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商品説明
懐かしい故人と再会できる聖地、アナザー・ヒル。死者たちを「お客さん」と呼び、温かく迎えるヒガンという祝祭空間。連続殺人、不可思議な風習、天変地異、そこに新たな事件が−。『小説トリッパー』掲載に加筆して単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
本の雑誌に拠る書評氏は絶賛するんですが、私には陳腐としか思えないんですね、この安易な設定とイージーま文体。軽すぎて天まで飛びそう
2006/01/07 20:34
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
装画は、キングやクーンツといったダークファンタジー作家のカバーを手がける藤田新策、装丁は御馴染み、鈴木成一デザイン室。で、この本の場合、製本用語でいうところの見返しのきき紙と遊び紙にも絵がついています。勿論、上下巻で異なっていますから少なく見積もっても各巻三枚、合計六枚のカラーの画を楽しむことができます。
ついでに、ここでもっと言っておけば、まず各巻のカバーは表と背は独立して一体のものとして楽しむことが出来ますが、上下間を並べて見ると別の絵が見えてきます。さらに、背を並べるとこれまた全く違う絵が現れます。つまり二つのカバー画から四つの違う絵を楽しめるんですね。閑話休題。
巻頭に登場人物一覧がついていますので、それを利用しながら舞台を紹介しましょう。主人公は東京大学の大学院生で文化人類学を学ぶジュンイチロウ・イトウ。彼の親戚で、ヴィクトリア大学の学生というのがハナ。同じく親戚で、女子高の教師というのがマリコ。ハナ、マリコの叔母というのがリンデです。
で、舞台となるアナザー・ヒルは島の北西部にあります。登場人物たちはナロー・ボートに乗ってアナザー・ヒルに向かいます。でも、アナザー昼は島ではないようです。そうは書いていません。でも、船で行くんですね。川べり、って書いてあったり水門と書いてあるんですが、全体が見えてきません。せめて簡単な図面でもつけておけば理解しやすいのに、と思います。
で、その舟の出発時間は、生者と死者との境界線の時間、いわゆる逢魔が時、である夕方六時から十時までの間と決まっています。それが示すように、アナザー・ヒルは死者が生者を訪れる場所なんですね。で、その時期というか、そのお祭がヒガンだそうです。ここまでくると、これって『十二国記』のパクリ?って思いますね。
だからその世界の図面を付けたくなかったのかな?絵をつけなかった分、それを恩田は必死で文章で表現しようとします。しかも、ストレートに書いてしまってはつまらない、とばかりに小出しに、回りくどく。で、結果として極めて不自然な話の展開になっています。
そこで不思議な事件が起きます。死体がいくつも発見され、安定していたかに見えた異世界が危機に瀕していくのです。ま、あとは読んでもらいますが、賢いと設定されている東大生のジュンは、どう考えても優柔不断の私立大学にも入学できそうもないヘタレですし、2人の教授は周囲のことも考えられない愚者です。なんていうか、常識はずれの愚かさを見せるんですね。
で、世界の描写もそうでしたが、事件の描写も回りくどい。っていうか、ただただ長引かせているだけ、頁稼ぎの気配濃厚です。長女には時間の無駄なので読ませませんでした。でも、一応話はしてみたんですね。「多分、恩田はこの話を、全体の構想を考えずに、書いていると思うんだけど、ちょうど乱歩の駄作のいくつかがそうであったように」と。
長女いわく「だから、前からいってんじゃん、恩田にはそういうところがあるって。上手く行くときもあるけれど、腰砕けになっちゃうことが結構あって、尻切れトンボになってるって」だそうです。
先日、島田荘司『摩天楼の怪人』にも、ただ長いだけの冗長な作品、という印象を受けたんですが、この作品も全く同じです。2人とももっと書ける実力を持っているのに、なんでこんな作品を書いてしまうのか?そう思います。既に書きましたが、小野不由美『十二国記』の、未完ではあるものの壮大でしかも秩序ある透明な世界と比較してみてください。
しかも、ジュンといったコミックのような名前、アナザー・ヒル、ヒガンといった安直というより陳腐な命名。これまた小野不由美『東亰異聞』の世界にも及びもしない、といっておきましょう。
紙の本
生と死が出会う場所。
2005/11/22 15:35
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:求羅 - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台はアナザー・ヒル。そこでは毎年、“ヒガン”と呼ばれる行事があり、死者が生前そのままの姿で現れ、そこに訪れた人々と交流する。
物語の後半で、人々が“ハンドレッド・テールズ”(いわゆる百物語)をする場面がある。その中の、「こうして大勢で、無心に誰かの話を聞くこと、しかも役に立つとか仕事のためとかではなく、ただ楽しみのために話を聞く」という一節は、そのまま本書にいえることだ。ただ無心に物語の世界に入ってゆく。現実の世界から抜け出し、異世界に足を踏み入れる感じ。読み終えて現実に戻ってきても依然として高揚感が続いていて、しばらく茫然とする。本書は充分にその物語性を持った小説だ。ファンタジーが好きな人は楽しめることだろう。
ただ、私は評価を辛口にした。それは、本書で描かれる死生観が浅いように感じられるからだ。
「精霊と死者が現れる場所」を舞台に設定していることから作者は“死”というものをテーマの一つにしていると考えられる。ここでは、「死者が死者でなくなる世界」が提示されている。
作中でも触れられていたが、現代の社会では“死”は忌むべきものとして隠蔽されている。だから、誰人も避けられない死を見つめ、有限の時間である一生を「いかに生きるか」と考えて生きていくことは、自身を成長させていく上でとても大切だと思う。 しかし、死んでも現世に存在し続けるとなると、生と死の境界があいまいになり、「何のために生きるのか」分からず無力感に襲われるだろう。また、死者が新しい“生”をスタートすることもできない。そのような世界は、愛する人と別れたくないと願う、生きている者の自己満足に過ぎないのではないだろうか。
読み終えて、死者であふれ返っているアナザー・ヒルの姿を想像してしまった。
紙の本
ファンタジーとミステリとホラーのコラボ
2005/10/29 12:58
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紫月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白い小説に出会ったとき、読み終えるととても残念な気分を味わうことがあります。
ああ、もう少し小説の世界に浸っていたかった......。もっとゆっくり読めばよかった、と。
本書もそんな気持にさせてくれました。
久々に読んだ恩田作品はファンタジーとミステリとホラーのコラボ。
著者の作品はとても幅があって、モノによっては好き嫌いが分かれるところだと思います。
かくいう私も『恩田作品はなんでも好き!』派ではないのですが、本書はラストに裏切られるところがなく、最初から最後まで一貫したものがあって楽しめました。
『お客さん』と呼ばれる、死者と出会うことができる聖地、アナザーヒル。
とても魅力的な設定です。
主人公ジュンの素朴な人柄も好感が持てるし、日本とイギリス文化が融合したようなV.ファーは、イギリスミステリを読んでいるようで、どこか懐かしい感じ。
欲を言えば後半、ちょっと急ぎすぎて謎解きが雑になった感があるのが惜しいです。
しかしこれだけの長編を一息に読んでしまえるほどの面白さ。
秋の夜長に、ジュンたちのように紅茶を用意して楽しむといいかもしれません。