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商品説明
派遣会社からの日雇い仕事でその日その日を食いつなぐフリーターのサトシ、「今のぼくの生活は、ぼくの責任」と言いきる彼をマコトもGボーイズもほうっておけず…。【「BOOK」データベースの商品解説】
派遣会社からの日雇い仕事で、その日その日を食いつなぐフリーターのサトシ。「今のぼくの生活は、自分の責任」と言いきる彼を、マコトもGボーイズも放っておけず…。I/W/G/Pシリーズ第8弾。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
千川フォールアウト・マザー | 7−54 | |
---|---|---|
池袋クリンナップス | 55−104 | |
定年ブルドッグ | 105−155 |
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紙の本
考えろ。考えろ。それはメディアの中にだけ存在する2次元じゃないんだ。
2008/11/06 23:00
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:じゃい - この投稿者のレビュー一覧を見る
池袋ウエストゲートパークシリーズではいつも時代にあった事件がとりあげられている。
そのたびに、自分の想像力のなさを実感する。こうやって小説にしてもらわなければ、ニュースで流される情報以上を想像または、疑問に感じることもできないのだ。
今回であれば、キーワードとして印象に残っているのが、育児放棄、シングルマザーまたは非正規雇用者いわゆる日雇労働者だ。
その中でも表題にもなっている非正規は衝撃的だった。
過去に、派遣会社が1回の労働に対して、データ整備費として200円を強制的に徴収していことが問題になった。また、それ以前にも派遣会社名は公表されていなかったが、ドキュメントリーなどで派遣会社へデータ整備費を辞めることはできないのかと、質問している労働者を見ることがあった。でも、その実情を理解することは出来ていなかった。
大変そうだ。でも無意識の内にその人が何かしらを怠ったため、そういった状況に陥ったのだと、思っていた気がする。
いつ自分がそうなるか分からない。そんなことを口で言うことはできてもだ。
本に書いてあったが、東京に実家があるということだけでも、ある種、恵まれた環境ということ。地方の出身者はまず、東京で暮らすための家が必要であり。家を借りるためにと、ハードルがあがっていく。もしその人が何かを怠っていたとしても、それと現状が比例するものは、思えない。生まれた環境やタイミングなど不可抗力という要素も含まれるのだ。
そして、言葉というものの怖さを再確認した。
『ワーキングプア』言葉としては知っているが、それがどんなものかは理解していなかったのかもしれない。
言葉がない時は、旨く伝えられず、言葉ができたらそれは記号として扱われ、上滑りする。
必要なのは想像力だ。
本の中では、派遣会社は相当ひどい内容で書かれている。
どこまで本当なのかは判らないが、多少なりともそんな現状あるのだということ。『そのために自分は何ができるか。』までは、達してないが、現状を知ることが必要だと認識した。
紙の本
非正規は日常の中に
2008/10/29 08:48
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
IWGP第八弾。すっかり定番化した石田氏の長期ヒット作だが、その中身は相変わらず・・・いや、本当に変わらずいい味出している。かっこいいとかおもしろいとか、小気味いいとかいくらでも言いようはあるけれど、これだけ長期にわたるシリーズモノでこれほど質の衰えないものも珍しい。
池袋の裏路地の小さく古い青果屋の一人息子で、定期的にコラムを書いている街のトラブルシューター:マコト。
一見フツーだが実はヤクザにもお偉い方にも警察にも通じており、池袋を締めるグループのキングと親友(といったら殺されそうだが)であるというスーパーマン・・・こんな非現実的な彼の存在がやたら親しく、その活躍が心底うれしく思うのは私だけではないはずだ。
ベタベタした仲間や友情の物語ではないし、恋愛モノでも本格的なミステリーでも、社会派ドラマでもない。
ただ日常に転がっていそうな極フツーの出来事や、ちょっと目線を変えれば自分にも当てはまるような身近な物事が、ちょっとした事件を絡ませて大きくドラマチック?に展開している。そしてそこには憎めないゴクフツーのスーパーマン・マコトと彼に引きつけられるように集まってくる仲間がいる。
どこにでもありそうでない物語、そしてそこから展開する奇抜なストーリー、それが私たちをちょっとした非日常に結びつけ興味をひきつけてやまないのだろう。
もしかしたら参加できるかもしれない、ちょっとだけ日常から離れたドラマ、いそうでいないかっこいいキャラ、会いたくてもなかなかお目見えできない(色々な意味で)topたち。マコトが羨ましく思えてならない。
そして今回のお話はどれも身近にありながら、その存在に気がついてもらえない、透明人間たちのお話だ。
詳しくは本書を読んでもらうとして、『透明人間』というのは単純に言えば格差社会の弊害。日のあたる場所で生活する上級民と、日陰で暮らす私たち一般人と、土中に埋もれる微生物のごとくその存在を気がついてすらもらえない下層民・・・少々辛らつな言い方をしたかもしれない。けれど私たちは生物だ。その微生物がその分解作用においてどれほどこの世界に貢献しているか言わずと知れたことだろう。
それは心持一つで気がつくこと、思い出せることなのだ。
ちょっとしたこと、例えばマコトのこんな物語にふれることでも気づかされるくらい本当は単純なことなのだから。
紙の本
ひとりの力じゃなんともならなくても力を合わせれば可能だ
2008/08/17 08:51
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『傷つきやすくなった世界で』に続いて本小説を読んだ。もちろん、石田衣良の小説を読むのも初めてである。この小説は「池袋ウエストゲートパーク」とある。すでに7巻もシリーズとして発行されながら、私には見えなかった作家というのかもしれない。
本小説もそのシリーズとして読むべきなのだろうが、この単行本のタイトルにもなっている「非正規レジスタンス」には、現在の派遣労働、とりわけ日雇い労働者の実態と派遣会社のあまりにも酷いピンハネの実態などが描かれている。
帯には「俺たちは、透明人間じゃない。」と書かれているが、この「透明人間」という捉え方はまさにこれまでの社会の認識を言い表した言葉であろう。本小説に二度も出てくるノートに書き付けられた言葉ある。
あきらめない。あきらめたら、そこで終わりだ。
泣かない。泣いたら、人に同情されるだけだ。泣きたくなったら、笑う。
うらまない。人と自分をくらべない。どんなにちいさくてもいい。自分の幸福の形を探そう。
切れない。怒りを人に向けてはいけない。今の生活は、すべてぼくに責任がある。
このノートを書いたネットカフェ生活をし、日雇い派遣で働いている若者の夢は、「たくさんあってわかんないよ。でも、一番の夢は夜脚を伸ばして寝ることかな」だ。すべてを「自己責任」にしようとする社会、「自己責任」と思い込まされている個人。本当は「自己責任」なんかじゃないのに。
「都心のターミナル駅は、どこもネットカフェが大繁盛だ。おれにはその理由なんてぜんぜんわからなった。せいぜいマンガやネットゲーム好きが増えたんだろうなと思っていただけだ」
と考える主人公に、ネットカフェやファーストフードで夜を明かす「透明人間の悲鳴」が聞こえた時、その「透明人間」を実物大に見、その根源を解決しようとする意思があらわれてくる。
「おれたちの生きているこの国では、24歳以下の若いやつらの半分が透明人間だって、あんたはしってるかい?
やつらはこぎれいな格好をして、こまめにシャワーを浴び、外見はまるでうえの階級に属する正社員の若者と変わらない。憲法で保障された生存権を脅かす貧しさは、巧妙かつ必死に隠されているのだ。すえた汗のにおいはしないし、髪型だって普通。女だったらきちんと化粧もしているだろう。
だが、誰も気にとめない透明人間をよく見ていると、悲惨な実態がわかってくる」
いま、そんな実態が見え始め、社会的な大問題になっている。仕事をメールで紹介するだけで約4割をピンハネする派遣会社。法も守らず、違法派遣や違法労働の数々。いまや若者だけでなく、誰もが「落ちる」可能性のある「貧困」の実態なのだ。
そんな実態に気づいた主人公は、違法を繰り返す派遣会社の違法の裏をとうとうする。そして告発へと動く。
しかし、この小説の読むべきところはここまで。あとはまるでおとぎ話のようなハッピーエンド。あーあ。
現実はこのような結末を迎えはしない。たたかっても、たたかっても、問題は続いている。ひとりひとりのたたかいでは根本を変えることはできない。しかし、みんなが力を合わせて諦めずに何度でも立ち上がる覚悟を持てば前進させることができる。そんな人間への信頼と、人間の尊厳をかけたたたかいが求められている。
なんともいえない結末で終わる小説なのだが、そんな訴えは聞こえてくるような気もした。気、だけでないことを願いたい。