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紙の本
明治版画史
著者 岩切 信一郎 (著)
【芸術選奨・文部科学大臣新人賞(第60回)】明治期、わが国伝統木版整版が新時代にどう対応していったのか、印刷・版画の近代化への取り組みの歴史を追い、その本質を問う。豊富な...
明治版画史
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商品説明
【芸術選奨・文部科学大臣新人賞(第60回)】明治期、わが国伝統木版整版が新時代にどう対応していったのか、印刷・版画の近代化への取り組みの歴史を追い、その本質を問う。豊富な図版とともに多種多様な「版」の時代の変遷をたどり、明治版画の実態を解き明かす一冊。【「TRC MARC」の商品解説】
目次
- プロローグ 近代版画の起点をもとめて
- Ⅰ 明治前期の版画
- 1 前期版画の概観
- 2 江戸錦絵から明治錦絵へ
- 3 新聞挿絵の印刷
- 4 石版画の時代
- 5 銅版画の幕末から明治
- 6 前期の出版動向
- Ⅱ 明治中期の版画
- 1 中期版画の概観
著者紹介
岩切 信一郎
- 略歴
- 〈岩切信一郎〉1950年鹿児島県生まれ。国学院大学大学院文学研究科修士課程修了。東京文化短期大学教授、早稲田大学文学学術院非常勤講師。著書に「橋口五葉の装釘本」がある。
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図版がいいです。それと、日本画、洋画を問わず今は有名な巨匠たちが若かりし頃せっせと版画の原画を描いていたこと。それにしても、明治時代は版画のほとんどの技術をヨーロッパから取り入れていたんだ・・・
2010/02/12 20:27
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
でへ、吉川弘文館の本、読むの生まれて初めてかも・・・。だって、吉川さんて歴史の専門出版社でしょ。小説、なんて出していないし、著作者みても知らない人ばかりだし、なんていうか研究書専門? 大学関係者の間では評価高いのかもしれませんが、一般読者には縁がないっていうか、なんだか学者以外お断りみたいなんです。
勿論、この本を書いた岩切のことも全く知りません。ただただ私が惹かれたのは明治「版画」史、はっきり言えば「版画」って言う文字だけなんです。今になって著者のことが気になり、調べると1950年、鹿児島県に生まれ、国学院大学大学院文学研究科修士課程修了、東京文化短期大学教授・早稲田大学文学学術院非常勤講師だそうです。
で、この本、カバー画は
表 渡辺省亭「幕府時代仕女図」(部分、明治24年)
裏 H・アーレンス商会商標(明治初年)
とあります。ちなみに、奥付をみても装幀者についての記述はありません。カバー後には(裏と書くと、紙の裏側みたいなので後、と書いておきます)
*
明治は、わが国伝統の板目木版、
西欧の革新的な銅版・石版など、
史上稀に見る多種多様な
“版”の時代であった。
双方はどう関係を切り結んできたのか。
その変遷を豊富な図版でたどり、
明治版画の実態を解き明かす。
*
とあります。目次をみると難しそうだな、という感じがしますが、読み出すとそれが間違いであることがよくわかります。ともかく読みやすい。そしてこの時代の人が、多用な版画技術をいかに素早く取り入れたかがよく分かります。最近の事だと思っていたリトグラフが、この時代に入ってきて実用化されていることには、今更ながら驚かされました。
ただ、こと版画に関して言えば、新聞などにおける大量印刷という観点を除けば、西洋版画が日本人にどれほどの衝撃を与えたか、日本の版画が西洋に与えたそれとは大きな違いがあった気がします。例えば、日本画は現在にいたるも欧米人一般の感性を揺り動かすことはありませんでした。棟方志功、浜口陽三、長谷川潔、池田満寿夫、ともかく版画なのです。
なぜ本画ではなく版画か、この答えはこの本には出ていません。ただ、ヨーロッパの人が驚いた浮世絵インクの違いだった、版画といえば油性の絵の具を使うしか思っていない西洋の人にとって、水性の絵の具を使う日本の木版画の存在は驚きだったというのは、うなずけます。でも屏風などに反応しないのはどうしてなんでしょう、気にはなります。
ただし、この本はあくまで日本の明治期の版画事情を描いたものですので、ヨーロッパで日本画が如何に受容されたか、は付録に過ぎません。でも、日本人が西洋から来た銅版や石版のことをどう思ったかはともかく、夥しい数の日本画家たちが、この時期に木版口絵などの版下を書いています。
川合玉堂、鏑木清方、池田輝方などが代表的なところですが、洋画界からも積極的に参加してきています。正直、なんでこんなに有名な画家たちが、そんなアルバイトじみたことをしていたのだろう、なんて思います。でも、それは私の版画にたいする偏見かもしれません。だって、嫌々やっているようなレベルの作品ではないのですから。
また、海外から浮世絵の蒐集にやってきて、そのまま自分で作品を作るようになった人たちもいます。日本で創作を続けた人であれば、なんとなく名前を聞いた覚えがありますが、アメリカに帰りむこうで創作を続け、評価をされた人などが何人もいることはこの本で初めて知りました。
岩切の、読みやすく癖の無い文章、なにかというとニッポン、ニッポンと持ち上げることのない公平な視点がこの本を読みやすいものにしていることは間違いありませんが、優れた作品の図版が多いのも読者の理解を助けています。有名な作品が多いのかもしれませんが、明治期の版画はビゴーのものくらいしか知らない私には、どれも新鮮ですばらしいものばかりです。
例えば巻頭の口絵に取り上げられた小林清親の「東京新大橋雨中図」をはじめ、大蘇芳年「藤原保昌 月下弄笛図」、渡辺省亭画「雀卿落花」、鰭崎英朋画「美樹子を湖中より救出する図」、どれも新鮮で、古びていません。現代の版画の多くが抽象に走っていますが、それに慣れた目で見ても、これらの作品は素敵です。
本文の図では、落合芳幾画の『東京日々新聞』第50号に始って、大蘇芳年『郵便報知新聞』第565号、亀井至一画「尼亜加拉複飛橋ノ図」、尾形月耕画「菊畑」、渡辺省亭画「幕府時代仕込女図」、水野年方画「(四)亀戸」、尾形月耕画「堀切の菖蒲」、鏑木清方画の口絵(泉鏡花『三枚続』)など、これまた現代人が見ても共感を覚えるのではないでしょうか。
中でも、私が実物をぜひ見たいというのは、小林清親画「牛荘附近 雪夜の斥候」です。構図、描法、そして物語性、どれをとっても一級品で、この本に収められた図版の白眉、といってもいいのではないでしょうか。基本的には読む本ですが、図版の量、大きさもバランスがいい。この一冊で明治版画の全てが理解出来るとまでは言いませんが、入門書としても立派なものだと思います。
以下は目次
口絵
プロローグ 近代版画の起点をもとめて:版を使った絵画/日本近代版画の起点をめぐる緒論/日本近代版画の起点の検討
1 明治前期の版画―明治元年~十五年
1前期版画の概観
2江戸錦絵から明治錦絵へ
3新聞挿絵の印刷―木版と紙版鉛版
4石版画の時代―その移植と展開
5銅版画の幕末から明治―微塵銅版画から官の印刷へ
6前期の出版動向―和装本から洋装本へ
2 明治中期の版画―明治十六年~三十年
1中期版画の概観
2錦絵と石版画
3伝統木版の盛衰―衰退期の錦絵と『国華』式木版の出現
4木口木版の導入
3 明治後期の版画―明治三十一年~四十五年
1後期版画の概観
2木版口絵の隆盛
3創作版画黎明期
4ニューメディアとしての版画
5日本版画の欧米への発信―青い眼の浮世絵師たち
6出版と版画
エピローグ 大正版画に向けて―印刷の版画から創作の版画へ
註
あとがき
関係年表
図版目録