読割 50
紙の本
現代の貧困 ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書)
著者 岩田 正美 (著)
格差社会の果てにワーキングプアや生活保護世帯が急増中と言われるが、バブルの時代にも貧困問題はあった。貧困問題をどう捉えるか、その実態はどうなっているのか。現代日本の現状を...
現代の貧困 ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書)
現代の貧困 ――ワーキングプア/ホームレス/生活保護
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
格差社会の果てにワーキングプアや生活保護世帯が急増中と言われるが、バブルの時代にも貧困問題はあった。貧困問題をどう捉えるか、その実態はどうなっているのか。現代日本の現状を明らかにし、その処方箋を示す。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
岩田 正美
- 略歴
- 〈岩田正美〉1947年生まれ。中央大学大学院経済学研究科修士課程修了。博士(社会福祉学)。日本女子大学教授。研究テーマは、貧困・社会的排除と福祉政策。
関連キーワード
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
「格差」ではなく「貧困」が問題だ
2007/08/13 23:55
14人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
貧困というとなんだか古い話のようだが、著者はデータを提示して、貧困が現在非常に拡大しつつある状況を示し、貧困に陥った人々に対する保障がきわめて薄い現代日本の問題点を指摘している。
最近格差社会論が活発だが、いわば個々人の生き方の問題とも言える格差、ではなく、社会がその是正を行わなければならないもの、最低限の生活の維持が危うくなる「貧困」が問題なのだという。
では、貧困とはどういう状況か、ということについてから説明が始められ、貧困調査の基礎知識などが解説されなかなか面白いのだが、それは措いておく。
メディアでは誰もが貧困に陥る可能性があるということを強調するが、そうではなく、現代日本で貧困に陥るのは、特定の人びとだという。それはある不利な状況にある人びとで、現代では格差の進行により、そうした人びとが貧困から抜け出せなくなり、固定化している。そこで強い関連があるのが学歴で、大卒、高卒、それ以下、できわめて大きな差ができている。これには、高等教育を受けさせるだけの富裕な家庭でなかった、という状況が考えられ、格差固定の一例を示している。
そして、貧困という状況下では、経済的な困窮のため、安定した労働が行えないという不安要素が増大する。そうしたストレスのかかる状況で、病気になりやすくなったり、自殺してしまったりするという問題がある。特に、自殺の要因の三割は生活、経済問題が占めており、近年の中高年男性の自殺の増加ともあわせて大きな問題といえる。
貧困は社会不安を増大させる大きな要因であり、社会問題のかなりの部分は貧困を視野に入れなければ解決できないものがあると著者は指摘している。
さらに、著者は日本の保障の問題を指摘する。
「日本の福祉国家の仕組みは、高学歴かつ正規雇用者で資産も家族もある人々には「やさしい」一方で、低学歴で未婚もしくは離婚経験があって非正規雇用で転職も多く、資産も家族もない人には「やさしくない」と見ることができる」189
OECDによる国際比較で、日本の低所得層が再配分によって得た所得のシェアは、先進諸国19ヶ国中下から二番目だという。税や社会保障による所得の再配分がかなり低機能だ。
また、シングルマザーやホームレスといった人々にとって必要であろう住宅手当や失業扶助といったたいていの先進国にある保障制度がない。住所がなければ生活保護や職安の対象にすらなれないホームレスの存在を考えるとこれは致命的な問題だろう。
少子化と騒がれている割には、政府は子供を持つ親に対してはきわめて冷たい態度を取っている。ネオリベ的な企業に優しい改革をする一方、非正規雇用やシングルマザーらを批判する連中の多いこと。自分たちがすすめた改革の生み出したものを、人ごとのように批判しているようにしか見えないが。
著者は、社会保障の充実は低所得層の人権ばかりを配慮したものなのではなく、社会の安定と統合のためにも必要とされるのだと言う。
「福祉国家の歴史が証明しているように、国家が貧困対策に乗り出す大きな理由の一つは、社会統合機能や連帯の確保にあった。階級や階層ごとに分裂した社会を、暴力や脅しによってではなく福祉機能によって融和と安定に導いていくことは、国家それ自体の存在証明にもなることであった」207
ワーキングプアはじめ、生活が困難になりつつある労働者が増える一方で、企業は景気が良いらしい。低所得層の増加と不安定労働の拡大という社会の不安要素をいたずらに増大させる政策が何に帰結するのか、政府は考えているのだろうか。
以下に詳細
Close to the Wall