働きすぎの時代
著者 森岡孝二 (著)
いたるところから働きすぎの悲鳴が上がっている.労働時間が1日10時間を超えるほどに長ければ,疲労とストレスがたまり,最悪の場合は死に至ることになる.本書では,グローバリゼ...
働きすぎの時代
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商品説明
いたるところから働きすぎの悲鳴が上がっている.労働時間が1日10時間を超えるほどに長ければ,疲労とストレスがたまり,最悪の場合は死に至ることになる.本書では,グローバリゼーション,情報技術,消費社会,規制緩和などに着目して今日の過重労働の原因に迫る.まっとうな働き方ができる社会を作っていくために,いま何が必要なのか.
目次
- 目 次
- 序 章 働きすぎの悲鳴が聞こえる
- 「過労死診断コンピュータ」、働きすぎでダウン
- こんなことがあっていいでしょうか
- 契約社員もパートも働きすぎ
- 病院で人間らしい時間を取り戻す
- 「過労死一一〇番」と増える過労死の労災認定
- 好んでサービス残業をしているのではありません
- 「もっと働け日本人」
著者紹介
森岡孝二 (著)
- 略歴
- 1944年大分県生まれ。京都大学大学院博士課程退学。関西大学経済学部教授。経済学博士。著書に「日本の経済システム」など。
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真の豊かさに誰もが気づくために
2005/10/28 03:30
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
過労死が多発し,過度の労働を苦にしての自殺が増大する現代の日本は,やはりどこか病んでいる。誰もがそれに気付いているのに,事態は一向に改善しないどころか,どんどん悪化していく。
どこかで歯止めをかける必要がある。膿みをすべて吐き出させる必要がある。そのためには,そんな現代日本の労働者達が携わる就業事情を解析し,分析する眼が必要である。
本書は「働きすぎ日本」の現実を捉え,その実態を追った労作である。本書が現代日本の病を正す処方とならんことを願う。
著者は,現代の“働きすぎの時代”を的確に体系化し解明する。
経済のグローバル化により,就業問題は一国内だけでは解決できないほど多様化し拡大していった「グローバル資本主義」による働きすぎ。人類がかつて見ていた将来の夢「生産性の上昇により,労働時間はどんどん短くなり,個人が自由に使える時間が飛躍的に拡大する」が大いなる幻想であったことを思い知らされる。
電話・FAXにはじまりITと呼ばれる情報技術の幾何級数的発達に伴い出現した「情報資本主義」による働きすぎ。人々の後ろからは常に新しい情報がつきまとい,時間・場所・状況をいっさい問われないまま仕事に追われる。
本当の生活の豊かさをいつの頃からか忘れてしまった人たちは,物質的豊かさを幸福と勘違いし,次々と現れる最新の商品に体内にしみついた物欲がさらされる。「消費資本主義」による働きすぎをしないと自らの購買欲を満足させることができなくなる。
そんな社会に夢も生きがいも感じることのできなくなった若者を中心に,フリーターが増加する。収入の低いこういった人たちによる「フリーター資本主義」による働きすぎは,若者の心を一層蝕み,健全な社会参加を阻害する。
さて,言葉だけではない“真の豊かさ”を皆が感じられる社会に変えていくためには,私たち一人一人は何を考え,何をしていく必要があるのだろう。
人間らしい生活の実現には、人々の働き方、働かせ方に関して一定の基準が必要。
2006/05/11 17:27
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:TEMU - この投稿者のレビュー一覧を見る
われわれは、豊かな生活を実現させようと必死で働く。
しかし、結果的にわれわれの個人的な生活は、
ますます貧しくなっていくばかりだ。
その原因は、
1.情報通信技術の発達
2.サービスの高度化、利便性の追及による労働条件の悪化
などが挙げられる。
1点目に挙げたコンピュータやインターネットの発達は当初、
労働を軽減し、労働時間を短縮するとして期待されていた。
しかし、ビジネスの加速化、商品・サービスの多様化、
経済活動のボーダレス化・24時間化の促進により、
仕事量が増える結果となった。
また2点目は、今や当たり前となったコンビニの24時間営業や
宅配便の翌日配達に見られる過剰なまでのサービスの高度化が
長時間労働を引き起こす一因となり、労働者の負担が増す一方である。
`働きすぎ´の代名詞であり、被害者数と被害金額からみれば
`最大の企業犯罪´である「サービス残業」。
これに歯止めを利かすためにも、8時間労働制を空洞化させている
36協定(労働基準法36条)を廃止して、
1日の残業時間に`上限´を設ける法的な見直しももちろん必要だが、
労働者も自分の`上限´を超えるあまりに過重な労働の場合は、
労働組合、会社に積極的に是正を促し、自己防衛としての転職も
視野に入れて、働く時代なのかもしれない。
分析はするどいが対策は?
2008/02/29 23:35
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人は 50 年以上まえから「ワーカホリック」などといわれてきたが,いまや働きすぎは世界にひろがり,フランスでさえも労働時間をふやそうとしている.日本では過労死さえ頻発している.そういう時代のながれをこの本では数値的にとらえている.しかし,それではどうしたらよいのか? この本では終章が対策の検討にあてられているが,そこでのべられている大半のことは,ずっと以前からいわれつづけてきたことである.たしかに基本は重要だが,もっと現在の状況にあわせた対策をかんがえなければ,問題の解決はおぼつかないだろう.