し、一流工芸品を作り出す人物の考え、技術、人物像について丁寧に解説。
日本の工芸技術の高さを証明する、スペインの職人に見せた、象嵌細工の施されたシガレットケースの挿話に興味を引かれる。
【第四章 保津川の急流】
京の都を静かに堪能した二章、三章から一転、京都の保津川下りを迫力満点に語る冒険的体験の章。
一流の腕を持つ船頭たちの躍動を描きつつ、美しき保津川の峡谷を荒々しく、そして優雅に下る様子を精緻に描く。
まるで自分も保津川を下っている気持ちにさせる筆致は見事。特に急流でのシーンはスローモーションで体験しているようだ。
【第五章 阿蘇山と浅間山】
川下りの冒険をした後は、火山へ登る冒険である。阿蘇山と浅間山を紹介しつつ、登山の様子を語る登山記。
噴火を始めた浅間山で、噴石に襲われ、火山ガスに巻かれ、間一髪助かる様子を克明に描写している。
死にそうになったにもかかわらず、写真を撮ろうとするポンディング氏はまさに写真家である。
【第六章 精進湖と富士山麓】
富士五湖を巡り、それぞれの特徴や自然の美しさを賛嘆。
精進湖湖畔の小さなホテルの主人とのエピソードを交えながら、精進湖の美しさを語る。
富士川下りでは、その足取りがGoogle Mapsで追えるほど、地名が克明に記されている。
【第七章 富士登山】
新五合目から登れる現代と違い、一合目からの苛酷な富士登山記である。
時刻と到達した海抜が逐一記録し、刻々と変わる天候や山肌の様子、山小屋の様子を細かく観察しており、ポンディング氏は美を讃える能力ばかりでなく、探検的記録の能力も持ち合わせているようだ。
山中湖が正面に見えるからと、一直線に山中湖へ向かう下山行は無謀だが、どこかユーモラス。
【第八章 日本の婦人について】
本書のもっとも興味深い章であり、明治日本と人々の姿がリアルに感じられる章である。
日本女性への敬愛に満ちているこの章では、日露戦争に家族を送り出す、女性たちの笑顔の奥に隠された悲しみを理解し、敵味方問わず傷ついた兵に優しく接する赤十字の看護婦たちを天使と讃えており、彼女たちの強さ、同情心、思いやりがひしひしと伝わってくる。
この章には、感動的なロシア兵と日本兵、看護婦のエピソードの他にも、明治日本の姿をリアルに感じさせる、ポンディング氏と日本将兵とのエピソードも世見所である。
特に、黒木陸軍大将とのエピソードは興味深い。
「アナタサマ、英国のコトバ、話シマスカ?」
ポンディング氏の勇気を奮い起こして話しかけた質問をきっかけに、黒木大将は目を輝かせて、薩英戦争の状況を語り出す。
この当時の日本を明治の日本人の言葉で語る様子は、明治日本がリアルに感じられる、非常に興味深いエピソードである。
また日露戦争の勝利は、日本婦人による武士道教育の賜物であり、日本の婦人は国に貢献していると讃える黒木大将が印象に残る。
他にも、薩英戦争の発端となった生麦事件に触れ、伊藤博文や上村海軍中将とのエピソードなどを語り、非常に濃厚な章である。
【第九章 鎌倉と江ノ島】
鎌倉の寺や鎌倉八幡宮を巡り、大仏のこと、閻魔像を彫った仏師運慶や日蓮処刑などのエピソード、日露戦争での戦勝お礼参りに鎌倉八幡宮を訪れた人々の、浮かれず厳かな姿と心情への理解を語る。
『第八章 日本の婦人について』と同様に、ポンディング氏の日本人の心の本質を見抜く観察眼と感受性、そしてそれに共感できる柔軟性は、本書を読む日本人の心を掴むはずだ。
【第十章 江浦湾と宮島】
沼津の内浦湾や江浦湾周辺を旅行記風に描き、広島宮島の魅惑的な美しさを幻想的に描いている。
内浦湾の三津浜で写した、小さな弟を背負う、九つになる船頭の孫娘の純朴な姿が、多く写真の中で一番印象に残っている。
* * *
明治日本の状況や生活を知るには、少々物足りない本書だが、著者の見た美しい日本を通して、日本の素晴らしさを再認識させられる作品だった。
それには、まったく違和感を感じさせない素晴らしい翻訳を行った、訳者の長岡祥三氏の力が大きい。
原文の量が多く、その半分を割愛せざるを得なかったことは残念だが、長岡氏が、著者の行動やエピソードが多く織り込まれた章を選び編集したことで、日本の魅力を伝える作品となったのは間違いない。
紙の本
貴重な記録
2022/08/23 20:34
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の明治時代を、写真というカタチで残してくださった外国人の写真家かには、敬意しかないです……。この方、南極の、アムンゼンスコット基地で有名なあの南極隊にも同行なさったすごい写真家なんですね……。