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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2009.3
- 出版社: 講談社
- サイズ:20cm/310p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-06-215341-6
読割 50
紙の本
筆に限りなし 城山三郎伝
著者 加藤 仁 (著)
城山三郎は「経済」を恐れなかったが、「文学」を畏れていた−。1万2000冊の蔵書、無数のメモ、書簡、日記…。段ボール300箱に収められた未発表資料をもとに描き尽くす、昭和...
筆に限りなし 城山三郎伝
城山三郎伝 筆に限りなし
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商品説明
城山三郎は「経済」を恐れなかったが、「文学」を畏れていた−。1万2000冊の蔵書、無数のメモ、書簡、日記…。段ボール300箱に収められた未発表資料をもとに描き尽くす、昭和と格闘した作家の生涯。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
加藤 仁
- 略歴
- 〈加藤仁〉昭和22年愛知県生まれ。早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、ノンフィクション作家として独立。著書に「宿澤広朗 運を支配した男」「社長の椅子が泣いている」「定年後」など。
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紙の本
気骨のある人
2009/04/30 08:21
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて城山三郎は自身の仕事について「歴史というより人間への興味」と語ったことがある。また、「その人の人生を旅する」という言い方もしている。
城山が描いた多くの「伝記文学」の対象となった人物たちは、描くことで城山自身が追体験できた別の人生である。
では、城山はどのような人生を自身のそれとは違うものと考えていたのであろうか。
1996年の対談「人間の魅力とは何か」(「失われた志」所載)でこう語っている。「たくましさというものが、自分に欠けてるというか、ない。だから、たくましい人、強い人、反骨を貫ける人というような人に、一番魅力を感ずるんだろうねえ」
実際に城山三郎は「たくましさ」を欠いた作家であったのだろうか。
本書はノンフィクション作家加藤仁による、人間杉浦英一(城山の本名)、作家城山三郎の、伝記ノンフィクションである。著者は「あとがき」の中でこう記している。「生前に会う機会もなかった私のような第三者が、実在した人物の精神世界をノンフィクションという手法で描くのは、至難の業であった」と。
しかし、幸いにも城山は実に膨大な「メモ」をその生涯において残していた。著者はその「城山メモ」を丹念に拾い集めることで、その骨格を得、それを関係者のインタビューで肉付けしていく。その結果として、「外面的に大胆な行動が見うけられなくとも、その精神世界の振幅ある動きをとらえられた」としている。
そのようにして出来上がった「城山三郎伝」から浮かびあがってくる城山は、生涯戦時中に負った心の傷を払拭できなかったように思える。
このことは本書の第二章「「商い」の父、「皇国」の息子」に詳しいが、海軍特別幹部練習生として入隊したものの城山にとっては「大義の集団であるはずの軍隊による「手ひどい裏切り」」(46頁)は、その後の人生観、人間観に大きく影響した。
だからこそ、城山は「高潔」であることを自身の評価基準とし、自身もまたそのように生きようとしたようにみえる。
著者はこう書いている。「城山には”気骨””志””高潔”といったイメージがつきまとうようになり、「城山三郎」そのものが作品として確立された感さえある」(243頁)
作家城山三郎に「たくましさ」が欠けていたかどうかはわからない。
しかし、少なくとも、城山は「たくましさ」を欠いた人間にはなるまいと、自身を作り上げていったように思う。
そういう意味では、城山三郎は「気骨」のある作家だったといえるだろう。
◆この書評のこぼれ話はblog「ほん☆たす」で。