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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2005.12
- 出版社: 港の人
- サイズ:18cm/157p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-88008-347-X
紙の本
あたまの底のさびしい歌
宮沢賢治が友人や家族にあてて書いた手紙11通を厳選収録。祈りの涙、戦いの火花である熱い言葉ひとつひとつが、封筒からこぼれ出し、いま、賢治の心から私たちの心へと配達される…...
あたまの底のさびしい歌
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商品説明
宮沢賢治が友人や家族にあてて書いた手紙11通を厳選収録。祈りの涙、戦いの火花である熱い言葉ひとつひとつが、封筒からこぼれ出し、いま、賢治の心から私たちの心へと配達される…。読みやすい現代表記で、イラストも付す。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
宮沢 賢治
- 略歴
- 〈宮沢賢治〉1896〜1933年。岩手県生まれ。花巻の農学校教師。退職後は、農業指導のほか文学や音楽にかかわるさまざまな活動をおこなう。著書に「春と修羅」「注文の多い料理店」など。
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紙の本
手紙に映る心の姿がみえるよう
2006/06/01 10:52
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮沢賢治が37歳でなくなるまでに書いた沢山の手紙の中から11通の手紙を選び、絵と共に構成した本です。どの手紙からも、手紙を書く時の気持ちが切々と伝わってきてさまざまな思いを沸き立たせてくれます。
手紙は特定の読み手を想定して書かれます。心を許せる親友への手紙には思わず自分自身の生活への不満、考えがあふれます。ぶつけてしまったそのすぐ後には、「あなたはこんな手紙を読まされて気の毒な人だ。そのために私は大分心持がよくなりました。」と気遣う心が戻ってきます。手紙を書くことによって、変化していく心が手に取るようにわかる部分です。おもわず吐露してしまった言葉を振り返り賢治はこう書きます。「これが私の頭の中の声です/声のままを書くからこうなったのです。/あたまのなかのさびしい声/あたまの底のさびしい歌。」こんな風に、頭の中の声を、そのまま書き示せる相手がいた賢治がうらやましくも思えます。
相手が異なれば、書き手賢治の言葉は随分違っています。父親には理解をして欲しいもどかしさと少々の甘え、教え子への手紙には優しさが覗きます。なくなる少し前に書いた教え子への手紙には「上のそらでなしに、/しっかり落ちついて、/一時の感激や興奮を避け、/楽しめるものは楽しみ、/苦しまなければならないものは苦しんで、/生きていきましょう。」と書かれ、「また書きます」で終わります。「また書きます」という一言に、書くことを終わっても差し伸べられている心の手が、目にみえるようでした。
ところどころ、行間を多く、一ページに2、3行のような入れ方をしているところがあります。本来の手紙は恐らく手書きでしょうから、きっとまったく違った筆の強弱、速度などを感じさせるものでしょうけれど本の作り方としてはこのアレンジは成功していると思います。文章、言葉のリズムが感じられました。
単純な線だけの挿画は出すぎず、心地よい感じがします。見開きで描かれた海岸、山と畑と鳥の群れなどは、その前のページの文章に綴られた心の底の歌が、波の音になって、あるいは風の音になって聞こえてくるようです。文中に添えられた絵の中に、文字にかかって読みにくいものが数箇所あったのが少し残念ですけれども。
電子メールの普及で、若い人もまた手紙を書くようになるのでは、といわれたことがありました。携帯電話のメールが広まり、文字は素早く飛び交うけれど、ゆっくりと考えた言葉が交わされているかどうか、は怪しい気がします。「メール」になる前の「手紙」を、賢治の手紙から感じてみるのもよいのではないでしょうか。
余談ですがそんな「手紙」を扱った小説としては井上ひさし「十二人の手紙」がなかなかです。手紙形式だけを使ってドラマを上手く描き出していて、オススメと思います。