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紙の本
転生 (講談社ノベルス)
著者 篠田 節子 (著)
謎の死から十数年、チベット・タシルンポ寺院霊塔で、突如金色のミイラ、パンチェンラマ十世が甦った。中国政府に虐げられたチベット人民は救いを求めるが、肝心のラマは食べ物と女に...
転生 (講談社ノベルス)
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商品説明
謎の死から十数年、チベット・タシルンポ寺院霊塔で、突如金色のミイラ、パンチェンラマ十世が甦った。中国政府に虐げられたチベット人民は救いを求めるが、肝心のラマは食べ物と女にうつつを抜かし、かつての高僧とは別人のよう。寺院の小僧・ロプサンは、何の因果かラマのインド亡命という危険な旅に付き合うはめになって…。【「BOOK」データベースの商品解説】
謎の死から十数年。チベットの寺院で金色のミイラ、ラマが甦った。食べ物と女にうつつを抜かすラマは、かつての高僧とは別人のよう。寺院の小僧・ロプサンは、なんの因果かラマの危険な亡命に付き合うはめになって…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
篠田 節子
- 略歴
- 〈篠田節子〉1955年東京都生まれ。東京学芸大学卒。「絹の変容」で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。「ゴサインタン」で山本周五郎賞、「女たちのジハード」で直木賞を受賞。
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紙の本
思わず笑ってしまう場面があります。篠田の本を読んで初めてのことです。冒険小説風な展開もいいですが、登場人物が中国人を除けば憎めないいい人間ばかりで・・・
2008/02/15 20:25
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
実は、この本の出版広告を見たとき、迷ったんです。篠田といえばハードカバー、っていう頭があります。だから、ノベルズとなれば、過去に出版された作品だろう、でも篠田の本を見逃すとは思えないんだけれど、改題でもしたんだろうかって。実物を手にしながら、それでも勘違いをしたんです。
誤解をしたのは、カバー折り返しの分を読み違えたせいでもあります。引用しましょう。
十六年ぶりのノベルズである。
そして最後のノベルズである。
小説家志望の一公務員であっ
た私の原稿を読み、本にするこ
とを約束してくれた編集者、宇
山日出臣さんが昨年亡くなった。
「美しく壮大な謎を」という宇山
さんの言葉は、未だに小説を書
くに当たっての羅針盤のような
役割を果たしているが、実際の
ところ十六年かけて、講談社
ノベルズからも宇山さんの求め
た物からも、遠く離れた所にや
ってきた。その遠く離れた地点
から、読者と、故宇山さんに、
この作品を発信したい。トリック
も探偵も出てこないが、「謎」は
仕掛けた。解けることのない謎
ではある。
――篠田節子
です。私は「この作品は16年前に書かれたまま、何かの理由で出版されなかった、それを今回、ノベルズ版で出すことにした」と解釈してしまった。実際に、誤解が解けたのは本を読み終わって、あらためて書評を書こうとカバーの折り返しや、扉の裏表、奥付などを見直してからです。はっきりと初出 『IN★POCKET』2007年1月~9月号と書いてあるじゃ、あ~りませんか・・・
やっぱり文章は丁寧に読まなければいけません。でも、「最後のノベルズである」っていう宣言は、篠田節子らしい潔さを感じます。今のご時世、こういうことは中々言えないもの、格好いいです。ここまではっきり書かれたら、出版社さんはもう新書での注文はエッセイくらいしか頼めない・・・
肝心のお話ですが、これもカバー後の文章を使ってしまいましょう。
謎の死から10数年、チベット・
タシルンポ寺院霊塔で、突如
金色のミイラ、パンチェンラ
マ10世が甦った。中国政府に
虐げられたチベット人民は救
いを求めるが、肝心のラマは
食べ物と女にうつつを抜かし、
かつての高僧とは別人のよう。
寺院の小僧・ロプサンは、何
の因果かラマのインド亡命と
いう危険な旅に付き合うはめ
になって……!?
です。主人公は、寺院の小僧、というか寺で働く雑用係のロプサンです。で、少年が付き従うことになるのが、紹介にもあるパンチェンラマ10世です。1989年に数十年ぶりにラサに来て、中国政府の用意した演説原稿を無視し、ダライラマを讃え、政府を批判直後、謎の死を遂げ、ミイラ化され金箔を塗られ10数年経つ、存在です。そのミイラが甦る、そこから話が始まります。
パンチェンラマ10世の死に中国政府が関与しているように、甦ったミイラに過剰なまでの反応を示すのも中国です。チベットに人たちは食い意地の張った色気違いののような黄金色に輝く存在の復活を全く疑うことなく信じ、崇めます。周囲が騒げば騒ぐほど復活したパンチェンラマ10世の行動の奇妙さが際立ちます。
モモというチベット風餃子と女性に熱を上げたかと思えば、一転して中国政府の非道に怒り、銃弾すらおそれないあたりの変貌振りもですが、ラマの様子を
顔が輝いた。もともと金泥を塗られているのだから輝くのは当然だ。絵の具で描かれた目鼻に表情を浮かべることはできないが、喜びが伝わってくる。
と書かれると、篠田のこういう文章を読んだことがない私などは思わず笑ってしまいます。そういうスラプスティックのような仕草をみせながら、彼は敢然と権力に歯向かいはじめます。それに同行するのがヒマラヤ登山のベースキャンプに、食料や燃料を届ける仕事をしている昔ながらの商人のサムドゥであり、話の後半に登場するカンゼ出身の若者で商才があって携帯を利用したネットワークで小金を貯めるサンポです。
フィクションですが、中国政府が、そこから送り込まれてきた漢人が、チベットでどのような非道を行なってきたかがよく分ります。権力の前には体制に取り込まれた宗教家たちは無力です。一度死んだ、いや今も生きているといっていいかよく分らない金色の存在と仏教を信ずる貧しい信徒たちの無邪気なパワーが世界を中国政府の狂気から救います。
ハードカバーで出しても、故宇山さんの思いに答えることになったのではないか、そういうレベルの作品です。最後にデータ的なことを書いておきましょう。目次ですが
一章 二世の縁
二章 逃亡の道
三章 故郷へ
四章 チベット高原自然大改造計画
五章 シシャパンマ
六章 大中国の秘境
七章 ご神体
八章 解脱
装幀い関係は、
カバーデザイン 岩郷重力+WONDER WORKZ。
写真 Glen Allison/gettyimages
ブックデザイン 熊谷博人・釜津典之
です。