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商品説明
那由多小学校児童毒殺事件—男子児童が、クラスメイトの男子児童を教室内で毒殺した事件。加害児童は、三日後に同じ毒により服毒自殺を遂げ、動機がはっきりとしないままに事件は幕を閉じた。そのショッキングな事件から30年後、ある人物が当時の事件関係者たちを訪ね歩き始めた。ところが、それぞれの証言や手紙などが語る事件の詳細は、微妙にズレている…。やがて、隠されていた悪意の存在が露わになり始め、思いもよらない事実と、驚愕の真実が明かされていく。『このミステリーがすごい!』大賞2009年、第7回優秀賞受賞作。【「BOOK」データベースの商品解説】
【『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞(第7回)】児童毒殺事件から30年後、ある人物が当時の事件関係者たちを訪ね歩き始めた。ところが、それぞれの証言や手紙などが語る事件の詳細は、微妙にズレている。やがて、思いもよらない事実と、驚愕の真実が明かされていく!【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
塔山 郁
- 略歴
- 〈塔山郁〉1962年千葉県生まれ。会社員。「毒殺魔の教室」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し、デビュー。
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紙の本
居場所を求めて
2009/05/09 12:35
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
那由多小学校6年6組で起きた30年前の毒殺事件を巡るミステリー。
事件は、学級委員長で眉目秀麗、学業もスポーツも万能、
正義感の強い、リーダータイプの楠本大輝が
給食に入れられた毒で死んでしまう、というショッキングなもの。
しかも事件の三日後に、クラスメイトの加害児童が
同じ毒を飲んで自殺を遂げ、動機はわからないままです。
その事件の証言を、はじめはフリーライターに扮したある人物が
集め始めますが、それは物語中盤で、プロの小説家の手に委ねられます。
登場人物の役割がきっちりと決められ、おもしろい。
人物評価や物事が、角度を変えると変わってくるおもしろさを
充分に伝えています。
証言に基づくモノローグ形式の小説は、そもそも角度を変えると
別の見方ができるということを楽しむためのものですが
本作は、各証言のズレの謎を、次の証言で明らかにしながら
実は真実へと結びついていない。
この読者心理をついたミスリードは
数字合わせのパズルや場所取りゲームのよう。
また心理描写もうまく、クラスのパワーバランス、
小学生の恋愛模様なども絡んできます。
特にクラスに女王様然と君臨する、
政治家の孫であり社長令嬢の仙石夏美と
勉強は出来るものの地味な蓬田美和との対立は
女性作家ならでは描写が随所に散りばめられていて読ませます。
書き過ぎかもしれませんが、夏美があの人物に惹かれた理由に
大きく頷く女性読者は多いはず。
次回作を楽しみにしたい作家です。
紙の本
さりげなく描かれた、いびつな友情
2009/06/08 17:11
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カフェイン中毒 - この投稿者のレビュー一覧を見る
30年前の、ある小学校の教室でおこった毒殺事件。
すでに時効を迎えてはいるが、加害者とされた児童の自殺のせいで、
その動機は曖昧なままだった……。
幾人かの手紙や証言により、さまざまな角度からひとつの事件が語られます。
その手法と「毒」「教室」などのキイワードで、話題になった『告白』(湊かなえ)が浮かびますが、
それぞれに特長があり、仕上がりは似て非なるものになっています。
『告白』が、復讐を企む側と、それに振り回される人たちを中心に描いたとしたら、
こちらは事件の構造そのものを掘り起こすことで、まったく違う顔が見えてくるという物語です。
殺されたのは、家柄にも容姿にも能力にも恵まれた、クラスのリーダー的な男の子。
彼の給食に毒を盛ったのは、クラスの問題児として無視され続けた男の子。
数日後、短い遺書を残し同じ毒で自殺した犯人の動悸は、持たざる者の妬みだろうという程度の認識で、
大きな傷跡を残したこの事件は、一応の終結を迎えました。
ところが警察の捜査の陰で、当時語られなかった事実がいくつもあります。
しかも幾人もがそれぞれに抱えて「自分だけの記憶と憶測」にしてしまっているため、
事件の全容が明らかになるはずもありません。
関わりのあったある人物が、遅ればせながらその調査に乗り出すことで、
葬られかけた事件はふたたび光を浴びることになりました。
こちらにも伏せられていたはずの語り手が、途中であっけなく明らかにされたり、謎を追う人物が入れ替わったり、
殺人の動機を追いかけていたはずが、黒幕の正体と殺意の有無、使った毒の謎にまでひろがっていたりと、
せわしない印象も与えかねない展開になっています。
それでも次々と明らかになる(ときには謎が深まる)事実に、夢中でページを繰りました。
やわな人間関係など一笑に付されそうな、不器用な、それでいてまっすぐな友情が、
物語の中にいくつか潜んでいます。
それが救いにもなり、同時に「彼らに違う形の人生が用意されていたならば」という悲しみにもなっています。
そのあたりの描写が気持ちよく、謎ときと同時に楽しめました。
むしろ読了後には、そちらのほうが印象深く残っていたようにも思います。
エピローグが、事件を掘り返すきっかけとなった小説の抜粋になっています。
何を伝えたかったのかの、念押しのような形なのでしょうか。
とても抽象的でいながら説明的な文章で、
この小説が(物語の中で)評判になったと言われても、少々説得力に欠けるような気もしました。
といって、それがないまま終わるとなると、あまりにも感傷的すぎて……。
小説の終わりかたというのは、話の結末とは別に、やっぱりむずかしいものですね。
紙の本
第7回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞作品です
2009/03/16 13:54
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kako - この投稿者のレビュー一覧を見る
一読後の率直な感想としては「おしい」。
きっと「告白」がこれほど話題になっていなければ、またはこちらの方が先に世に出て入れば、きっと立場が入れ替わるほどの話題本になっていたのではないでしょうか?
「・・・たら」「・・・れば」というのはある意味禁語ではあるかもしれませんが、それくらい惜しいんですよねぇ~。
話の展開や一人一人が告白する形でつながれていく文章が、どうしても似ているので比較をしてしまいます。
『このミステリーがすごい!』で大賞ではなく優秀賞だったという理由にも挙がっている要因です。
大人になって小学生の頃を思い出して語るとき、なんらかの打算が働いて人は話をするでしょう。
真実が一つの事件であっても、それぞれのその時の立場によって様々な見解がでてくることでしょう。
新たな事実が出てくるし、微妙なずれももちろんでてきます。
それらが一人、また一人とインタビューに答えるにつれて少しずつ明らかになっていきます。
またこちらの作品の素晴らしかったところは、インタビュアーが変わっていったり、形式が手紙になったりとあらゆる角度から一つの事件を追って行くところです。
告白する相手が全くの他人であるか事件の当事者であるかでも、話し方が変わってきます。
その微妙な違いを読み取るのも楽しい作業でした。
話が進むにつれ「もしかして・・・」という予想が真実へとつながる時、「うん、巧い」と納得しました。
これからが非常に楽しみな作家さんです。
今回のこのミス、大賞作品二作品と優秀賞を一作品を読ませていただきましたが、どれもがそれぞれ独立した雰囲気と物語性がありました。
三作品どれもが良さとあとちょっとという箇所があり、選考はもめたんだろうなぁと容易に想像ができます。
いっそ三作品大賞にしちゃったらよかったのにというくらい甲乙が付けづらかったです。