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商品説明
妻を自殺で喪い息子を一人で育てるサラリーマン。家族を捨て、後悔の念にさいなまれるラジオディレクター。定年退職後、新たにタクシー運転手を目指す元トラック運転手。前触れもなく彼から別れを切り出されたキャリアウーマン。不況下で中小の広告代理店に入社し不安を覚える新入社員。単調な日々の仕事にうんざりする契約社員…。彼らの平凡な日常に舞い降りた小さな奇蹟とは?感動作『約束』に連なる、現代の心の渇きを潤す短編集。【「BOOK」データベースの商品解説】
妻を自殺で喪い、息子をひとりで育てるサラリーマン。家族を捨て、後悔の念にさいなまれるラジオディレクター…。彼らの平凡な日常に舞い降りた小さな奇蹟とは? 現代の心の渇きを潤す12話を収録した短編集。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
再生 | 5−31 | |
---|---|---|
ガラスの目 | 33−53 | |
流れる | 55−74 |
著者紹介
石田 衣良
- 略歴
- 〈石田衣良〉1960年東京生まれ。成蹊大学卒業。コピーライター等を経て、97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年「4TEEN」で直木賞を受賞。
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紙の本
「再生」 は 「未来」
2009/05/31 16:30
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
「過去と他人は変えられない。未来と自分は変えられる」好きな言葉です。ですからこの本の題名「再生」に惹かれました。
5月14日の朝日新聞に「30代自殺 去年最悪4850人」という記事がありました。この数字は二年連続過去最多。動機・原因は健康問題が最も多く、その中で「うつ病」が6490人と前年同様最多と記されていました。
心が豊かでなくなってしまった私たち、「再生」できなくなってしまった人たちが増えています。石田衣良さんは、あとがきに「ここに収められた12の短篇のうち、半数以上は直接当人から話をきき、小説に仕立て直したものです。(省略)日々を懸命に生きる等身大の人物がいるだけです。目のまえで起きていることに目を凝らし、それをきちんと書き留めていく。それは作家の数ある仕事のなかでも、とても大切で順位の高い要件のひとつです。」と、書いています。等身大の人物を描きながらも、彼の人生観が感じられました。ここに、いくつかを書き留めます。
人間というものは、自分の不幸だけでは満足できないのだ。よほど他者の不幸に飢えた生きものなのだろう。(「再生」より)
わたしたちは一滴にとらわれ、一滴を憎み、それでもその一滴からほんの一歩も外にはでられない。それでも、その他大勢の滴たちといっしょに、この川のように流れていかなければならないのだ。(「流れる」より)
理由もなく傷つけ、傷つけられる。きっとそう生きるように人間はできているのだろう。(「海に立つ人」より)
大切なことをひとつかふたつ、つぎの世代に伝え死んでいく。人間などそれだけでいいのではないだろうか。(「火を熾す」より)
この短篇集はストレスを抱えている現代人の問題だけではなく、仕事と雇用をめぐる問題などを書き留めることによって、家族とは、愛とは、生きるとは何か、が書かれています。「再生」は「未来」です。石田衣良さんの本に救われました。
紙の本
再び生きる、ということ
2009/12/19 16:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
石田さんは、いい意味でも悪い意味でも、とても読み易い文章を書く人、というのが私見。悪い意味では「軽い」と思われるその文章が、今回の作品は「読み易さ」としていい方に出てきていると思う。
後書きで書いているように、雇用不安や経済危機で、リストラ関連の話が本当に多い。実際現実に起きていることを、フィクションである小説の世界でまで見たくはないや、というのが本音だったが、どの作品も暗くなっておしまい、にはなっていなかったし、その終わり方も現実的だった(実話ベースだったので当然か)ので読後感は良かった。
それにしても、再び生きる、とはいい言葉だ。一度生きたら、その路をずっと行かなければならない、なんて変な呪縛から解き放ってくれる。
社会が今までとは違うのだから、頑に我を張っている必要なんてない。再び生きるつもりで決意すれば、怖いことは、この世の中には、それほどないのだ、という気分にさせてもらった。
紙の本
ほんの小さな幸せという奇跡
2009/09/17 08:41
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず最初に、この短編集は回復でも完治でもなく 「再生」だ。
突然様々な平和的日常を失い、大切な人のために傷つきボロボロになった彼等に起こる小さな奇跡が、やがて大きな未来に続く足がかりとなり、きっかけとなる・・・という実話をベースにした物語である。
だから、ご都合主義やオキマリの展開が苦手な方にはハッキリ言って物足りないかもしれない。けれど著者あとがきにあるように、これらの小さな奇跡は著者が実際に見聞きして取材した生の声。私たちにも起こりうる、いや、起せるかもしれない奇跡があるのだ。
登場する主人公たちは社会で、生活で、恋人や家族のことで悩みを抱え、生死に関わるほどストレスを抱え込み自分自身を追い詰めてしまっているがけっぷちの人々だ。
生涯を抱えて生まれてきた息子と妻を捨てて逃げたサラリーマン。逆に生涯をもつ息子を懸命に守り戦う母、突然恋人に別れを告げられ仕事に逃げる女、息子を残して逝ってしまった最愛の妻を思い立ち直れない夫、負け犬となって帰宅した息子にリストラ対象となった父親、・・・
人の不幸は考え付かないことが無いほど無限にあり、逆に幸福は考えだすのが困難なほどに少ない。
幸せを感じることに比べて不幸を感じ取ることに、人間はなぜこれほどにも敏感なのだろうか。
そこらにいくらでも在りそうな不幸がいくつもいくつもあげられ、そのどれもが小さな奇跡に救われて再び生きようと立ち上がる。表題からして全てがハッピーエンドであることはわかっていても、それでも全てがまったく違う不幸と再生を展開して見せてくれる。
この世知辛い世の中、不幸はいくらでも転がっているけれど、不幸の数だけ幸福も見出せればいいのではないか。そう思わせくれるあたたかな作品だ。
人が誰かの幸せのために自分を差し置いてでも尽くそうとすることが難しくなった貧相な現代には、本の小さな幸福やなんでもないことすらも「奇跡」になってしまう。けれど逆に私は、そんな小さな幸福にも感謝して感動する心を忘れない人間でいたい。
ハリウッド的壮大な現象や、聖書に見るような荘厳な奇跡、小説の中だけのファンタジックな奇跡でなくてもいい。
昔は「奇跡」とすら言われなかった当たり前のことが「奇跡」になったこの現代。
起こそうとした小さな奇跡は超自然的ファンタジーや超科学・物理的SFよりも当事者に大きな感動を起すはずだ。