迷いと決断―ソニーと格闘した10年の記録―(新潮新書)
著者 出井伸之 (著)
決断するまでは、誰しも迷う。ましてや従業員16万人、売り上げ総額7.5兆円の企業の運命がかかっているのならば……。一社員から、ソニー初の「プロフェッショナル経営者」として...
迷いと決断―ソニーと格闘した10年の記録―(新潮新書)
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商品説明
決断するまでは、誰しも迷う。ましてや従業員16万人、売り上げ総額7.5兆円の企業の運命がかかっているのならば……。一社員から、ソニー初の「プロフェッショナル経営者」として社長に就任した著者は、瀕死の状態だったソニーの立て直しに成功する。そして、コーポレート・ガバナンス改革を実践し、精緻な企業戦略を練り上げ、さらなる改革へと突き進むが……。前CEOが、初めて語ったソニー経営の内幕。
著者紹介
出井伸之 (著)
- 略歴
- 1937年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ソニー前CEO。クオンタムリープ株式会社代表取締役。著書に「ONとOFF」「非連続の時代」など。
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迷いながら決断した結果がソニー衰退のトリガーになった。
2007/02/04 10:13
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みち秋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1995年。コンスマーエレクトロニクスの全盛期が終わり、インターネット時代が始まろうとしている時、出井氏はソニーの社長に就任した。
時代の変化を予感して、ネット社会に適合できるようにAV/IT路線推進、ネット事業への進出など、事業の軸足を移すためにさまざまな経営方針を打ち出した。
創業世代との軋轢、自由闊達な企業風土の中で、改革を断行し新しい会社へ脱皮でき、初代生え抜き社長としての重責は達成できたと胸を張る。しかしソニーは経営不振に陥っている。その経緯についてはソニーの内部告発書( ソニー本社六階 技術空洞)を併読すると不振の真因が浮き彫りになってくる。
一般的には映画、音楽、金融と事業を拡大しすぎて本業が手薄になった経営ミスを指摘する意見が多い。本書からは二つの原因が読み取れる。経営陣がモノづくりの核心部を理解していない事が、社員との対立を深め、求心力が失われていったと同時に業界構造が垂直産業から水平産業化したことが逆風になり衰退に拍車をかけた。次に間接的要因として出井氏のスノビズム(高慢、気取り、虚栄)が障害となり愚直に取組むものづくり企業のトップとして本業に専念できなかったのではないかと憶測する。
03年4月株価急落(ソニーショック)は「大きなミスティクだとも思わない。ただ決算の数字の意味を正しく理解してもらえなかった」と弁解する。
また液晶TVの市場投入が遅れた件に至っては、「これくらいの誤算はたいしたことはない。液晶パネルは合弁化によりトップ企業の一角を占めている」と戦略を正当化する。
液晶パネルの自社開発に成功してTV業界を独走しているシャープを見るとき、自社開発が失敗に終わり市場投入が遅れたことは重大な経営ミスであることは謙虚に反省すべきではなかろうか。さらに加えれば、「既に「技術のソニー」ではなく「マーケティングのソニー」 に変質しており、技術の空洞化は有り得ない」と詭弁を弄する。
このように危機感、緊張感のない微温的体質が露呈されグローバル企業のトップとも思えない唖然とする意見が多々ある。全体を通して責任転嫁、詭弁、正当化などの抗弁が目立ち、自らの経営戦略はどこよりも先見性が有り優れたものであると強気を貫く。
ものづくり企業といえば質実剛健、油と汗の臭いのする企業風土を感じるものであるが、出井氏の文章には現場、人材育成、技術開発、品質向上の、ものづくりのキーワードが表記されていない。これだけでも出井氏はものづくり企業の経営者としての資質にかける面があったのではないかと勘ぐりたくなる。
しかし出井氏は被害者かもしれない。時代が大きく転換する中で、先代からの多額な負債を押し付けられ、創業世代と敵対しながら改革と同時に業績を上げねばならない重責を負わされ、時代の流れに翻弄され名声と罵声を浴びせられた不運な経営者であったかもしれない。
本書はグローバル企業といえども経営トップの一寸した判断ミスが経営不振の起爆剤となる厳しい時代であることを再認識させる。
無能の証明
2007/06/28 11:54
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮内亮治著『虚構 堀江と私とライブドア』に株価が暴落したソニーを「虚構の株高」で時価総額が異常に膨らんだライブドアが真剣に買収しようと目論んでいたことが記されている。堀江曰く「今のソニーには経済が不在。このチャンスにソニーを乗っ取って、ライブドアの傘下に世界的ブランド『ソニー』を組み込む」予定だったんだとか。結局この壮大なる計画は資金調達が上手くいかず、先に手を出したニッポン放送買占めが泥沼化する中で頓挫してしまうのだが、堀江というのは、ある意味で優れた視座をもっていた男だと思わせるくだりである。堀江をして「今のソニーは経営不在」と言わしめた当時のソニーの経営者こそ、本書の著者・出井伸之である。出井はソニー史上、最悪の経営者として末代まで語り継がれるのではないか。ゲーム機PSが「たまたま」当たったことに味をしめて、「これからはハードではなくソフトの時代」とうそぶき、「デジタルドリームキッズ」などとほざいて派手なパーフォーマンスを繰り返す中で、ソニーの家電製品はその質をどんどん落とし、薄型テレビの市場に完全に乗り遅れた。苦し紛れに打ち出した「有機ELテレビ」は何時までたっても商品化せず、その間に液晶テレビはシャープに、プラズマテレビはパナソニックに乗っ取られてしまった。バブル期大ヒットしたPC「VAIO」も後が続かず結局は消費者から見放されるも知らん顔。本来ソニーが世に問うべきICレコーダーは今やアップルのアイポッドの独壇場となってしまった。「どうしたソニー」と叫びたくなったのは私だけではあるまい。すべての責任は、この無能経営者・出井にあることは明らかだが、本書では出井は苦しい責任転嫁を繰り返すのみで、自らの経営失敗、経営責任を認めようとはしていない。そうなのだ。人間は失敗を認められない存在なのである。だからこそ「マーケット」の力を借りて「物言う株主」「物言うファンド」が株主総会を舞台に無能経営者に退場を迫ることは、必要なのである。しかし、腐っても鯛である。いつの間にか液晶テレビの分野でソニーが遅れて出したBRAVIAは徐々にそのシェアを広げている。ソニーのブランドは、まだ死んではいなかったのである。出井はようやく退場した。日本が生んだ世界的ブランドであるソニー。無能経営者を退場させた後の奇跡の復活を私は信じたい。