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紙の本
恐竜って最高にドラマチック
2007/03/11 20:54
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
恐竜の研究という夢を追って実現させた少年、あるいは世界最大級の恐竜の化石が日本で発掘される、どの側面をとってもドラマチックな物語なのだが、現代において恐竜にはもっと深い意味が内在されていたという設定から、さらに世界中を震撼させる大事件へと発展してしまう。
そもそも恐竜研究の多くの部分は進化論に依拠していて、爬虫類、鳥類、哺乳類などを繋ぐリンクとして、さらに恐竜自身の進化の体系としても魅力を放っている。しかしその進化論について世界の中には反感を持っている人々が存在する。そして「(現代において)恐竜とはアメリカである」という主観的感情移入、つまり巨大で、覇権を持つものとして認める意識が重なる。そして恐竜研究自体が、魅力的なビッグプロジェクトでもある。そういった要素がこのストーリーの外骨格を決めていく。
北陸の山間のテトリの里での世界最大級の恐竜化石の発掘と、その夢のためにアメリカ留学する主人公がストーリーの柱だが、その博士課程の研究室の仲間は、ロシアやイスラム圏からの留学生で、そういった人材を受け入れるのも、そこに軋轢が生じてくるのもまた、恐竜アメリカの巨きさでもある。発掘が開始されると、秘かに準備されていた罠が次々と発火する。もっとも純粋な研究者タイプと思われる主人公も、その政治性にしぶとく適応していく。
従来理論を(進化論に基づく研究手法まで含めて)覆そうとする若手研究者、村おこしのために恐竜をテーマにしたイベント開催に奔走する若者たち、原発問題に揺れる地元で「(滅びゆくものとして)原発は恐竜」という意識に立つジャーナリスト、そして里に古くから伝わる竜伝説と竜神様の祠を一心に守る老婆。恐竜というテーマに関連付けて、よくもまあこれだけと思うほどの面白いネタを集めて、それは面白いというだけでなく、現代日本の課題を炙り出してもいる。そして本作はちょうど2001年9.11を挟んで書かれたという、そこで生じた世界に対する問題意識も当然反映されている。架空の設定と、緻密な調査に基づく科学的社会的背景を混合させた上で、こんなとんでもない大風呂敷を広げてきれいに収束してしまうのだから、凄まじく面白いという以外に形容のしようがないのだ。