紙の本
年収格差は100万円単位
2010/01/09 01:11
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
第1部 学歴社会には「法則」がある
第1章 学歴はなぜ所得格差を生み出すのか
第2章 学歴シグナルによる「差別」は正当か
第3章 働く母親と専業主婦、子どもの学歴を上げるのはどっち?
第2部 経済学的に正しい教育とは?
第4章 学校選択制と教育バウチャー制度で何が変わるか
第5章 英語ネットワークへの投資法
第6章 「いじめ」を経済学で解決する
第7章 教師と学級規模の経済学
実践編 収益率をアップさせる学習法
I. 学習の一般理論
II. 英語の学習論
著者は長野県(1949年)生まれ。東外大(英米語学科)卒業(73年,24歳),1979年 イリノイ大学大学院博士課程修了(Ph.D.,79年,30歳),パデュー大学 Visiting Assistant Professor(79年,30歳), 一橋大学経済学部(講師(80年,31歳),助教授(83年,34歳),教授(90年,41歳),クィーンズランド大学(豪,Visiting Professor,92年,43歳),一橋大学大学院経済学研究科教授(98年,49歳)。本書刊行時は58歳。
『賃金構造基本統計調査』に基づいて,著者は年収の点での高卒と大卒の格差を見ている(16頁,表1-1)。これによると,30~34歳層で約100万円以上,40~44歳層で250万円近く,50~54歳層では300万円近くの格差が指摘されている。また,父親よりも母親の学歴のほうが子供に与える学歴効果が高いという調査結果も報告されている(87-89頁)。さらに,母親の就業が子どもの能力を下げるのかどうかという点に関しては,結果は中立的(100頁)。第四に,学校選択制による該当生徒群の学力増進は不確定的。第五に,学級規模(生徒数)の大小は教育効果を高めるかどうかに関しては結論的な結果は出なかったものの(196頁),同水準の知能指数の生徒が多ければ多いほど,成績に好影響が現われたという調査結果も紹介されていた(208頁)。と,このあたりまでは“経済学”であった。
ところが,第5章「英語ネットワークへの投資法」や実践編となると,経済学ではなく,むしろ(英語)学習法の紹介になって(堕して?)いる。本書による著者紹介では不明だったが,オンラインで検索してみると,著者は東京外大(しかも英米語学科)を卒業している。なんだ,英語エリートじゃん。私は本書で国立大学授業料の大幅引き上げ(とくに医学部のそれ)が強く主張されていたので,てっきり上智ぐらいかと思っていたが,さすが国立大学卒業生らしく,その主張は公益と公的厚生を屋台骨にしているわけだ。せっかくなら,外国語学習研究のさわり(せめてその歴史)だけでも本書で言及して欲しかった。なぜなら,彼の打ち出している上層部二割集中英語教育というのは(240頁),渡邉=平林英語教育論争における平林案とまったく同じだからだ。
学歴社会の経済学としてなら,学閥の経済学(内部労働市場)や同窓会の経済学(会社間の人材交流効果),学歴から見た結婚の経済学(高学歴夫婦は高学歴次世代を産出しているのか),退職後の経済学(年金や生活様式)など,いくらでも題材はあったはずだろうにと思うと残念だ。
これは過去の日本経済のデータを基にしているに過ぎず,これからどうなるのかは判らないという将来予測にある必然的随伴論(批判論)を招来するのもまた自明だろうが,しかし,まぁ,年間100万円単位で年収格差があることが喧伝されれば,大学進学熱はこれから冷めることはなかろうし,勉強が割に合うことが実感されてもくるだろう。私としては,市井の人々が保護者としての自覚に目覚めてくれることがその前提だと強く信じている。
(1521字)
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2008/1
この本は教育学の本でいいのか、それとも経済学の本なのか。全編にわたり、教育というものを経済学的視点で分析している。
経済学について理解がないと何を言っているのかわからない部分もあるだろうが、斬新な教育論。
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大卒者の給料が高いのはなぜか、
という問題に大して人的資源論とシグナリング理論の二つから答える。
その他にもいじめの問題や、
学校選択制などの問題に大して経済理論の面から論じている。
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とても分かり易い教育経済学の紹介。
新書だけに、深くつっこむことはないが、経済的見方を教育に導入しようという人はまずこれを読むと良い。
拒否反応を起こさずに受け入れられると思う。
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教育の経済学や、教育論の中でも意見対立が目立つ分野(学校選択制・少人数制など)における議論を整理している。比較的読みやすかったが、新しい知見は得られなかった。いじめの所とかは若干無理やりな気がした。
なぜか英語教育に関してアツい主張(かなり主観的)を展開していて、力を入れるところが違うだろうと思ってしまった。まぁ面白かったし共感できたので良いんだけど。
300円。
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20090112
大学に入学して間もないころに、兄貴に読んでみろと言われてちらっと読んだ。結局読み終えてないのだけど、経済学の立場から見た教育ということを通じて、経済学の考え方が少しわかった気がして面白かった。また読み返してみようと思う。
20100410
どこまで読んだのか覚えていないけれど、とりあえず4章から読み進めてみた。
・第4章:学校選択制と教育バウチャー制度で何が変わるか
いずれの制度もさほど好ましい結果を生み出さない。
・第5章:英語ネットワークへの投資法
英語「公共財(非競合性、集団消費性)」「ネットワーク」
・第6章:「いじめ」を経済学で解決する
「いじめのネットワーク理論」各生徒はネットワークに参加する(ネットワークを形成する)費用とその便益の大小比較を内面で行い、参加するか否かの決定をする。いじめを防止・根絶する三つの方法。その1、いじめネットワークに参加する便益を小さくする。その2、いじめネットワークに参加する費用を高くする。その3、ネットワークを破壊する。
・第7章:教師と学級規模の経済学
教育に消費者主権原則は成立しない。
少人数教育は学力を高めるのかという問題は、多くの研究をもってしても明瞭な答えの出ない難しい問題。政策評価が難しい。山田治徳の「政策評価の技法」をあわせて読むと面白い。
・実践編収益率をアップさせる学習法
Ⅰ学習の一般理論
少数の大学受験科目に専念した勉強や、大学時代に狭い分野に特化した勉強は誤りであり、もっと広い分野の勉強から得られる知識が日本人の能力とりわけ独創力を高める。
Ⅱ英語の学習論
発音記号を教える。優れた辞書の作成。英語の早期教育が望ましいかを調べるための統計をとる。などなど…
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教育学研究で従来より問題視されてきた学歴の問題。
この本は、そんな問題に焦点を絞り、
経済学の視点からその問題の本質を明らかにしてくれる。
教育学者は往々にして経済学的な視点に疎いところがあるので、
こうした文献が増えてくることは歓迎すべきことだと思う。
この著書の見所は、
中盤以降語られる学校選択性・英語教育・少人数学級の分析。
特に学校選択性については、
経済学的な分析だと「推進すべし」となりがちだが、
この書では経済学的に損失が大きいとしており、印象的だった。
他方、最後のほうでは数学と英語の受験指導の問題に触れているが、
試験問題を載せないなど、具体性に欠ける点は否めない。
(本書は縦書きであるため、試験問題を載せること自体も困難だが…)
それでも、基礎・基本の必要性を経済学的に示したり、
教科書の分量や執筆者の専門分野に言及したりと、
それなりに納得させられる部分も見られる。
今後、こうしたアプローチがより教育界に浸透してほしいと思う。
教育問題について考える人に勧めたい一冊である。
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父親や母親の学歴や収入で子どもの能力が決まってしまうのだとしたら現代において叫ばれている格差という言葉の意味を痛感せざるを得ない。
ワーキングマザーかどうかでもまた、変わってくるらしい。
例で登場する子どもが他の親と自分の親を比べて、遺伝だから仕方がないと不満を漏らす場面では苦笑してしまった。
特に男性は卒業大学によって能力を推定され処遇を決定されてしまうことから人的資本論は教育イコール高能力と考えるのだ。
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教育は「人的資本投資」
教育がそれを受けた個人以外に対しても便益を生み出す
シグナリング理論
1、企業の信念
大卒者は高能力、非大卒者は低能力
2、企業が支給する賃金
大卒者は高賃金、非大卒者は低賃金
3、求職者の反応
高能力者は大学進学、低能力者は進学断念
4、実現する生産性
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現・一橋大学大学院経済学研究科教授(ミクロ経済・日本経済論)の荒井一博(1943-)による教育経済学論。
【構成】
第1部 学歴社会には「法則」がある
第1章 学歴はなぜ所得格差を生み出すのか
第2章 学歴シグナルによる「差別」は正当か
第3章 働く母親と専業主婦、子どもの学歴を挙げるのはどっち?
第2部 経済学的に正しい教育とは?
第4章 学校選択制と教育バウチャー制度で何が変わるか
第5章 英語ネットワークへの投資法
第6章 「いじめ」を経済学で解決する
第7章 教師と学級規模の経済学
実践編 収益率をアップさせる学習法
教育を経済学の視点で考える、というのが本書のユニークさであり、それを味わえるのは第1部である。第2部以降は著者が考える抽象的・定性的な教育の理想論となっている。
第1部においては、単に学歴社会を批判するのではなく、統計的な相関関係における富裕層-高学歴者を前提にして、なぜそのような学歴主義が普及しているのかを人的資本論とシグナリング理論を用いて説明されている。個人的には教育投資の収益率が平均的な大卒
で6%、私大医学部においては9%、国立医学部においては17%程度であるという下りが印象に残った。
また、第3章で論じられている、家庭における女性の教育への影響という点は他の教育論であまり見かけない視角であり、なるほどと思わせる。
新書向けを意識して全体的に平易な文章で教育経済学の知見が紹介されており、楽しめる内容だが、前後半での議論の一体感があまり感じられなかったのが残念である。
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キャッチーなメインタイトルにつられて手に取ったが、中身は豊富なデータを用いた経済(特に人的資本論)入門書。
研究者がまだ日本に少ないというだけあり、なかなかユニークに感じられる箇所が多かった。
ただ、後半まで読み進めるに従って理想の教育論が語られている印象が強まった。あとがきにある「普通科目に割く時間は4時間/日が良いのでは」というくだりでは、経済学に基づく根拠が殆ど見受けられず残念だった。つづきはまたね、ということか。
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荒井一博著「学歴社会の法則 教育を経済学から見直す」を読んだ。
最近、漠然とマクロ的な視点で学校経営を考えたいと思っていた。
教育に、行動経済学とか経済合理性の視点を適用できるかどうか、などである。
この本は、少し前にはやった下流社会、高学歴社会の終焉といった格差社会の指摘ではなく、
社会全体の「厚生(好ましさ)」を考える経済学の視点で書かれている。
以下、例の如く印象に残ったことをまとめてみる。
教育論議は、経済学的な知識なしに、説得的な見解を表明することは困難。
多く人物金時間を必要とする活動だから。
大卒男性は高卒男性の1.5倍給与を得ている。
高学歴は高収入を得るということに対して、
シグナリング理論と人的資本論を用いて説明されている。
現在の教育は、この両面の機能が含まれている(P.61)。
人的資本:教育によって身に付く知識や技能も資本と見做す。
義務教育段階・理科系教育と職業に成立しやすい。
→家計においては教育費は資本的支出と言えるかもしれないと思った。
・著者による1980年の大学教育の私的収益率:6%
・同私大医学部:8.9%
・同国立医学部:17.2%
シグナリング理論:
教育は、個人の能力を他人に知らせる「信号(シグナル)」て取り扱われる。
企業は、労働市場で、求職者ひとり一人の実力を正確に把握しがたい。
求職者は、自分がどれだけ優秀であるかを積極的に知らせなければならない。
最も効果的な手段が受けた教育の履歴・学歴。
スペンスは、教育が必ずしも個人の能力を向上させる、とは考えていない!!
一流大学が一流人材を教育するというより、
(既に一流である)一流人材が、優秀性を市場に知らせるため一流大学に入る。
一流大学を卒業するだけの実力があるというシグナルだという。
教育投資とポトラッチ(宗教的・誇示的儀式)
富裕層は、富裕度を誇示するために、
多大なコストをかけて教育サービスを購入し、
有名大学に行かせる。
親の学歴・親の所得が、子の学歴に影響を与えることは、
今日では当たり前の論になってしまった。
また、専業主婦に比べ、母親が働くことは子供の学歴の影響度は下がるが、
相対的に父親の影響度が上がる。
→共働きだと子と触れ合う時間が、父親・母親間の差が少なくなるから。
同時間、子と触れ合う場合は父親の学歴が影響しやすい。
母親が労働市場に参加すると、市場を使って子供を教育する程度が高まる。
【塾に早い段階から行かせる】
・・・・・・・・・・・・・・・
基軸通貨はドル、英語は準世界共通語。
アングロサクソン的な会議手法・慣習に従うことになる。
<IB教育との関係をいずれ考えてみたい>
“英語自身のなかにもJapaneseのような日本人蔑視の単語があります
(語尾がeseとなる英語の民族名は蔑視の表現です)。
日本人が英語を学ぶということは、蔑視を含意する単語で自分���身を呼ぶことも含む”
P.143 このことは知らなかったな。
少人数学級は、効果はあるが、追加的な費用を上回る価値を上回るかは定かでない。
逆に生徒の学力に影響を与えるのは、教員の学力・知能指数(!!!、P.199)
→当たり前だけど、、、、
重要な意思決定ほど、広範な体系的知識が必要。高校の学習が重要。
・・・・・・・・・・・・・・・・
久しぶりに、今の私にインパクトのある本だった。
近い将来、勤務先の学校の意思決定にたずさわれるように、知識を積み重ねていきたい。
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[ 内容 ]
近頃の教育問題は、経済学的な知識なしに立ち向かうことができません。
本書は「教育の経済学」の基本的な考え方を紹介しながら、「なぜ大卒男性の給料は高卒の1.5倍なのか?」「子どもの学歴を上げるのは働く母親か専業主婦か?父親か母親か?」「少人数学級は学力を高めるのか?」など、さまざまな角度から学歴社会のしくみを解き明かします。
また「英語ネットワークへの投資法」や「いじめの経済学」など、専門の世界においても先駆的で、なおかつ問題解決に有効な視点を提供します。
[ 目次 ]
第1部 学歴社会には「法則」がある(学歴はなぜ所得格差を生み出すのか 学歴シグナルによる「差別」は正当か 働く母親と専業主婦、子どもの学歴を上げるのはどっち?)
第2部 経済学的に正しい教育とは?(学校選択制と教育バウチャー制度で何が変わるか 英語ネットワークへの投資法 「いじめ」を経済学で解決する 教師と学級規模の経済学)
実践編 収益率をアップさせる学習法(学習の一般理論 英語の学習論)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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教育学×経済学
学歴ってどんな人にも関わりあるのですよねー。日本に限って言えば。
だから身近に切実に感じる内容かもしれませんねー。
結構砕いてあるので,経済学に興味を持てるかもです?
後半は,まあ,著者さんの理想の教育論?みたいな感じでちょっとどうでも(略
まあ色々ある考えのひとつとして読めばいいんじゃないかしらん。
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いろいろ考えることはできる、ってことが収穫。
だけど、時々言っていることがちょっとムリかなー、と。
学歴による差別(学閥)はダメ、と言っておきながら、如水会の大学に勤務して、そして、一部の優秀な人材に英語の勉強はさせるべき。
ってちょっと違わなくないか???
まあ、そういうのはさておき、問題点とそれの分析はおもしろいかな、と。
父親と母親でどちらが子供に勉強面で影響を与えるか、とか。。。
でも、教育って、壮大な実験なのかもしれない。
今分かっていること(分かったこと)は少なくても10年位前に行われた教育。
そこから学んだことを生かそうとすると、そこからまた数年。
その間の人たちはどうなるんだろう???