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商品説明
教室でもチャットルームでも「いるだけの人」トオルと誰にも見えない親友ヒカル。得体の知れない殺人者の潜む校内、殺された少女の幽霊が彷徨い、地下にはもう一つの中学校が…。悪意が作り出した死の世界のただなかへ、絶望、不安、恐怖の闇の階段を、トオルは、希望と想像力だけを武器に、降りて行きます。はじめて愛した人を救うために。【「BOOK」データベースの商品解説】
ひとりぼっちの少年トオル、彼だけにしか見えない親友ヒカル。悪意に満ちた世界の、不安と恐怖の闇を進む。その先にともる希望をたよりに。はじめて愛した人を救うために…。少年の奇跡を描き尽くした感動の長編小説。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
辻 仁成
- 略歴
- 〈辻仁成〉1959年東京生まれ。89年「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞し、作家デビュー。「海峡の光」で芥川賞、「白仏」の仏翻訳語版で仏フェミナ賞・外国小説賞を受賞。音楽、映画等でも活躍。
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紙の本
これが20年ぶりに書かれなければならなかった作品なんでしょうか。時代遅れ、っていうか流行のど真ん中っていうか。せめて10代の少年の手で生み出されていれば・・・
2007/08/11 15:10
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず、私は辻のファンではありません。彼が芥川賞受賞作家であることも忘れていて、勿論、受賞作も読んだ事がありません。すばる文学賞作家には目を光らせていますが、何故か辻の名前は抜け落ちていました。当然のことながら、すばる文学賞をとった『ピアニシモ』のことは全く知らず、今回の本を単独のものとして読み終わったわけです。
で、あらためて評を書くために調べ始めて、この本が17年前に書かれた『ピアニシモ』と関係あることを知ったわけです。「デビュー作『ピアニシモ』から17年、あの透とヒカルが帰ってきました。」とは出版社の言葉ですが、これを読んで私などはボーゼンとしてしまったわけです。後段を書くほどの話なの?って。
お断りしておきますが、私の評は17年前の作品と全く切り離された、今回の作品単独のものです。手抜き?といわれても、この本を読む限り、あえて溯るほどのものではないだろう、そう考えています。
主人公は、ウジイエ・トオル。一年十三組の生徒です。彼の学校は、一学年が十四組まである、現在でも珍しいマンモス中学校だそうです。正直、ここだけでリアリティを感じなくなってしまうので、ちょっと困った設定ではあります。で、彼には友人、というか知り合いがいます。それが、学校内を自由に動き回るヒカルです。
どうも、ヒカルの姿はトオルだけに見えるもののようです。そのことからわかるように、トオルは孤独です。シカトされている、とかイジメにあっているわけではありません。ただ、ひっそりとしている。普通なら引きこもってしまう、そういう少年で、実際、小学生の時に、それに近いことをしています。
両親は、家庭を顧みない出世主義の父親オスガオーと、それをいいことに不倫をしている母親メスガオーで、離婚寸前、ということになっていますが、ヒカルの存在のこともあって、どこまでが本当で、どこからがトオルだけの世界のものかはわかりません。ただ、子供のことについて無関心でありそうなことは伝わってきます。
で、彼の学校で3年前に事件が起きています。一人の少女が死んでいるのです。名前はフーちゃんことキリシマ、トオルの同級生であるシラト・ユウキの従兄弟です。シラトは男子生徒でありながら、スカートを穿いて登校する、それゆえに男子生徒たちからイジメの標的となっている生徒です。トオルとは微妙なすれ違いをしながら、でもヒカル以外に唯一といえる友だちです。そして、今、あらたに事件が起きるのです。
まず、この病的な主人公に共感を抱けるか、或いは少なくとも、こういう人間の存在をありうると考えられるかで、作品の評価が大きく変わりますが、残念なことに私は少しもリアリティを感じませんでした。むしろ、シラトだけが不思議ではあるけれど、実際に身の周りにいてもおかしくないし、付き合ってもみたいと思います。
しかし、そのようなことを辻は想定していない。著者にとってあくまで重要なのはトオルでありヒカルであることは明白です。しかし、肝心の二人には全く興味を持てません。なに分かった風な、今流行のこと書いているの、って思う。これが20年前の文なら、フムフム、くらいは思ったでしょうが、アナザーワールドも含め、ここにあるファンタジックな、ある意味ダークなお話は掃いて捨てるほどあるわけです。
辻があえてそれを書くのであれば、その凡百を越えて欲しい。でも、その高みには到底及ばない。これであれば、島田雅彦や豊崎由美が声をそろえて辻の文學を否定してもいたしかたない。確かに文章は読みやすく、喉越し爽やか。でも、それだけ。確かに、今風ではありますけれど、時代の先端にはいない。むしろ、頭のいい振りした大人が他人のレールの上を大手を振って歩いている感じです。これが15歳くらいの少年がかいたお話であれば、褒めてもいいんですが・・・
以下はデータ篇。
初出『文學界』2006年11月号~2007年1月号
装丁 大久保明子
カバー画 David Hockney
"The Hypnotist"1963
Edition:50
etching & aquatint in two colors
25*22 1/2"
David Hockney
Courtesy of Nishimura gallerry
Pianissimo
Pianissimo
by Hitonari Tsuji