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商品説明
与謝野晶子、宮本百合子、林芙美子。近代文学を代表する女性作家たちの足跡を追い、ウラジオストクからモスクワ、パリまでの鉄道を完乗。現地の人々の声に耳を傾けながら、旧社会主義国の重い歴史を体感する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
森 まゆみ
- 略歴
- 〈森まゆみ〉1954年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。地域雑誌『谷中・根津・千駄木』創刊。「鷗外の坂」で芸術選奨文部大臣新人賞、「「即興詩人」のイタリア」でJTB紀行文学大賞を受賞。
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紙の本
シベリア鉄道、時空を超えて…
2009/06/24 16:02
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終わったとき、私はへろへろでした。
しかし、自分ながらに読み込めてないな~、あと数回は読まないとなぁ~とも思いました。
圧倒的なボリュームと力強さを感じました。
森まゆみさんの、この本への思い入れの深さをひしひしと感じました。
「シベリア鉄道へのわたしの関心がかくも長く持続したのはひとえに、学生時代にこれに乗って欧州へ行くという夢をはたせなかったことによる。」とあとがきの冒頭にありました。
近代文学史上で、大きな仕事をした女性三人。
与謝野晶子さんと、中條百合子さんと、林芙美子さん、この三人が時代こそ違え、同じシベリア鉄道経由で陸路ヨーロッパに行ったことに気づいた森さん、「これをテーマに思い残しの鉄道に乗ろうという考え」が浮かんだのだそうです。
期間にして約一ヶ月あまり。
この三人の旅に時空を超えて、まさに同行しているかのごとく森さんのシベリア鉄道の旅は始まります。
与謝野晶子さんのときと同じ、水曜日の夜汽車での出発でした。旅の同行はロシアと中国の二人の大学院生。娘と同じ年頃の女性との二人旅は、ときに気をつかいあいながらも、楽しそうなものでした。
森さんのシベリア旅行記と三人の女性たちのシベリア旅行記が、度々重なり合います。過去にぐっと引き戻されたり、車窓を流れる風景に心癒されたり…。
「はっと目が覚めると、窓にオレンジ色の太陽がしずしずと昇るところだった」私もすっかりシベリア鉄道の車中の人になっていました。
鉄道の旅は、時間がたっぷりある。
だから思うままに時間を楽しめる。
森さんは本をたくさん持ち込んでシベリア鉄道の旅を楽しみました。私はこの本を読みながら武田百合子さんの『犬が星を見た』を思い出していたら、森さんがこの本を読んでいるくだりが出てきて、とても嬉しくなりました。
それにしても、と思う。
与謝野晶子さんのあふれんばかりのエネルギー、
中條百合子さんのはてしない向上心、
そして林芙美子さんの積みあげていった底力、
そのどれもが強く心をゆさぶります。
すごい女性がいたもんだなぁ~っと。
旅の途中、森さんが大学生の息子さんとワルシャワで合流する場面がありました。森さんの母親の顔が見え隠れして、ここのところはほんわかして、なんともいいなぁ~と。
いつものごとく今回も図書館で借りたので、返す期日が決まっています。
延長をしようかとネット検索してみたら、すでに予約の人がいました。後ろ髪ひかれながらも、早く返却しなきゃなぁ~、次の人が待ってるもんなぁ~と思いながら、本を閉じたのでした。
紙の本
仏蘭西の野に激しく燃えた灼熱の恋
2009/06/03 07:25
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
「女三人」とは与謝野晶子と中條(宮本)百合子、そして林芙美子です。この有名な文学者が時は異なるけれども同じようにシベリア鉄道に乗ってモスクワ経由でパリまで行きました。そこで著者も同じルートで彼女たちの足跡を、そのそれぞれに目覚ましい果敢な行き方ともども追跡し、あわよくば追体験しようという趣向です。
山川登美子などの強力なライバルを打倒してついに与謝野鉄幹(寛)を略奪した晶子は、歳を追うごとに創作意欲を喪失して作家生命を衰弱させていった夫をよみがえらせるためにパリにやるのですが、今度は夫の不在に耐えられなくなって、たくさんの子供を夫の妹に託して身一つでシベリア鉄道に乗り込みます。ちなみに2人の旅費と滞在費は、すべて晶子が獅子奮迅の奮闘努力で書きまくる原稿料から工面されたのです。
どうしてそんなダメ亭主を忘れられなかったのか、と自問して「寛のセックスが良かったのであろう」と答える著者に、私ははしなくも晶子さんと森まゆみさんとの共通項を見出したような気がいたしました。それは物事をまっすぐに見つめる、正直で、リアルな生活感覚です。
寛恋しさにすべてを投げ捨てて一九一二年の五月にパリに飛んで行った晶子。そのおかげで、ほんのいっときではありましたが、与謝野夫婦はかつての恋人同士の関係にかえり、「第2の青春」を取り戻しました。
ああ皐月仏蘭西の野は火の色す君も雛罌粟われも雛罌粟
という世紀の絶唱は、そのなによりのあかしではないでしょうか。私はこの句を目にするたびに紅いコクリコの花が咲き乱れる草原を白いパラソルをさした婦人がたたずむモネの絵を思い浮かべます。
そんな晶子のケースよりもっと興味深いのは、一九二七年同性の愛人湯浅芳子と共にシベリア鉄道経由でモスクワに入り、社会主義の創生期に立ち会った中條(宮本)百合子、そしてその四年後の一九三一年に、パリにいる恋人を追って国際的「放浪」の旅に出た林芙美子が繰り広げるさまざまなエピソードですが、その面白さはどうぞ本書を直接手にとって確かめて頂きたいと思います。
なおタイトルでは、「女三人」と謳ってはいますが、実際は著者自身のシベリア鉄道・パリ紀行がかなりの比重を占めていて、実際には「女四人のシベリア鉄道記」といってもよいでしょう。三人の歴史的人物以上に著者の個人的な旅行記録が少々でしゃばりすぎているように感じたのは私だけでしょうか。
♪七人の子供を残し巴里に住む恋しき夫に会いに行く女 茫洋