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商品説明
ひねくれモノは、チェーホフを読め。ドライにシニカルに、人生の行間を描いたロシアの文豪。悩ましいモテ男の文学と脳みそを、アトーダ式に大解剖! うっかり共感しちゃうこと間違いなしの、新チェーホフ入門。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
今まで、どこか物足りなかった阿刀田のこのシリーズ、でも今回はちょっと違う。小説つくりのヒントから戯曲との違い、短篇の楽しみ方などなど思わず、チェーホフが読みたい!
2006/12/20 21:09
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず装画がいいですね。世田谷美術館で開かれた三人展を見に行くことは出来ませんでしたが、さすが矢吹申彦の仕事はいいな、って思います。でも、もっと素敵なのは扉です。あ、っと驚きますよ。ちょっとしたことなんですけど、へぇー、って私は唸りました。で、全体は9話。各話の扉にテーマとなる時代のチェーホフの顔が描かれています。
さて、チェーホフ。私は殆ど読んでいないし、お芝居のほうも観ていません。戯曲は、つい先日〈かもめ〉を読んだだけ。でも、興味はあるんです。そんなところに見かけたのがこのアトーダ楽しむために本です。私と阿刀田との付き合いは長くて、このシリーズも『コーランを知っていますか』『旧約聖書を知っていますか』『新約聖書を知っていますか』など殆ど読んできています。
ただし、それらを読んで原典に当たりたい、という気にはなりませんでした。それは阿刀田の紹介の仕方が悪いわけでも、原典に魅力が無いわけでもなくて、抄訳的なものの限界といえる気がします。でも、なんとなくそれらを知りたい、という人には実に魅力的なタイトルなんですね。私が思わず手を出したくなるくらい・・・
で、この本を読んで初めて知ったんですが、チェーホフは実に多くの作品を書いている。短編小説五百数十編、戯曲は14作だそうです。でもその生涯は予想以上に短い。生年が1860年で没年は1904年で、阿刀田の言葉を借りれば
「日本の暦なら万延元年から明治三十七年まで。生涯はおおむね明治期にすっぽりと含まれている。四十四年の短い命であった。
ロシアについて言えば、ロマノフ王朝の末期。農奴解放令が1861年に発せられ、ご存じロシア革命は1917年に起きている。チェーホフの生涯はここにすっぽりと含まれている。」
だそうです。いいですね、こういう紹介。彼が生きていた時代がしっくり頭に入ってきます。で、各話のタイトルと各扉画についているチェーホフの肖像、その下に描き込まれた年号を( )内に書いておきましょう。
第1話 小遣い稼ぎから (1879、1889、1900)
第2話 工房の秘密を捜して
第3話 恋と時間のたわむれ (1882)
第4話 長編への迷い道 (1888)
第5話 短編小説の名品たち (1899)
第6話 おしゃべりな助走 (1888)
第7話 〈かもめ〉は演劇〈ワーニャ〉は人生 (1899)
第8話 〈三人姉妹〉〈桜の園〉の兄と弟 (1904)
第9話 チェーホフの周辺飛行 (1904.7.2)
です。お気づきのように第2話だけは肖像に年号が書いてありません。うーん、でも、画があるんだからイメージした時代はあるわけですよね。それだったら書けるんじゃないか、そう思うんですね。ここらは矢吹申彦さんなり阿刀田さんに確認してみたいところではあります。
で、私は初めて原典を読みたいと思いましたね。特に夥しい数の短編。例えば、風に紛れて愛をささやく〈いたずら〉や、あてが外れることがいかにも滑稽な〈床屋で〉。戯曲よりは小説を読みたいです。で、その秘密、パターンについて阿刀田は実に分りやすく教えてくれます。
そして小説と戯曲の違い。へえ、って思いましたね。トルストイはシェイクスピアの芝居を批判していたんですね。話の流れが論理的ではない、と。で、それを読むと、なぜ私が戯曲ではなく小説を好むか、っていうのがよく分ります。要するに、論理的な展開、ストーリーとしての完璧さが好きなんですね、私もトルストイも。
演技の上手さは当然として、脚本にも小説並みの整合性を求めてしまう。お話なんてどうでもいいの、ヨン様のお顔を見ることが出来れば、ねえ、もこみちくん、なんて妥協することが出来ない。そうか、戯曲に厳密さ、リアリティを求めちゃいけないんだ、ならテレビドラマだって許せるか・・・なわけ、無いじゃん。