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源氏の晩年と宇治十帖の始まり
2016/02/04 23:49
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投稿者:弥生丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「柏木」から宇治十帖の「紅梅」までを収めた巻七。
女三の宮との密通が源氏の知るところとなり、柏木は苦悶の末に病没。女三の宮は、柏木との子(後の薫)を出産後、父朱雀院に願い出て出家する。源氏の息子夕霧は、柏木の未亡人女二の宮に恋慕し、強引に結婚。大病以来、病がちとなっていた紫の上は、出家の懇望が叶わぬまま病死する。悲嘆に暮れる源氏は寂しい晩年を迎え、出家の後に没する。時代は移り、柏木の子である薫と、明石の中宮の三男である匂宮を中心に、物語は展開する。
柏木との不義を境に自我に目覚める女三の宮が印象的である。愛情が無いのに未練を示す源氏を冷淡に突き放し、源氏が紫の上を失った悲しみを訴えた際も、知ったことかといわんばかりの返答をする。(大体、内心は蔑み体裁だけを繕ってきた正妻に対し、愛人を失った悲しみを理解しろと強いる方が厚かましい。)
女二の宮に求愛する夕霧の章も、読み応えがある。慎ましい皇女でありながら、夕霧の強引な求愛をあくまで拒む女二の宮は、とても魅力的だ。同時に、男の権勢と財力に縋らなければ生きていけない当時の女の悲哀を、ひしひしと感じる。
哀感に覆われた巻七である。
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予想外のような思ったとおりのような
2021/12/11 20:22
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投稿者:藤和 - この投稿者のレビュー一覧を見る
5巻で第1部完といった感じだったけれども、この巻の中程でも一区切りと言った感じ。
雲隠れの帖はそういう使い方をするかと言った感じ。
その発想はなかった。
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紫の上が亡くなり、光源氏も亡くなってしまう
2018/01/08 20:33
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投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
この巻では、紫の上が亡くなり、光源氏も亡くなってしまう。物語の大きな山場である。そして、物語は薫の君を中心として続いていくのである。
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とうとう雲隠が入っている巻です…!幻の最後のページが終わった後はつい深呼吸してページをめくってしまった。紫式部すごいや
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光源氏の息子の夕霧が、女二の宮に言い寄ってつれなくされてもまだ言い寄るところがくどく感じられてちょっと飽きる感じ。前にも書いた気がするけれど、女の側は言い寄られてものすごく迷惑している感じの人が多いように感じられて。それが迷惑なふりなのか、本当に迷惑なのか、いまひとつよくわからない気が。丸谷才一だったか、「源氏物語」はレイプ大全、みたいなことを書いていて、かなりショックだったのだけれど、そういうことなのかしらん。そして、この巻で、紫の上も光源氏も亡くなってしまう。ひとりで死んでいくのは寂しいという思いをけっこう素直に語るのがいいなあ、と感じた。本音というか。紫の上が亡くなったあと、季節のうつりかわっても、なにかにつけて源氏が紫の上を思い出して悲しむシーンが映画のように美しいなーと。
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恐らく源氏物語のクライマックスだろう。光源氏御寵愛の紫の上が亡くなり、それを追うように源氏も息を引きとる。こんなにエキサイティングで、ページをめくる手が早くなる巻は今までになかった。
一番印象的な巻は、「雲隠」。この巻は題名こそあるものの、文章はない。開くと真っ白で、一瞬印刷ミスかと思ってしまうほど。次をめくると、新しい物語が展開している。どうやら源氏は亡くなったらしいと悟る。なんとインパクトのある巻だろうか。
源氏物語ではどんなに主役級の人の死でも、読み飛ばしてしまうくらい、呆気なく語られていることが多い。随分進んでから、「あれ?死んでる?」と思って読み返すこともしばしばだった。なので、光源氏の一巻を使った最期の演出はとても感動的だ。
主人公がいなくなったのに、まだ源氏物語はあと3巻も続くらしい。何が語られているのか、そちらも楽しみだ。
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ついに源氏の院が亡くなる。有名だけど、彼が死ぬところは明確に描写されない。ただ、雲隠というなにも書かれていない帖があるだけ。このシンプルで潔い形に、紫式部すげえ!と思う。そしてこの巻の最後に、今までちらとも出て来なかった、宇治の姫君に匂宮が想いを寄せているということがたった一文書かれているのもぐっとくる。これで読者をひきつけ、次へ次へと急がせる。現代の小説家にもこんな潔くてドラマティックな小説を書いてほしい…これを読んでしまうと現代文に魅力を感じなくなる。
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「柏木」「横笛」「鈴虫」「夕霧」「御法」「幻」「雲隠」「匂宮」「紅梅」の9帖が収録されている巻七。
女三の宮に不義の子を産ませた柏木は、ノイローゼから病気になってしまい、間もなく他界する。
一方、柏木の親友であった夕霧は、「妻の女二の宮を見舞ってくれ」という彼の遺言を守るうち、次第に女二の宮への恋心をふくらませるようになる。
今まで誰よりも理性的で道理をわきまえた人物であった夕霧が、心を迷わせて女二の宮の部屋にしのびこむ姿はいささかショッキングだった。
当時、女性が夫以外の男性に顔を見られるというのはあってはならないことだったようだ。
第40帖「御法(みのり)」では、とうとう紫の上に死のときが訪れてしまう。
紫の上、源氏の院、明石の中宮がそれぞれに別れの悲しみを歌に詠み、その夜が明ける前に紫の上は亡くなってしまうのだけれど、この場面が本当に本当に美しくて、僕も源氏のように悲しさで胸がしめつけられて泣きそうになってしまった。
10歳のときに源氏にかどわかされて以来、何不自由ない暮らしをしてきた紫の上だけれど、その生涯をふりかえるとやはりかわいそうな女性だったなあって思う。
紫の上の死後、源氏が明けても暮れても涙を流し、悲しみを歌にしている様子がまた切なかった。
「雲隠」は題名のみで本文はまったくなく、次の「匂宮」に進むと光源氏はすでにお亡くなりになっていた。
こういう演出に触れるにつけ、紫式部は天才だとまた思い知らされる。
以降は、柏木と女三の宮の不義の子・薫、今上帝と明石の中宮の三の宮である匂宮を中心とした第2部ともいえる物語が展開されていくようだ。
ところで、平安時代の人って事あるごとに「出家したい」って言いすぎ!(笑)
今でいうところの「引きこもり」みたいなものかな?
「ちゃんと現実と向き合いなさいよ!」って思ってしまうわけです。
古典を学ぶ意義って、こうした昔の人の考え方を知ることにあるのかな。
『源氏物語』、正直ここまで心を動かされる小説だとは思っていなかった。
高校の国語の先生が『源氏』のおもしろさを熱く語っていたことや、この作品の研究に一生を捧げる人がいることも今ならわかるなあ。
1000年先にも語り継いでいきたい最高の恋愛小説です。
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紫の上の死、光源氏の退場・・・
「雲隠れ」までの章を読んでる最中も世代交代を感じさせるお話でした。
「夕霧」の章は、堅物が恋に走るとどうなるか・浮気は本当に恐ろしい。というのが感じられ、冷や汗をかきながら読んでました。
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主人公光源氏がいよいよ死亡し、物語は宇治10帖へ移るその繋ぎの各帖(匂宮、紅梅、竹河)になるわけですが、その境目の「雲隠」が白紙とは印象的な帖です。粋なアイディアですね。夕霧大将が柏木未亡人である女二の宮への同情が愛情へ変わって心の動きの描写は手に取るようですし、今回も静かな音楽の夕べの描写は本当に美しく、名作である所以を痛感しました。薫大将と匂宮の二人のネーミングも中々楽しいものです。
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『雲隠』の帖に想像を掻き立てられる。類いない美しさと才気を武器に栄華を極めた光源氏の一生が、遂に幕を閉じた。読者が最後に目にする彼の姿は、最愛の女性に先立たれた悲しみに打ちひしがれ、とても痛々しい。紫の上は、けっきょく最期まで籠の中の鳥だった。完璧な美しさを持ったまま、籠の中で死んでしまった鳥。源氏没後も物語は続く。新しい登場人物の中では薫が印象的。生まれつき体から良い香りがするという斬新さが面白い。平安時代の貴族はなかなかお洒落で、女性も男性も着物に香を焚きしめるのが普通だったらしい。
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ここで一般にいう源氏物語の幕は下りたといってよいだろう。残りまだ3割も残っているが、主人公不在でどう展開するのか。ともあれ、惚れたはれたに終始するには違いない。
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巻六のレビューに柏木が死んだと書いてしまったが、それは巻七の最初のことだった。さあ、この巻でいよいよ源氏物語も終幕ということになるのだろうか。まだあと3冊残しているのだけれど。もっとも、10冊に分けているのは、出版社的事情によるのだろうが。一度生き返った紫の上はとうとう亡くなってしまう。それを苦にした源氏も最後にはあまり登場することもなく、雲隠の帖でフェイドアウト。いやはや、これは驚き。これを平安時代にされていては、現代の作家にはこの手法は使えないなあ。ご存じない方は一度立ち読みで確認してください。私は思わず先に寂聴さんの解説を読んでしまった。さて、この巻のメインの登場人物は夕霧だろう。柏木亡き後、その正妻であった女二の宮のお世話をするうちに恋心を抱いてしまう夕霧。幼なじみで結婚した雲居の雁に非難されても、女二の宮のもとに足しげく通っていく。女は優しい夕霧に次第に心を許すのかと思うのだが、全く逆で、どんどん嫌悪感が強くなっていくようす。そのあたりの女性の心情を専門家(古典の?恋愛の?)に訊いてみたい。ちょっと夕霧にはシンパシーを感じるけれど、でも無理矢理は良くない。さあ、源氏亡き後の源氏物語はどう展開するのか。いよいよ宇治が舞台になりそうな気配に期待がもてる。5年間宇治に勤務していたこともあり、宇治橋から見える風景が今も脳裏にある。嵐山観月橋から見える風景と比べてどうだろう。私は甲乙つけがたいと感じている。
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源氏物語の中心であった紫の上の死去。それを追うように光源氏の雲隠。
巻七は、感情豊でとても面白く、登場人物達が身近に感じた。
光源氏クロニクルの後はどう展開していくか楽しみです。
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《目次》
・「柏木」
・「横笛」
・「鈴虫」
・「夕霧」
・「御法」
・「幻」
・「雲隠」
・「匂宮」
・「紅梅」