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紙の本
魔法ファンタジーの世界 (岩波新書 新赤版)
著者 脇 明子 (著)
「指輪物語」「ゲド戦記」「ナルニア国ものがたり」。子どもたちを、そして今や大人たちをも惹きつけてやまない、魔法ファンタジーの不思議な魅力の秘密、さらにそこにひそむ危険な罠...
魔法ファンタジーの世界 (岩波新書 新赤版)
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商品説明
「指輪物語」「ゲド戦記」「ナルニア国ものがたり」。子どもたちを、そして今や大人たちをも惹きつけてやまない、魔法ファンタジーの不思議な魅力の秘密、さらにそこにひそむ危険な罠をも解き明かす、本格的な案内の書。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
脇 明子
- 略歴
- 〈脇明子〉1948年香川県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修了。ノートルダム清心女子大学教授。専攻は比較文学(幻想文学、児童文学)。著書に「ファンタジーの秘密」「幻想の論理」など。
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紙の本
うきうきとわくわくと
2006/07/19 22:57
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみひこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ファンタジー文学の中に潜む危険性に警鐘をならしつつその魅力を語ろうとする筆者の試みには同意しつつ、少々焚書行為になるのではと危ぶみつつ本書を手にした。
だが、筆者は賢明にもまだシリーズが完結していない最近のファンタジーについては具体的に内容に言明せず、主にトルーキンとルイスのファンタジー世界の違いを対比させつつ論を進めている。
その中でも特に、第3章の「善と悪の戦い」において論考される、安易な絶対悪の設定への批判は実に興味深く重要な指摘だと思う。確かに闇と光などと対比されると絶対的正義があるような気がしてしまうが、悪とは実は相対的なものなのではないだろうか。悪を行なう快楽があるとはいえ、全く世界征服をしていったい何になるのだろう。又、魔法の力が安易な「仕返し」だけに使われておしまい、という物語の危険性についての指摘も、考えるべきだろう。そして、筆者が語る言葉の中に、仕返しとしての人殺しが正当化されていく物語への危惧を私は感じる。古来の仇討ちの連鎖の愚かしさを感じる現代人にとって、「仕返し」のためなら戦争を行なってもいいという物語の流れの危険性に気づくべきなのではないだろうか?
又、第4章の「伝承の謎と魔力」における物語の背後にあるヨーロッパの伝承文学については、多くの物語の背景とされている諸作品についての知識が得られ、今後これらの物語を読み進めていく入口となるだろう。
だが、その他の各章を通して感じられることは、大きな危惧を現代のファンタジーについて感じながらも、筆者がファンタジーを愛し、それを人生の糧としてきたことを全ての章を通して語っているということだ。自分の好きな作品について語る著者のうきうきとした言葉に感動しつつ、私もわくわくとしながら巻末のブックリストに載っていた未読の本に印を付けた。
ファンタジーについて語るものは、実はまだ少ない。この書が、危険を孕みつつも魅力に満ち、想像力を飛躍させる力を持つファンタジーについて考える入口となるのではないだろうか。
紙の本
内容自体は良い、しかし著者の考えが……。
2006/07/09 21:00
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:フュラー - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ファンタジーの不思議な魅力の秘密と罠について本書は述べている。また、ファンタジーの評論、そのルーツであるヨーロッパの伝説などについても語っている。ファンタジーと言っても、古典的な海外児童文学がその主であり、特に「指輪物語」、「ナルニア国物語」、「ゲド戦記」については深く書かれている。不思議なことに、今日のファンタジーブームの最前線を走っていると思われる、「ハリーポッター」については何も語られていないのだが。
本の初めから、著者は、ファンタジー、特に魔法ファンタジーには危険な罠が潜んでいる、と言う。私はこの著者の言っている、ヴィジュアルなメディアによるファンタジーの危険について、一部共感できる。確かに、最近、「行き過ぎ」なものがあると思うからだ。著者が言うように、ファンタジーにはわかりやすい、「良い悪い」を判断する尺度がなく、世の中には、最近ファンタジーが多く出ている。「こらしめ」や「しかえし」を正当化する魔法や、グロテスクで、血みどろな魔法。そんなものが多いのかも知れない。 けれど私は、著者が言っていることは、少し硬すぎではないのか、と思うのである。なぜなら、私はファンタジーというジャンルの「自由さ」に惹かれた人間の一人だからだ。作者が言っている、「良質な」ファンタジー(指輪物語、ナルニア国物語、ゲド戦記のようなもの)も私はあまり多くはないが読む。そしてそれを読んで、これは良いなと思うし、面白かったとも思う。ゲド戦記などは、世界観の細やかさに感動を覚えた。けれど、こんな本ばかり読んでいて楽しいかというと、楽しくない。私自身が多読に近い本の読み方をしているからかもしれないが、型にはまった、きっちりした本ばかり読んでも面白くないのではないかと思う。というより、このような本ばかり薦められては、だが。
著者は本書の中で、サラリとではあるがライトノベルを否定している。楽しむ為だけに本を読むなんて、と言う考えだ。本を読む理由の一つは楽しむ為だと私は考えているので、こう言われると反感を覚えずにはいられない。
もっと、自由に本を薦めればいいのに、と私は思う。確かに、「本を薦める側」からしてみれば、きっちり、かっちりとした本を薦めたいのだろう。しかし、「本を読む側」から見れば、もっと幅広く、もっと自由な範囲の本を読みたい。
私はこの本の、丁寧な、ファンタジー作品に対する評論、そのルーツを探っているところは良く、評価すべきだと思う。しかし、著者の凝り固まった考えには、多少の反感がある。一読、サラリと読む価値は十分にある本だと思うが。
紙の本
古典は理想か。
2018/01/08 10:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うりゃ。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
魔法ファンタジーが児童文学ジャンル以外も席巻しつつある昨今、どのように向き合うべきかについて問いかけた内容。
取り上げられている作品はほとんどが古典ともいえる評価の定まった名作揃いということもあり、著者が批判している作品についても挙げてみてほしかった。
現代の作品にも名作はあるのだろうと思うのだが、「売れている」作品と「文学的にすぐれている」作品はイコールではないので、探す手がかりが欲しい。
巻末のブックリストも古典的だが充実しているのがありがたい。